2030年に3人に1人が高齢者になる日本。社会保障や地域医療などの問題が指摘されている。2013年4月、若手医師が中心となり、「自分たちの世代で、日本を元気に」と日本の医療の変革を目指す取り組みが始まった。
世界でも類を見ない高水準の医療・介護制度を確立している日本では、国民の60%以上が自宅での療養を望んでいるという。しかし、自宅で最期を迎える人の割合は低下し、日本の平均入院期間は米国の5倍、ドイツの3倍ともいわれるなど、入院医療・施設介護が中心となっているのが現状だ。また、2025年ごろに団塊世代の多くが後期高齢者となる超高齢社会を迎える。脳卒中や認知症などで通院が難しかったり、自宅でがんの緩和ケアなどを求めたりする患者を対象とした「在宅医療」のニーズが高まっている。
現在、政府は病院完結型医療から脱却し、できる限り住み慣れた家庭や地域で療養するために必要な医療・介護サービスを提供する在宅医療提供体制の整備に取り組んでいる(関連記事:2012年は「地域包括ケア元年」 医療・介護連携の今後)。在宅医療・介護では、医師や看護師、介護ヘルパー、ケアマネジャー、薬剤師、行政担当者など、多職種、多事業所のチーム連携が必要だ。しかし、それぞれの業務の独立性が極めて高く、患者情報を共有してケアに生かすことが難しいという指摘もある。
そんな中、若手医師が中心となり「最適な在宅医療サービスを提供することで、これからの日本を良くする」というプロジェクトが2013年4月に始動した。指揮を取るのは、東京大学医学部の同級生である田上佑輔氏と安井 佑氏の2人が共同代表を務める株式会社「Good Medicine Japan」(GMJ)だ。
2012年5月に設立されたGMJは、以下の3つを企業理念に掲げ、在宅診療所経営や高齢者施設経営、地域包括医療推進支援などを展開している。
GMJは、これからの地域医療の在り方として「Open Medical Community」を提案。Open Medical Communityとは、患者やその家族、医師や看護師、介護スタッフ、地域の関係者が情報を共有する全員参加型の地域医療を実現するというものだ。従来の多くの地域モデルで提唱される医療患者中心ではなく、患者も参加者の1人として参加するコミュニティーの形成が重要になるという。
GMJの共同代表取締役 田上氏は「医療の問題は患者や医師、病院、自治体などの単位で多角的な視点で考える必要がある。“医師の負担軽減”“患者満足度の向上”“医療提供体制の整備”などについて、それぞれが部分的に最適化を図ろうとすると、どうしても利益が相反することもある」と指摘。その上で「GMJでは個人の生活から社会システムまでを含めるICTを活用した新しい医療モデルを構築し、そのサービスを世界中に提供したい」と意気込みを語る。
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