企業独自の差別化要因には直結しない部分でSaaSの利用が進んでいるようだ。導入企業が増えたことで、SaaS選びの際の注意点が明らかになってきた。
今日最も高い注目を集めているITトレンドは、何と言ってもクラウドコンピューティングだ。近年ではクラウドサービスを「IaaS(Infrastructure as a Service)」「PaaS(Platform as a Service)」「SaaS(Software as a Service)」の3種類に分類することが一般的になってきているが、その中でも特にエンドユーザーにとって身近な存在はSaaSであろう。
アプリケーションの機能を丸ごとクラウドサービスとして提供するSaaSは、オンプレミスのアプリケーションに比べて導入・運用にかかる時間やコストを大幅に省略でき、ユーザーの目から見た場合には極めて効率的なアプリケーション利用形態に映る。既に多くの企業がSaaSのサービスを実際に利用しているか、もしくは導入を検討している。読者の中にも、自社のITシステムの中でSaaSをどう活用できるか、検討を重ねているさなかの方もいることだろう。
ただし、SaaSは決して万能のソリューションではない。その利用が適している分野もあれば、そうでない分野も存在する。アイ・ティ・アールが行った調査「ITR Market View:クラウド・コンピューティング市場2011」によると、SRM(Supplier Relationship Management)やFAQ作成管理、Web会議、CRM(Customer Relationship Management)といった分野のIT投資は、既に半分以上がSaaSに向けられている。一方で、ECM(Enterprise Content Management)やERP、WCM(Web Content Management)、グループウェアといった分野では、まだSaaSに対する投資の割合は少ない。
こうした傾向について、アイ・ティ・アール リサーチ統括ディレクター/シニア・アナリストの生熊清司氏は次のように考察する。
「情報系アプリケーション、中でも企業ごとの差別化要因が少ない分野のものに関しては、SaaSの活用が比較的先行して進んでいる。今後も、情報系の分野ではSaaS化の流れが続くと予想できる。一方で、基幹系アプリケーションはシステム寿命が長く、基幹系データをクラウド事業者に預けることに慎重な企業も多いため、SaaSの導入は情報系アプリケーションほどには進んでいないのが現状だ」
ただし、一概に「情報系=SaaS」「基幹系=オンプレミス」という図式を当てはめるわけにもいかない。よくクラウドを論じる際に、「クラウド vs. オンプレミス」という構図が語られるが、これはユーザー企業をミスリードする原因になりかねないと生熊氏は指摘する。
「SaaSもオンプレミスのソフトウェアも、基本的にはパッケージソリューションである点は同じ。つまり、『SaaSかオンプレミスか』を論じる前に、本来は『パッケージソリューションとスクラッチ開発のどちらを選ぶか』を先に検討する必要がある。自社のビジネスモデルをきちんと把握した上で、競合他社との差別化を担っているコア業務に関しては、その強みを生かすためにスクラッチ開発を検討する必要があるし、そうでない業務についてはパッケージ導入で効率化を図ればいい。その上で初めて、パッケージ適用部分をSaaSにするか、あるいはオンプレミスにするかを検討するべき」
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