情報漏えい対策やIT全般統制、グリーンITなどのニーズから、今シンクライアントに注目が集まっている。具体的に導入検討を始める前に、まずはシンクライアントの各実現方式をしっかり理解しておこう。
シンクライアントというテクノロジーの歴史は案外古く、もう10年以上も前から各種の製品やソリューションが存在する。しかし、特にここ数年の間に一段と頻繁に耳にするようになってきた。最近では大和証券や外為どっとコムなど、従来シンクライアントのニーズが高かった金融系ユーザーに加えて、近鉄百貨店や東電パートナーズ(介護事業)といった金融以外の業種でもシンクライアントの導入が始まっている。
本連載では、このように昨今再び注目を集めるシンクライアントを3回にわたって取り上げ、その最新情報と将来像を紹介していく。第1回の今回は、まずシンクライアントの定義や歴史を簡単に振り返り、さらにシンクライアントの数ある実現方式について、それぞれの概要を解説する。
まず、シンクライアントの定義をあらためて確認してみよう。ノークリサーチでは、シンクライアントを
「サーバと連携することにより、ユーザーが操作する端末上にデータを残さないクライアントPC。または、ソフトウェア的手段によってそれと同等の効果を通常のクライアントPC上で実現したもの」
と定義している。特に最近では、USBメモリからブートするなどの手段で通常のクライアントPCをシンクライアント化する手法も一般的になりつつある。これは、少し前までは存在しなかった新しいシンクライアントの形だ。現在ではシンクライアントという言葉を用いる場合、こうしたものも含むことが多い。
シンクライアントという言葉が使われるようになったのは、1996年前後である。サーバ側にアプリケーション処理やデータ格納を集中させ、ネットワークを介した特殊な端末上でユーザーが操作を行うという発想は、既にこの時期に登場していた。オラクルの「NC」(Network Computer)やサン・マイクロシステムズの「Java Station」などがその例である。しかし、当時はネットワーク帯域が現在ほど広くなく、クライアント側のCPU性能もJavaVMを動作させるには十分でなかったため、クライアントPCを置き換える代替手段として広く普及することはなかった。
一方、1990年代初頭からシトリックス・システムズは「WinFrame」という、複数ユーザーがリモートでWindows NTサーバ上のアプリケーションを利用できる技術を提供していた。これは後に、Windows NT Server 4.0, Terminal Server Editionのベース技術として採用され、Windows 2000 ServerおよびWindows Server 2003の「ターミナルサービス」へと進化していった。同時にシトリックス自身も、WinFrameを「MetaFrame」「Citrix Presentation Server」(2008年2月、「Citrix XenApp」に改称)へと発展させていった。
ターミナルサービスやCitrix Presentation Serverによって、クライアントPCのスペックが低くてもサーバ側で処理を実行させることによって最新のWindowsアプリケーションを利用することができるようになった。また、特にクライアント/サーバ型アプリケーションで問題となっていたクライアントPCの管理コストを、大幅に削減できることが期待された。
こうしたコスト削減メリットが評価され、地味ではありながらも着実に導入実績を重ねていった。
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