タブレットを活用した救急患者の広域情報共有システムが始動、静岡県駿東地区NEWS

タブレット端末を活用してデータを入力し、クラウドで保存・管理。救急隊と医療機関で傷病者の情報と受け入れ可能状況をリアルタイムに共有する。

2013年05月31日 20時00分 公開
[TechTargetジャパン]

 広域救急医療体制構築委員会と富士通は5月31日、「静岡県駿東地区広域救急医療情報共有システム」を構築し、その運用を6月1日に開始すると発表した。

 このシステムは、救急隊と医療機関が傷病者情報と医療機関の受け入れ可能状況をリアルタイムで共有するもの。救急隊がタブレット端末から入力する傷病者情報と、医療機関がタブレット端末から入力する救急受け入れ可能状況をマッチングし、救急隊のタブレット端末に受け入れ可能な医療機関のリストを表示する(関連記事:東日本大震災の反省を生かし、救急患者の最適な搬送をITで実現)。

photo 静岡県駿東地区広域救急医療情報共有システムのイメージ

 静岡県駿東地区では、入院治療が必要な患者を受け入れる二次救急医療機関が減少しており、救急医療体制の維持が課題だった。そこで本地区内の沼津、御殿場市と三島市の3医師会が中心となり、4市3町の行政、消防本部、医療機関で構成する「広域救急医療体制構築委員会」を設置。救急隊と医療機関の迅速な情報共有の仕組みの整備を開始した。

広域救急医療体制構築委員会 参加機関
所属 参画団体名
医師会 沼津医師会、御殿場市医師会、三島市医師会
自治体 沼津市、裾野市、清水町、長泉町、三島市、御殿場市、小山町
消防団体 沼津市、裾野市、清水町、長泉町、三島市、御殿場市・小山町の消防本部
医療機関 沼津市立病院の他、二次救急医療機関15カ所
沼津夜間救急医療センターの他、初期救急医療機関3カ所

 静岡県駿東地区4市3町の全救急車29台と医療機関18カ所にタブレット端末を配備しており、広域での情報共有と医療連携を実施する。これにより、救急隊と医療機関の間で、効率的に正確な情報共有が可能に。受け入れ先が見つからず救急搬送が遅れるような事態を防ぎ、円滑な救急医療を行うことができるという。

救急隊員による傷病者情報入力と受け入れ可能医療機関の参照

photo 出動情報を入力する救急隊員(富士通のリリースより)

 救急隊は出動指示を受けると、救急車に配備されているタブレット端末に以下の情報を入力する。

  1. 出動情報(発生場所や事前管制・特定行為の指示の有無など)
  2. 患者属性情報(性別・年齢など)
  3. 生理学的評価(呼吸・脈拍など)
  4. 状況・症状
  5. 診療科
  6. 画像などの傷病者情報

 入力されたデータはクラウド上のデータセンターに保存され、傷病者情報を随時更新できる。この情報を基に医療機関が入力する受け入れ可能状況とマッチング。その後、救急隊のタブレット端末に傷病者を受け入れ可能な医療機関のリストが表示される。救急隊は、このリストから搬送先医療機関を選定し、医療機関に電話で受け入れを要請した後に、患者を搬送できる。

医療機関での傷病者情報参照と、受け入れ可能表明

 また、医療機関側では最新の傷病者情報を、タブレット端末でリアルタイムに確認する。輪番病院(当日の救急受け入れ担当病院)以外の医療機関も、受け入れが可能な場合には、タブレット端末で受け入れを表明できる。傷病者情報を確認して受け入れを表明する「随時受入表明」と、緊急度や症状ごとに当日の受け入れ可能状況を事前に登録する「事前受入表明」などが可能(関連記事:緊急医療に使えるデジタルペンは医療業界に浸透するのか?)。

 広域救急医療体制構築委員会は、このシステムに蓄積される救急搬送に関する情報の分析機能などを拡充するとともに、継続的にシステムの評価と見直しを行い、より効果的で使いやすいシステムへと進化させたいとしている。

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