Webアプリの脆弱性放置が情報漏えいの温床に
ISACA報告書:SNSとWebアプリの安易な連携が被害を大規模化
ソーシャルネットワークとWebアプリケーションを安全に連携させるには、脆弱性対策などのセキュリティ確保は必須だ。だが企業の対応は遅れていると専門家は危機感を募らせる。
JavaScriptの非同期通信やXML、Flash、HTML5といった新しいWeb技術の登場で、Webアプリケーションの表現力や機能は大きく向上した。Webアプリケーションをソーシャルネットワーキングサービス(SNS)と連携させることでコミュニケーションを容易にし、顧客の新規獲得に結び付けようとする動きも活発化している。だがセキュリティ専門家は、Webアプリケーションは攻撃者が企業のネットワークに侵入するための危険な要素にもなると注意を促す。
情報セキュリティ専門家団体であるISACAが発表した報告書「Web application security: Business and risk considerations」によると、Webアプリケーションは企業に効率向上と顧客層拡大のチャンスをもたらす一方、深刻なセキュリティ問題を抱えているという。JavaScriptの非同期通信をはじめとする新技術は、Webアプリケーションの表現能力や機能を高める半面、サイバー犯罪集団に新たな攻撃の機会を与えることにもなると報告書は指摘している。
クライアントアプリケーションやクライアント/サーバ型アプリケーションをWebアプリケーションに刷新する企業は多い。これはライセンス管理の合理化やOSの相互運用問題の回避、社外勤務者の増加への対応といったさまざまな理由によるものだ。だがWebアプリケーションは、外部の攻撃者から容易にアクセスできるなど相当数の弱点があるとISACAは注意を促す。
「Webアプリケーションを対象とするサイバー攻撃で、数え切れないほどの個人情報の流出やサービス障害、知的財産の盗難が発生している。罰金や営業損失、顧客離れ、顧客への連絡コスト、投資家や潜在的なビジネスパートナーの信用失墜など、攻撃で企業が負うことになるコストは何百万ドルに達する」と、ISACAの報告書は説明する。
Webアプリケーションのリスクに対処するには
顧客やパートナー、サプライヤーとのコラボレーションを容易にし、企業の認知度向上や市場シェア伸長を実現するのに、WebアプリケーションとSNSの連携は強力な手段となる。こうしたメリットを引き出すためにも、企業はWebアプリケーションの潜在的なセキュリティ問題を見落としてはならないとISACAは主張する。ISACAは企業の最高情報セキュリティ責任者(CISO)に対し、自社のソフトウェア開発ライフサイクルを見直して徐々に改善し、一般的なコーディングエラーに対応するよう提案している。セキュリティ構築の成熟度モデル「Building Security In Maturity Model(BSIMM)」などのフレームワークや方法論は、自社の対策の現状と大企業のベストプラクティスを比較する一助となる。
「Webアプリケーションのセキュリティ対策が、プログラマーにセキュアなコードの書き方を周知させるといった単純な対応で済むのなら大きな問題にはならない。だがWebアプリケーションは大規模で複雑なシステムの構成要素の一部であり、多数の要因に影響される。中にはテクノロジーとほとんど無関係の要因さえある」(ISACA)
ISACAの報告書は、Webアプリケーションの脆弱性の対応状況はいまだに不十分だという。SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といったWebアプリケーションの脆弱性の脅威は相変わらず大きい。インターネットを素早く巡回してWebアプリケーションの脆弱性を自動的に見つけ出すツールが存在するなど、攻撃者にとって脆弱性の悪用は最も容易な攻撃手段の1つになっている。Webアプリケーションの脆弱性の悪用で、そのアプリケーションが接続された企業ネットワークへの侵入に必要な情報が流出してしまうことも多い。これはSNSと結び付いたWebアプリケーションでも多く見られる問題であり、被害はより大規模になる。
「Webアプリケーションの脆弱性に対処しないと大きな影響が出ると理解していながら、多くの企業は有効な対策ができていないようだ。今ではさまざまな知識やリソースが容易に得られるのに、状況は悪化し続けている」(ISACA)
ISACAの報告書は、通信大手Verizon Communicationsが発表した最新の報告書「2011 Data Breach Investigations Report」の内容が、企業に誤解を招く可能性があると指摘する。Verizonの報告書は、「Webアプリケーションはもはや筆頭の攻撃対象ではなくなった」と結論付けている。だが報告書をよく読むと、「この結果は小売り業界やサービス業界の情報流出の攻撃事例を除くと一変する」と解説。これらの業界を除くと、Webアプリケーションはサイバー犯罪集団が利用する攻撃経路のトップに浮上する。
ISACAは「利用できる情報や支援策は大量にある。その多くは無料で、セキュリティ対策を理解する助けになる。だが最も重要な第一歩は、組織の経営陣がWebアプリケーションの脆弱性がもたらす潜在的な影響について認識し、その理解に基づいて必要なリソースを捻出することだ」と指摘する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[アトラシアン株式会社] IT運用や従業員サポートは生成AIでどう変わる? 使い方や導入の流れは? -
製品資料
[株式会社みらい翻訳] 音声翻訳活用の課題を解決、“本当に使える”ツールの特徴とは? -
製品レビュー
[Wrike Japan 株式会社] 400店舗を支えるWalmart Canada、散在する情報やアナログな管理をどう変えた? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 年間100件超のDXプロジェクトを統合管理、JERAはどのように実現した? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] グローバルなクリエイティブ業務を合理化、エスティーローダーに学ぶ実践のコツ
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
2
身代金支払いは逆効果 情シスのためのランサムウェア対策ガイド2026
-
3
自社を守る「SCS評価制度」活用法 7割の企業が取引先起点の情報漏えいに直面
-
4
ランサムウェア、暗号化の89%は深夜 情シスが備える「夜間の空白」対策
-
5
多要素認証導入済みでもランサムウェア被害に 復旧費用は平均2億7000万円
-
6
「技術屋」で終わるか、部長へ昇格するか 今取りたい「IT×ビジネスの認定資格」5選
-
7
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
8
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
9
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
10
AIエージェントを暴走させない設定、済んでますか? 対策5選を専門家が紹介
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
「スクラム」と「カンバン」の違いとは? アジャイル型開発手法を徹底比較
-
8
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー