シンクライアントが抱える課題と来るべき姿目的別に選ぶシンクライアント【第3回】

シンクライアント導入を検討する際には、シンクライアントが現状抱えている課題やほかのソリューションも考慮に入れる必要がある。また、将来を考える上では、仮想化技術との融合が鍵を握ることになりそうだ。

2008年11月25日 08時00分 公開
[岩上由高,ノークリサーチ]

 本連載の最終回となる今回は、シンクライアントが抱える課題とその将来像について述べていくことにする。

シンクライアントが抱える課題

 クライアントPCの管理コスト軽減や情報漏えい防止など、さまざまなメリットを持つシンクライアントだが、導入や運用に際しては下記のような課題も存在する。

導入コスト

 前回「シンクライアントの導入検討、これだけは知っておきたい」で述べたように、シンクライアント導入に際しては、既存のクライアントPCの置き換えやサーバ側リソースの増強が必要になる場合がある。そのため、初期導入コストがネックとなることが多い。

 しかし、既存のクライアントPCを置き換えることなく、そのままシンクライアント化できるソリューションも登場しており、今後も導入コストを削減できる技術やソリューションの登場が期待される。

既存アプリケーションの動作保証

 特に画面転送型シンクライアントの場合には、利用するアプリケーションがマルチユーザー対応になっている必要がある。最近では、主要なアプリケーションはおおむねマルチユーザー対応になっているので大きな問題にはならないが、独自開発したアプリケーションや業務特化型の特殊なアプリケーションを利用している場合には注意が必要である。

大量リソースやリアルタイム性が必要なアプリケーション

 大量のCPUパワーやメモリリソースを必要とするCADや、リアルタイム性を必要とするIP電話などは、サーバ側に処理を集中させるシンクライアントではサーバに掛かる負荷が非常に大きくなるため、苦手とする分野である。ただし、一時的なキャッシュメモリをクライアント端末側に持たせたり、NECのシンクライアント端末「US100/110」のようにIP電話用のモジュールを端末に搭載するなどの手法で、ある程度は対処することが可能だ。

 自社のアプリケーション利用状況を正しく把握し、もし上記のようなタイプのアプリケーションを使用している場合は、適切な対処方法を持ったシンクライアントソリューションを選択する必要がある。

オフラインとマルチデバイスへの対応

 多くのシンクライアントソリューションは、クライアントとサーバのネットワーク接続が維持された状態を前提としている。しかし最近では、モバイル環境で利用可能なシンクライアントも登場しており、シンクライアント活用の場は社内だけでなく社外へと広がりつつある。そのときに重要となるのが、サーバとの接続が切れた状態、すなわちオフライン時の対応である。この点については、今後の解決すべき課題として残されている。

 また、オフラインと並んでモバイルでのシンクライアント活用に欠かせないのが、マルチデバイス対応である。モバイル環境で利用する機器はノートPCだけではなく、今後はスマートフォンなどの携帯端末も普及していくと予想される。しかし現時点(2008年11月)では、PC以外の端末を含むマルチデバイスでの利用を前提としたシンクライアントソリューションは、まだ登場していない。

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シンクライアント | 仮想化 | 情報漏洩 | VMware | UTM


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