企業が費やすITコストの約8割は、既存ITリソースの運用・保守費用が占める。その中でも、特にクライアントPC管理のコストは年々増しているという。しかし近年、この削減を可能にする新しい技術が登場してきた。
昨今の厳しい経済情勢の下、どの企業にとってもITコストの見直しは「待ったなし」の状況だろう。特に、ITコストの中で大きなウェートを占める「運用管理費」が削減の的になっているはずだ。運用管理費の削減といえば、サーバ仮想化技術を使ったサーバ統合など、サーバやストレージ関連の話になりやすいが、クライアントPCの運用管理費も忘れてはいけない。
企業システムで運用するクライアントPCに掛かるコストについては、ハードウェア/ソフトウェアの購入費がTCO(総所有コスト)に占める割合は2、3割でしかなく、残りは運用管理費が占めるといわれる。実際、マイクロソフトが第三者機関に依頼し、米企業を対象に行った調査によれば、Windows XP搭載のモバイルPC1台当たりのTCOは年間4407ドル、その66%を運用管理費が占めていた。
コスト種別 | 金額(TCO全体に占める割合) |
---|---|
セキュリティ | 224ドル(5%) |
デスクトップエンジニアリングサポート | 267ドル(6%) |
サービスデスク | 235ドル(6%) |
人件費 | 2171ドル(49%) |
ハードウェア/ソフトウェア | 1509ドル(34%) |
合計 | 4407ドル(100%) |
出典:マイクロソフト『「Windows Vistaが実現するTCOの削減」ホワイトペーパー』(2007年10月)
企業はクライアントPCの運用管理に、実に大きなコストを掛けているのが現状だ。このコストの削減は、ひいてはITコスト全体の削減に大きな効果をもたらすことは明らかだ。
一口にクライアントPC管理といっても、その導入から廃棄まで、PCのライフサイクル全般でやるべきことは多岐にわたる。もちろん、何百、何千、何万というPCを保有している企業では、当然何らかのクライアントPC管理ツールを既に導入し、ある程度は効率化を果たしているだろう。管理ツールの機能も近年は高度化しており、ソフトウェアの配布やインベントリ情報の取得のみならず、遠隔操作から操作制御、ロギング、脆弱性監査までを統合的に行えるものも登場している。
それでもなお、運用管理業務の現場担当者からすれば、クライアントPC管理は相変わらず手間の掛かる仕事であり、管理ツールを導入しても期待したほどTCO削減効果が出ていないケースも多いという。その理由としては、内部統制対応のため管理に対する要求レベルは高くなる一方で、クライアントPCの環境は逆に複雑化しているという事情がある。複雑化をもたらす要素としては、複数世代のOSとアプリケーションの混在、あるいは集中管理が難しいモバイルPCの構成比が高まっていることなどが挙げられる。
企業におけるクライアントPCのOSは依然Windows XPが主流だが、マシンの更新に伴い、徐々にWindows Vistaも入り始めている。一方で、Windows XP/Vista上では正常に動作しない古いアプリケーションを使い続けるために、Windows 2000などレガシーなOSを温存している企業も少なくない。3種類以上のクライアントOSが混在している環境も決して珍しくない。
それに付随して、Microsoft Officeのバージョンも97/2000/XP/2003/2007など多岐にわたる。シトリックスの「Citrix XenApp」(旧「Citrix Presentation Server」)のような画面転送型シンクライアントを部分的に導入していれば、それもまた別個のクライアント環境となる。こうなると、例えクライアントPC管理ツールを導入していたとしても、クライアントPCの標準イメージの種類は増え、セキュリティパッチやプログラム更新も各環境で別々に発生し、管理が煩雑になってしまうわけだ。
とりわけ、クライアント管理の中でも特にコストを要するOSの移行が大変になる。多くの企業では現在、2001年の発売から7年間の長きにわたって供給されてきたWindows XPの上で動作するクライアントアプリケーションを山のように抱えている。業務システムの入力支援ツールをMicrosoft Excelで開発していたり、データベースアプリケーションのフロントエンドがMicrosoft Accessだったりする。また、企業システムで主流となりつつあるWebアプリケーションのUIは、Windows Vistaで標準のInternet Explorer 7以前のバージョンのInternet Explorerにしか対応していないことも多い。
Windows XPからWindows VistaへのOS移行時には、こうした内製クライアントアプリケーションおよびWebアプリケーションの動作検証、修正、作り直しで莫大な工数を取られるのは確実だ。仮にWindows Vistaを飛ばし、2010年にも登場するとみられるWindows 7へ移行するとしても、状況は同じである。
企業における社員のワークスタイルの多様化を受け、ここ何年かは企業向けに販売されるPCの50%超をモバイル型が占めている。持ち運び自由なモバイルPCは便利だが、管理者から見ると、ネットワークに接続されていない間は統制が効かないというデメリットがある。そうしたPCが社内ネットワークへ自由に出入りしていれば、ウイルス感染などの問題が起こりやすく、結果として余計な管理コストが掛かることになる。またリモート制御もできないため、ヘルプデスク対応にも工数が掛かる。
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