組織が円滑にWindows 7に移行するために必要な準備方法を、段階を追って解説する。
Windows 7には、組織のためになる機能が多数搭載されている。しかも、10月22日にWindows 7がリリースされたのと同時に、Windows XPについてはサポート期限切れに向けた秒読みが始まる。つまり問題は、Microsoftの最新OSに移行すべきかどうかではなく、いつ移行すべきかなのだ。
組織としてWindows 7に移行する準備ができているかどうか見極めるには、以下の3点を自問するといい。
Windows 7にはパワフルな機能が多数あり、一部はWindows Server 2008 R2と連係している。自社にとってどの機能が有用かを見極めるため、IT管理者はこれら機能について知っておく必要がある。全社的に有用な機能もあれば、特定の部門やプロジェクト、組織、ユーザーにしか関係のない機能もあるかもしれない。
Windows 7への移行に当たっては、以下3つのシナリオのうち1つを選ぶことになる。
この場合、「Windows 7 Upgrade」のオプションを使い、恐らく過去にやったのと同じような形でアップグレードを実行できるだろう。この方法を使えばインストール済みのプログラムや設定、プロファイル、データをそのまま維持できる。バックアップは取った方がいいが、作業が済めばワークステーションはWindows 7になっており、ユーザーはそのまま作業に入ることができる。
まず、ユーザーのデータ、プロファイル、設定を外付けHDDや共有ネットワークといったメディアに一時的に移す。新しいコンピュータにWindows 7をインストールし、データをその新しいコンピュータ上で復元する。Windowsのアップグレードでなくても、新しいコンピュータに切り替える際はこのやり方が一般的だ。
Windows XPから直接Windows 7にアップグレードすることはできない。以下の2つのうちいずれかの方法を取ることになる。
現在Windows 7 RCまたはβ版を実行しているコンピュータについては、アップグレードは一切行わず、再インストールを行うことをお勧めする。β版やRCからアップグレードしたOSを使うのは望ましくない。もし問題が生じてMicrosoftなどのサポートに電話した場合、最初に「βまたはRCからアップグレードしましたか。それともクリーンインストールですか」と尋ねられるからだ。
大規模な導入を行う場合、IT担当者は自動的に移行できる手段を求めるだろう。Microsoftはこの目的で、高度なスクリプティング機能に対応した「User State Migration Tool(USMT) v4.0」を提供している。
USMTのコマンドラインコマンド「ScanState」と「LoadState」では、Windows XPからWindows 7への移行が容易になる。ScanStateはユーザー状態を移行ストアに保存し、LoadStateのそのユーザー状態を移行先のコンピュータで復元する。
同ツールはWindows XPからWindows 7への移行に対応できるようになっている。さらに、ユーザーが32ビットプラットフォームから64ビットプラットフォームに切り替える場合はUSMTでこれを実行できる。
さらに詳しい情報はMicrosoftの「ステップ バイ ステップ ガイド:ITプロ用Windowsの基本展開」を参照のこと。
Windows 7への段階的な移行のために以下の準備をしておくことが望ましい。
ほとんどの組織には、この情報を収集するためのハードウェア調査ツールがあり、そのリポートを調査のために利用できる。動作環境は最低限で済む。CPU 1GHz、メモリ1Gバイト、ディスクスペース16Gバイト以上。Windows Aero機能のためには256Mバイトのビデオメモリが必要だ(必須要件ではない)。
詳しいことはMicrosoftのWindows 7 Release Candidateのサイトで確認できる。
なお、Windows 7のために新しいハードウェアの導入が必要になるとは限らない。私のWindows 7搭載ノートPCはメモリ1Gバイトの4年ものだが、ドライバとアプリケーションはすべて問題なく動作している。
Windows VistaとWindows XPとでは別々の移行計画が必要になる。
2009年7月26日以降(※)に購入したコンピュータはWindows 7への無償アップグレードが受けられる。
※この情報は米国の場合を基にしており、日本では適用されない。
やり方は、ディスクをいったん消去して入れ直すか、ディスクの中身を保持したままWindows 7をインストールするかのいずれかになる。両方のやり方について別々の計画が必要になるかもしれない。MicrosoftのUSMT(Microsoft Windowsユーザー状態移行ツール)利用の検討も忘れてはいけない。
こうしたユーザーは社内各所に散らばっているかもしれないし、もしかしたら既にWindows 7を使っているかもしれない。フィードバックを提供してくれ、全社的にWindows 7を導入する前に問題があれば解決の手助けをしてくれるかもしれない。
ニーズに基づいて、最初にWindows 7にアップグレードするユーザーを決めておく。例えば直ちに導入するのが望ましいと思われるパワフルな機能の1つにDirectAccessがある。これはリモートのユーザーにとってメリットがあるため、このユーザーは最優先でWindows 7にアップグレードする対象となる。同様に、小規模の支社がある場合はBranchCacheの導入による恩恵を受けられるので、支社のユーザーは優先的なアップグレードの対象となる。ほかの機能についてもこのように、部門別、組織別、理論グループ別の適用を考える。
ただし、Windows 7の機能の中にはDirectAccessやBranchCacheのようにWindows Server 2008 R2の導入が必要なものもある。R2サーバの導入を計画に入れておくことを忘れずに。
全般的に見て、Windows 7はMicrosoftによる一歩前進であり、Windows Vistaの失敗や不振から判断すべきではない。しかし確実な成功のためには、自社の移行について念入りな計画を立てることが重要になる。
本稿筆者のギャリー・オルセン氏は米Hewlett-Packardのグローバルソリューションエンジニアリング部門システムソフトウェアエンジニア。著書に「Windows 2000: Active Directory Design and Deployment」、共著書に「Windows Server 2003 on HP ProLiant Servers」がある。Directory Services分野のMicrosoft MVP。過去にはWindows File Systems分野でも認定されている。
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