移行後のOSでも既存アプリケーションを問題なく実行できることが企業にとっては最も重要だ。アプリ開発の柔軟性に欠けることも、Windows 8の導入が進まない一因となっている。
Microsoftはアプリケーションの開発者や企業ユーザーに、Windows 8アプリ開発の魅力をもっとうまく伝えるべきだろう。そうすればWindows 8へのアップグレードに逃げ腰になる企業は減るのではないだろうか。
ツールプロバイダーの米Telerik開発ツール担当副社長 クリス・セルス氏は、「Microsoftはコンシューマー向けアプリケーションを開発するための基本コントロールは提供している。だが、エンタープライズ向けアプリケーションを開発するためのコントロールは皆無だ。代わりにわれわれがエンタープライズ向けコントロールを提供している」と話す。
Microsoftは開発ツールとして、「Windows 8ソフトウェア開発キット」(SDK)と「Visual Studio 2012」を提供している。これらを使えばWindows PhoneアプリやWindows 8アプリの開発は可能だ。しかし開発者が望むのは、AppleのiOSやGoogleのAndroidなど、他のプラットフォーム向けにも簡単にコンパイルできるソフトウェアコードベースだ。
データセンタープロバイダーの米Equinixは、社内のエンドユーザーが所有している各種端末に合わせて自社アプリを開発している。しかしCIOのブライアン・リリー氏は、「現時点ではWindows 8アプリは開発対象外だ。今はiOS向けとAndroid向けの開発で目が回りそうだ。Windows 8とSurfaceが普及するまで、両OS向けのアプリケーション開発は見送る予定だ」と話す。現在同社では、他のバージョンのWindowsのネイティブアプリケーションとWebアプリケーションを開発している。
カスタムソフトウェア開発会社の米DataArtは商用のWindows 8アプリを受託開発している。しかし同社の取締役副社長 アレクシイ・ミラー氏は、「手に負えないほどの量ではない」と明かす。
多くの企業がWindows XPからの移行先として、Windows 8ではなくWindows 7を選んでいることからも、アプリケーションの互換性がOSのアップグレードを左右する重要な要素の1つであることが分かる。モバイルアプリ向け開発ツールメーカーである米Kony Solutions プラットフォームアーキテクチャ担当ディレクターのシュリニヴァース・シーシャム氏も、「企業ユーザーにとっては、既存アプリケーションが新OSで問題なく実行できるかどうかが最も重要だ」と指摘する。
その点、商用アプリであれ社内アプリであれ、Windows 8やWindows 8タブレット向けのアプリケーションは、コードベースが別のプラットフォームにも移植できるものなら成功を収める可能性があるといえるだろう。異種プラットフォームに移植できるソフトウェアコードベースなら、異なるOSに適用させるためのコストと時間を削減できるし、企業ユーザーならそれぞれの要件に合わせたカスタムアプリケーションを作成しやすくなるためだ。だが現実には、Windows 8アプリは異種プラットフォームに移植しやすい状況にはなっていない。
先のシーシャム氏はこうした状況を受けて、「Windows 8へのアップグレードに当たって企業が気にしているのは、Windows 8アプリをエンドユーザーがすぐに使いこなせるか、十分なアプリを供給できるだけの開発者がWindowsストアにいるかだ」と指摘する。
一方で、既に次のバージョン「Windows Blue」(コード名)が2013年にリリースされるとのうわさもあり、Windows 8のアップグレードを遅らせるべきか思案している企業も現れ始めている。先のセルス氏は、「Windows Blueの方がWindows 8よりも幸先のよいスタートを切るかもしれない」とコメントする。
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