MicrosoftはFastの買収により、自社のエンタープライズサーチ技術に箔(はく)を付けるだけでなく、IBMやOracleといった大手インフラベンダーを追い抜くことになる。
Microsoftは2008年1月初め、ノルウェーのデータ検索企業Fast Search & Transferに対して買収を提案した。これは、エンタープライズサーチ分野の地殻変動を引き起こす動きであるとみられている。専門家たちは、この12億ドルの買収提案を「激震」「岐路」「転換点」といった言葉で形容している。
企業のCIOにはどんな余震が待ち受けているのだろうか。
「“検索戦略への取り組みが遅れていた。Microsoftは検索には10億ドルの価値があると考えているが、当社はこの分野に十分に投資してこなかった”と反省を迫られるCIOもいるだろう」と話すのは、Gartnerでエンタープライズサーチを担当するアナリストのホイット・アンドリュース氏だ。
「もう1つの影響として、Microsoftおよび競合ベンダー各社が、それぞれの検索技術を売り込みに来ることが予想される」とアンドリュース氏は付け加える。
Forrester Researchのアナリスト、ケン・プア氏によると、この大規模な買収は両社とその顧客の双方にメリットとなるものとして歓迎されており、多くの会社のCEOが関心を抱いているに違いないという。「CIOは、自社のエンタープライズサーチ戦略に関して役員室で問い詰められるのを覚悟して、きちんと説明できるよう準備しておいた方がいいだろう」とプア氏は、Microsoftの買収提案に関するブログ記事の中で述べている。これは、特にAutonomy、Endeca Technologies、Vivisimoなどの検索専業ベンダーの顧客にとっては重要な問題だ。これらのベンダーの高度な検索プラットフォームは、今日の企業が扱う膨大な構造型/非構造型データを検索することができる。これらのツールが提供する文脈型クエリ機能は、Googleなどが提供する「ホワイトボックス」型検索と結果リスト機能よりもはるかに優れている。
「CIOやCTO(最高技術責任者)たちは、1月8日にWall Street Journal紙で買収提案のニュースを知るまで、AutonomyやEndeca、Fastがどんな企業なのか知らなかった」とプア氏は話す。「CIOやCTO、最高検索責任者たちは、明確な戦略を確立する必要がある――われわれの戦略はこうで、それがなぜ優れているのか、そして必要があれば見直せるということを明らかにする必要があるということだ」
Microsoftの提案はFastの取締役会において全会一致で支持され、4~6月期に買収手続きが完了する見込みだ。プア氏によると、この買収はエンタープライズサーチの低価格化を促す可能性があり、CIOにとって従来のエンタープライズサーチ戦略を真剣に見直す機会になるという。
エンタープライズサーチ製品の検討を始めたばかりのITプロフェッショナルの場合、既に自社でMicrosoft製品を利用しているのであれば、独立系検索ベンダーの製品の購入理由を上司に納得させるのは難しいだろう。「現在、Microsoft Office SharePoint Server(MOSS)とFastを利用している企業の場合は、今回の買収によってベンダーとの関係の大幅な簡素化、従来とは異なるプロフェッショナルサービスモデル、そしてベンダーの研究開発体制の強化を期待できる」とプア氏は話す。
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