クラウド移行候補の選定
クラウドに向く/向かないサービスを見極める5つのチェック項目
企業のIT環境にクラウドを導入する上での最適な方法とは何か。プライベートクラウドに移行するサービスを見極めるために役立つ5つのチェック項目を紹介する。
業界で聞かれるクラウド関連の話題は、「クラウドコンピューティングとは何か」から「クラウドを企業のIT環境に導入する最適な方法は何か」にシフトした。この変化は、かつて仮想サーバに適した物理サーバを判断する方法を知ろうとした、仮想化の候補についての議論をほうふつとさせる。
クラウドでの運用に適したサービスを選定するための“クラウド移行候補”という考え方は、クラウドへの投資効果の最大化と並んで欠くことのできない概念だ。本稿では、プライベートクラウドに移行するサービスとして有力な候補を見極めるためのチェック項目を紹介したい。
1.クラウドのワークロードのネットワーク要件は?
サーバの仮想化に際して処理要件とメモリ要件がポイントになったように、プライベートクラウド内のワークロードやアプリケーションによって消費されるネットワークリソースがどの程度になるかを把握することは極めて重要だ(関連記事:2011年クラウド業界を振り返る ~IaaSの発展、混沌としたPaaS業界の行方)。
LAN内の他のサーバにリンクバックするような、ネットワークリソース要件の高いワークロードは有力なクラウド候補にはならないだろう。このようなワークロードをプライベートクラウドに移行すると、帯域幅と遅延の問題が発生し、クラウド全体のパフォーマンスに影響する恐れがある。クラウド内のサーバと、ローカルデータセンター内のその他のサーバのネットワーク要件を確認しよう。
2.プライベートクラウドのサービスと他サービスとの連係は?
クラウドのワークロードがネットワーク内の他のワークロードと連係する場合の通信を考える。例えば、WindowsベースのITサービスのほとんどは、デスクトップOSと同様に、Active Directoryを利用して認証を行う。ドメインコントローラーは大量のトラフィックを処理する必要があるため、これらを完全にクラウドに移行するのは賢明ではない。
一方、ローカルデータセンター内の他のサービスとほとんど連係しないサービスは、配置先がクラウドに変わったことで影響が出るとは考えにくい。また、遅延への影響もほとんどないだろう。従って、“他サービスとの連係がほとんどない仮想マシン(VM)”を探すことも、クラウドへの移行に適したリソースを見つける有効な手段だ。
3.プライベートクラウドに配置するワークロードは他のワークロードから明確に分離できるか?
他から分離できるサービスであるかどうかは、クラウドサービスの候補を選定する際の基準の1つになり得る。例えば、DMZ内のサービスは、他から明確に分離されていて、非常に有力なクラウドの候補といえる。DMZは、ファイアウォールのルールを使って、意図的にサービスをインターネットと内部のLANから分離されている。この分離のおかげで、DMZ内のサービスはどれも、容易にクラウドに移行できるだろう。DMZが持つ分離という特質は、プライベートクラウドの有力候補に必要な条件だ。仮想ファイアウォールのルールによって他のクラウドサービスから分離すれば、DMZサービスのクラウド運用は成功を期待できる。
4.レプリケーションが容易なサービスか?
ITサービスの中には、レプリケーションを考慮して設計されているものがある。つまり、これらのサービスは既に、LANとクラウド間の通信で予想される遅延や帯域幅を想定した作りになっているといえる。これには、オフサイトへのバックアップコピーサービスやフェイルオーバーサーバの他、LANの速度に対応できないネットワーク条件を想定したプロトコルを使用するサービスが含まれる。
5.プライベートクラウド内のデータが侵害された場合に、どの程度の打撃を受けるか?
この最後のチェック項目は、クラウドのセキュリティやデータの所有権について、初期に議論された懸念に直接関係する。データのセキュリティ、所有権、コンプライアンス関連の問題は、VMをクラウドに配置する際に考慮しなければならない。VMやITリソースの中には、消失や侵害が発生してもビジネスに影響しないデータを扱うものもある。
クラウドサービスの候補にするVMを決める場合は、そのVMがどのようなデータを扱うかに注意してほしい。ある種のデータが消失または漏えいした場合に被る影響が、クラウドへの移行によって得られるメリットをしのぐ場合、その種のデータを扱うVMはデータセンターで運用すべきだろう(関連記事:クラウドのデータは保護できる! 秘密分散技術を利用するストレージサービス)。
クラウド移行に関する記事
プライベートクラウドへの移行に適したVMを選ぶには、各VMとサービスのリソース使用状況を分析する必要がある。また、それらのリソースをクラウド移行した場合のリスクも検証しなければならない。適切な評価を行えば、プライベートクラウドに展開する最適なリソースとサービスを特定することは、さほど難しくはないはずだ。
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