人間の介在なく製造業の問題を解決
もう人は要らない――決して無視できない「IoT」のインパクト
IoTは製造業にさまざまな影響を与えている。これらの影響は環境にやさしい持続的なビジネス慣行につながる可能性がある。
センサーを利用して製造設備や生産環境を監視するのは、決して新しい手法ではない。だがこれらのセンサーを使って設備間で通信を行い、プラントやエネルギーを管理するアプリケーションにデータを自動的に供給するという手法は、製造分野の新たなフロンティアの1つである。
そこで活躍するのが、機器や装置がインターネットを通じて各種の問題に事前に対処できるパラダイムを創出する「IoT(モノのインターネット)」である。この世界では、従来よりもはるかに迅速かつ詳細に問題を特定できるだけでなく、人間の介在なしに問題が修正される場合も少なくない。専門家によると、IoTがサプライチェーンに与えるインパクトは無視できないという。
製造業の各社は、新たなレベルの効率化とリソースの有効活用の促進に向けて自社の持続可能性を高めたいと考えている。IoTはこの両面で貢献できる。企業がかつて想像できなかったほどの精度で製造業務を分析できるようになるからだ。
「従来、こうした分析ができるのは超一流のコンサルタントを抱えた最先端の企業だけだった」と話すのは、英コンサルティング企業PricewaterhouseCoopersの持続可能ビジネスプラクティス部門の業務執行ディレクターを務めるジョージ・ファバローロ氏だ。「今ではこうした分析が主流になりつつあり、多くの企業がそのメリットを理解し始めている」
IoTが提供するリアルタイムデータ
ファバローロ氏によると、製造業務においてIoTによる持続可能性の改善を実現するための最も合理的な方法は、機器間通信(M2M)インタフェースを通じてリアルタイムのリソース利用データを得ることだという。
「装置が劣化し始めたり、電力消費が多くなってきたりしたら、直ちにそれが通知されることが望ましい。3カ月後や4カ月後というのでは駄目だ。そこが持続可能性の取り組みで肝心なポイントだ」とファバローロ氏は話す。
こうした分析が製造業務にもたらすメリットは数え切れない。例えば、装置が動作中であっても、工場内に人がいなくなれば自動的に照明が消されて温度設定が調整され、誰かが工場内に入ると、再び照明がつけられて温度設定がリセットされる、といった利用方法が考えられる。あるいは、水漏れの兆候を示す水圧低下が検出されると、プロセスを停止して保守担当者に通知するというような利用方法もある。
さらに一歩進んで、工場内のある装置で潜在的に危険な機能不良が検出されると、故障発生のリスクを高める可能性がある他の装置を停止させ、問題が起きている正確な場所を保守担当者に指示する、といったこともIoTによって可能になるかもしれない。場合によっては、問題を解決するための新しいファームウェアをアップロードするなどの修復処理を開始させるような使い方もあり得るだろう。
持続可能性に関連した間接的・潜在的なメリットもある。例えば、IoTの機能を利用すれば、装置の修理で推測に頼らなくても済むようになり、保守担当者は必要かどうか分からないツールや部品を何度も取り寄せたりするのに時間を取られることがなくなるかもしれない。
「製品のどこに問題があるのかが分かっていれば、サービス担当者に1回電話をするだけで必要な部品を取り寄せることができる」と話すのは、米調査会社IDC Manufacturing Insightsのプラクティスディレクターを務めるキンバリー・ニックル氏だ。
IoTを活用している企業
米重機メーカーCaterpillarが「Product Link」という車両管理技術で顧客に提供しようとしているのも、まさに上記のような機能だ。Product Linkは、セルラー通信技術と衛星通信技術を利用して、ユーザーが使用するCaterpillar製車両の状態を監視し、各車両の運用状況に関する最新データをリアルタイムで提供する。これによりユーザー企業は、例えば燃費に悪影響を及ぼしている問題やオイル漏れの原因となっている箇所を早期に修理できるようになる。
環境、健康、安全、持続性に関する取り組みについて企業にアドバイスを提供する米Environmental and Occupational Risk Managementのデイブ・メイヤー上席コンサルタントは、「IoTのもう1つの潜在的メリットとして、汚染物質を大気に過度に放出したり、大量の排水を流したりする事態を避けられることがある」と指摘する。
「IoTによる企業のリソース管理の改善は、業務効率という面だけでなく、コンプライアンス面でもメリットがある」とメイヤー氏は話す。
言い換えれば、ビジネス全般の改善につながるということだ。持続可能性を重要なビジネス戦略と考える企業が増え、持続可能性を改善する取り組みにおけるIoTの効果が明らかになる中、この戦略でIoTが重要な要素になりつつある。
「今後の課題は、長期間持続し、エネルギー消費が少なく、リサイクルや再処理、再利用が可能な技術を考案することだ」とメイヤー氏は語る。「持続可能な製造の目的は、リソースの効率的かつ責任ある利用を通じて収益を改善する一方で、廃棄物を削減することにある」
この2つの目的の達成に貢献する可能性を秘めているIoTは、今後当分の間、製造業の主役となりそうだ。
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