Windows XPのサポート期間終了が間近に迫っている。企業ではWindows 7移行の動きが活発化すると同時に、Windows 8に対する評価も固まりつつあるようだ。
2014年4月のWindows XPサポート期間終了まで1年を切った。これに伴い、Windows 7に移行する企業の動きが加速している。
ガートナー ジャパンが2012年11月に企業向けに実施した「ITデマンド調査」でWindows 7への移行状況や予定を調べたところ、図1のように5.6%が「移行完了」、47.9%が「移行開始済み」と回答。2013年に移行を予定している20.4%を加えると、移行完了済みの企業も含めて73.9%が2013年中に移行する予定となっている。
2011年11月に行った同調査では「移行完了」が2.5%、「移行開始済み」が39.9%。この1年でそれぞれ伸びていることからも、移行の動きが活発化していることがうかがえる。ガートナー ジャパン リサーチ ITインフラストラクチャ クライアント・プラットフォーム シニアアナリストの針生恵理氏は次のように解説する。
「移行には一定の時間がかかるため、多くの企業が移行に乗り出している。2013年4月現在、移行作業を開始した企業はさらに増えているはずだ。ただ、大規模な企業ほどアプリケーションの数や種類が多くなるため、Windows XPのサポート期間終了までに移行が間に合わない傾向も見えてきた。特に基幹業務系のアプリケーションや、製造業における組み込みアプリケーションなどは、OS移行に伴う改修に時間がかかることもあり、新OSへの移行が遅れがちになる。2014年4月までに対応が終わらないアプリケーションが残ってしまい、Windows XPからの移行の障害になっているケースも少なくない」
特にこうした傾向が強いのは従業員数2000人以上の企業だ。2011年の調査では、移行時期を「2014年以降」と回答した2000人以上の企業はほとんどいなかったが、今回の調査では約15%が「2014年までに終わらない」と回答したという。いうまでもないが、サポート切れのOSを使い続けることは企業にとって大きなリスクにつながる。こうした状況を見ても、移行作業に着手していない企業は一刻も早く取り組みを開始すべきだろう。
一方、Windows 8については、「移行予定なし」と答えた企業が72.7%。移行開始済みはわずか0.6%にとどまった。
「ユーザー企業と話していても、ほとんどの場合、関心はあるがWindows 8への移行は考えていない。移行時期が『2013年以降』と回答した企業は8.2%、『2014年以降』『2015年以降』と答えた企業も合計18.6%にとどまる。8への移行を予定している企業は、複数のOSを社内でサポートしているか、Windows 8をタブレットのOSとして検討している企業だ。Windows 8への移行は緩やかに増える傾向にはあるが、2014年ごろになれば次のバージョンがリリースされる可能性もある。Windows 7へ移行した企業は次の移行まで時間があるため、8以降のバージョンを検討することが予想される。こうしたことから、企業で使うクライアントPCのOSとしてWindows 8を採用する企業はかなり限定されると思われる」
多くの企業が移行先としてWindows 7を選択した理由を針生氏は大きく2つ挙げる。1つはWindows 8がリリースされたタイミングの問題だ。
「一般に、多くの企業は新しいOSがリリースされてから1年ほどは新しいOSの導入を見送る。これは可用性への懸念や、ソフトウェア製品やサービスが出そろうことも含めて使用環境が整うまで、1年ほど様子を見るケースが一般的であるためだ。つまりWindows 8の場合、2013年後半から本格的な移行を検討することになり、Windows XPのサポートが終了する2014年4月まで半年しかないことになる。Windows XPユーザーにとっては2014年4月までに新OSに移行することが最優先課題となる。このため、移行作業の時間が取れないと分かった時点でWindows 8は選択肢から外れたといえる」
もう1つは「現時点でWindows 8を選ぶべき必然性がなかった」ことにある。
「Windows 8はWindows 7と比較すると、パフォーマンス、セキュリティなどが強化されている。特にセキュリティ面では脆弱性に対する攻撃への防御強化などの点で機能向上が見られる。しかし昨今の企業における新OS移行の意思決定は、OSやアプリケーションのサポート切れ、クライアントPCの移行などによって行われる場合が多く、新しい機能に対する評価は優先順位が高くない。こうしたことから、Windows 7よりもWindows 8が機能面で評価、選択されるという傾向は見られず、むしろ安定しているOSへの移行が積極的に行われることになったと考えられる」
一方、Windows 8は「企業向けモバイル端末のOS」としては多くの企業に注目されている。特に企業の関心を集めているのは既存のWindows環境との親和性が高い点だ。ただWindows 8タブレットには、ARMベースのWindows RTと、x86ベースのWindows 8タブレットがあるが、これらの違いを認識していない企業も少なくないという。
「Windows RTは基本的にコンシューマーをターゲットにしており、アプリケーションの導入もWindows マーケットからダウンロードして利用するのが基本。バッテリー起動時間などタブレットとしてのメリットは享受できるが、例えば企業ドメインには参加できないなど企業向けの機能は限定されており、社内の管理下に置くのが難しい。その点で、Windows RTは例えば『タブレットでもMicrosoft Officeを利用したい』など、従業員個々人のニーズに応える目的での利用に限定されると予想される」
これに対してx86ベースWindows 8タブレットは、「タブレットの形をしたWindows PC」。針生氏は「クライアントPCとタブレットでプラットフォームを統一できることは、使いやすさや管理の面で企業にとって大きなメリットとなる」と指摘する。ただ、「そのメリットを生かせる土壌がまだ市場に整っていない」。
「既存の業務システムはWindowsをベースに作られているため、タブレットと既存システムとの連携性の良さは期待される。ただし、既存のアプリケーションがタブレットに適しているかというと、現時点ではそうした環境にないケースが多い。つまり、まだまだクライアントPCでの使用を前提に構築されたアプリケーションやシステムが多いため、プラットフォーム共通化というメリットを業務に生かすことは難しい」
ただ、モバイル活用の新たなパターンが次々と登場し、モバイル利用の領域は年々広がっている。現時点でのモバイルデバイスの活用パターンは、コミュニケーションツールとしての使用や、紙のカタログをタブレット上のデータに置き換えるといった業務効率化を目的としたパターンが中心だが、「将来的に、企業において“モバイルを前提とした業務システム”の構築が推進されてくると、既存業務アプリケーションとの連携が今よりも重視される可能性がある」という。
「そうなると、タブレットの導入はデバイス単位ではなく、社内システム全体を視野に入れて活用の仕組みを検討する必要が出てくる。その際、タブレットの活用はクラウドサービスをベースにするのか、Windows ベースのシステムとの連携を進めるのか、企業によって活用パターンは分かれると思うが、そうした中で、Windows 8タブレットはiPadやAndroidタブレットと並んで、導入候補として企業の視野に入ってくる可能性がある」
針生氏は以上の見解を基に、「クライアントPCのOSとしてのWindows 8はシェアが限られると思うが、モバイルのOSとしては有効な選択肢の1つになると考えられる」とまとめる。
「タブレットに最適化されたアプリケーションが少ないなど、まだ現時点ではプラットフォームが成熟しているとはいえない。だが企業にとって、モバイル端末におけるWindows 8のメリットと自社における可能性も視野に入れておくことは有効だと考える」
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