全国のろう学校や難聴学級、特別支援学校にコミュニケーション支援システムを寄贈する「きこえのあしながさん」プロジェクトが始動。東京都台東区立柏葉中学校では、生徒を笑顔にする授業に役立てられている。
ある日突然、耳が聞こえなくなったら――。耳の病気を経験したことのない人が、明確な原因もなく突然耳が聞こえなくなる「突発性難聴」。日本では年間3万5000人が突発性の難聴を発症し、そのうち2万3000人が完治することなく難聴者となっている。
2011年に設立されたNPO法人 日本ユニバーサル・サウンドデザイン協会は「声と音のバリアフリーを目指して」をコンセプトとして、補聴器や人工内耳を装用した難聴者の聞こえを改善する活動を行っている。その一環として、難聴の生徒を対象とする「きこえのあしながさんプロジェクト」を2013年12月に開始した。
きこえのあしながさんプロジェクトは、同協会とユニバーサル・サウンドデザインが共同開発したコミュニケーション支援システム「COMUOON(コミューン)」を、全国のろう学校や難聴学級、特別支援学校に寄贈する活動だ。その第1号として、日本ユニバーサル・サウンドデザイン協会は2014年1月、東京都台東区教育委員会にCOMUOONを寄贈した。
寄贈されたCOMUOONは、2013年4月から試験導入していた台東区立柏葉中学校で正式採用されている。2014年1月末に同校で開催された寄贈式では、プロジェクトに賛同するレーシングドライバーの横溝直輝氏が柏葉中学校の難聴学級の生徒にCOMUOONを直接渡した。
柏葉中学校の上原一夫校長は「難聴の生徒たちに効果があると聞き、2013年4月にCOMUOONを借りて実際に授業で使用してみた。その結果、英語の授業で聞こえの改善効果があることが分かった。今後も今回寄贈されたCOMUOONを継続して使用していきたい」と説明する。
日本ユニバーサル・サウンドデザイン協会の理事長であり、ユニバーサル・サウンドデザインの代表取締役を務める中石 真一路氏は「試験導入時に柏葉中学校の生徒が“COMUOONを使うと音がよく聞こえる”と、はにかんだ笑顔で言ってくれた。製品化したら必ず寄贈することを約束していた」と語る。
COMUOONによって、どのくらい難聴生徒の聞こえは改善するのか? 本稿では、報道陣に公開された英語の模擬授業に参加した生徒の声を踏まえ、その効果を紹介する。
柏葉中学校では試験導入時から、1〜3年生が合同で行う英語の授業でCOMUOONを利用している。報道陣に公開された英語の模擬授業では、教師と5人の生徒が机に向かい合って座り、生徒の中央にCOMUOONを置いて、教師がマイクを通して生徒に向かって話す形式で行われた(写真1)。
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