BIベンダーを手に入れたOracleやSAP、IBMは、BIを活用した企業のパフォーマンス管理への対応を打ち出しているが、ユーザー企業はどのBIツールを選ぶべきか。IDC Japanへの取材を基に、BIツールの今後の展開を予測する。
2007年は、BI(Business Intelligence)市場を大きな変革の波が襲った。外資の独立系大手BIツールベンダーが、軒並み買収されたのだ。3月にHyperion SolutionsがOracleに、10月にはBusiness ObjectsがSAPに、そして11月にはCognosがIBMに。いずれの買収劇も大きなもめ事もなく友好的に進められたのは、買収されたどのベンダーもこの市場変化を必然ととらえ、自ら積極的な変革を求めていた結果なのかもしれない。
通常は市場で大規模な製品買収が発生すると、その市場は一時的に停滞、縮小することが多い。しかしながら今回の大型再編はそれぞれのツールが大規模ベンダーの後ろ盾を得ることとなり、むしろ製品の提供体制やサポート体制が大幅に強化された。買収したベンダーが持つ大きな顧客基盤の活用などもあり、市場はさらに拡大する可能性が高い。
また、企業を取り巻く環境の変化もBIツールには追い風となっている。2008年4月から日本版SOX法への対応が始まり、対応後に期待される内部統制強化のための「見える化」の実現にも、BIツールのニーズは高いものがある。
実際のところIDC Japanによれば、BIツールおよび分析ツール、ETL(Extract, Transform and Load)ツール、DWH(データウェアハウス)関連製品を含むBA(Business Analitics)製品の日本市場は、拡大傾向にあるとのこと。2005年のBA製品に対するユーザー投資額は7190億円で、これが2006年に7573億円に増加している。伸び率こそ低下しているが、2007年も引き続き市場は拡大しているという。IDC Japanでは、伸び率低下の原因をIT投資がよりコスト負担の大きいERP製品に一時的に向けられたためであろうと分析。今後のBA製品の市場については引き続き対前年比で6〜7%程度の成長を続け、市場規模としては2008年に8421億円、さらに2011年には9932億円まで拡大すると予測している。
2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2006〜2010 CAGR |
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ソフトウェア | 151460 | 162971 | 175357 | 188859 | 203968 | 219878 | 7.70% |
サービス | 432743 | 454380 | 477554 | 502386 | 529515 | 558109 | 5.20% |
そのほか | 173097 | 181060 | 189207 | 197343 | 206026 | 215297 | 4.50% |
合計 | 757300 | 798411 | 842118 | 888589 | 939510 | 993284 | 5.60% |
2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | |
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ソフトウェア | 20.00% | 20.40% | 20.80% | 21.30% | 21.70% | 22.10% |
サービス | 57.10% | 56.90% | 56.70% | 56.50% | 56.40% | 56.20% |
そのほか | 22.90% | 22.70% | 22.50% | 22.20% | 21.90% | 21.70% |
合計 | 100.00% | 100.00% | 100.00% | 100.00% | 100.00% | 100.00% |
2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | |
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ソフトウェア | 7.40% | 7.60% | 7.60% | 7.70% | 8.00% | 7.80% |
サービス | 4.80% | 5.00% | 5.10% | 5.20% | 5.40% | 5.40% |
そのほか | 4.60% | 4.60% | 4.50% | 4.30% | 4.40% | 4.50% |
合計 | 5.30% | 5.40% | 5.50% | 5.50% | 5.70% | 5.70% |
国内BAソリューション市場 セグメント別投資額予測(出典:IDC Japan 2007年9月「国内ビジネスアナリティクスソリューション市場2006年の分析と2007年〜2011年の予測」)
現状、2007年の買収劇によりBIツールベンダーは、総合力のある大規模ベンダーと専門技術に特化した独立系ベンダーに二極化している。SAS InstituteやSPSSなどの独立系BIツールベンダーはさらに特化した技術を打ち出すか、製品領域の重ならないベンダーとの新たな提携を迫られるかもしれない。その動きによっては、2008年以降も業界再編が加速する可能性がある。BIツール単独で生き残るのが厳しい状況は、国産のBIツールベンダーも同様だ。
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