社内アプリストアは、従業員が必要とするツールを配信できる。同時に誰が何を使うかをコントロールして情報セキュリティを強化することも可能だ。
多くの従業員が私物のスマートフォンやタブレットを業務に使い、さまざまなモバイルアプリケーションにアクセスしている。パートナーやサプライヤー、顧客とのコミュニケーションのためにモバイルアプリケーションを導入する企業もある。
会社がセキュリティ&リスク(S&R)およびインフラ&オペレーション(I&O)担当幹部に、端末そのものだけでなく、その端末に搭載する業務関連アプリケーションの管理やセキュリティ対策を担わせることもある。一部のIT幹部はこの課題に対応するため、セルフサービス方式のアプリストアを導入し、社公認のモバイルアプリケーションやサービスを従業員に提供している。だが今後数年のうちに、そうしたアプリストアの機能は広がり、コンテンツ共有やきめ細かい検索、プロビジョニング、リポート、モニターといったサービスを、サポートしているスマートフォンやタブレット、さらにはPC向けに提供するようになるだろう。
「App Store」や「Google Play」といったコンシューマー向けアプリストアでは、モバイル端末のサプライヤーが自社のモバイルプラットフォームを使っている個人向けにアプリケーションを配信している。こうしたアプリストアはコンシューマーとのかかわり方という点で絶大な成功を収め、アプリケーションやコンテンツの発見と入手に関するユーザーの期待値が出来上がった。調査会社のForresterは、App StoreとMicrosoftのWindows 8アプリストアが業務用アプリケーションを入手するための主要手段になると予想する。アプリストアはスマートフォンとタブレット向けアプリ配信の域を越え、PCも網羅するようになるだろう。多くのアプリストアは、ITサプライヤーやサービスプロバイダー(AT&T、Cisco Systems、Salesforce.com、Samsung、SAP、Verizonなど)がモバイルアプリを顧客向けに配信できるようにしている。
コンシューマー向けのアプリストアは主にゲームやエンターテインメント、スポーツなどのアプリケーションやコンテンツを配信する。一方で、経費管理、時間管理、メモ取り、コンテンツ管理など、従業員の生産性強化につながるビジネス指向アプリケーションも増えている。
企業の35%は現在、従業員がコンシューマー向けアプリストアからモバイルアプリケーションを買うことを認めている。だが社内版アプリストアの導入を考えているS&RやI&Oの担当幹部にとって、コンシューマー向けアプリには重大な問題がある。ほとんどのアプリストアがプラットフォームを限定しているが、これは複数のプラットフォームや端末をサポートしなければならないIT部門にとって問題だ。非ネイティブアプリケーションや、IT部門が社内で開発したアプリケーションの配信チャネルとするには、コンシューマー向けアプリストアは現実的ではない。
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ほとんどのIT部門はモバイルプロジェクトの始動に当たり、新しいプラットフォーム上で電子メールとカレンダーアプリケーションを提供する小規模でシンプルな試行からスタートする。これが成功すると、すぐに私物端末の業務利用(BYOD)プログラムを拡大してコラボレーションや経費管理、文書の同期や共有といった多様なアプリを提供するよう、S&RとI&Oチームにプレッシャーがかかる。そうした課題に対応するため、ITプロフェッショナルは社内アプリストアに目を向けるようになる。Forresterの定義によると、社内アプリストアとは「企業が公認するモバイルアプリケーションとサービスを選んで従業員、パートナー、サプライヤー、顧客といった社内外のユーザーに配信できるようにする技術ソリューション」を指す。
現在の社内アプリストアは、IT部門がモバイルアプリを配信して管理するための純粋な社内向け配信チャネルにすぎない。しかし、これはもっと多くのことができる可能性を秘めている。
社内アプリストアは、ITチームによるアプリのサポートと配信方法を変革する。I&Oチームは、ユーザーに会社公認のモバイルアプリケーションを利用してもらうためのセルフサービスオプションと直感的なインタフェースを提供できる。モバイルアプリのコントロールやアクセスポリシーの管理もある程度可能になるので、S&Rプロフェッショナルにとっても望ましい。従業員は、業務に必要な全ツールにアクセスするためのポータルとしてこのアプリストアを利用できる。
先端を行く企業はコンシューマー向けチャネルを参考にして、IT部門と業務部門とのかかわり方を変化させている。現在のようにエラーが多いアプリケーションのプッシュ配信やPCへのインストールプロセスには、ユーザーもI&Oチームも満足していない。さらに多くのユーザーがもっと多くのツールにアクセスするようになれば、多様化するアプリケーション全般にわたる配信管理は極めて複雑になる。従って、進んだIT部門はアプリストアを使ってコンテンツを配信し、アクセスポリシーを管理しようとする。しかし先端を行く企業でさえも、ユーザーの基本的なニーズに対応しているにすぎない。いずれユーザーは、自分がどの端末を使っていようと、必要なアプリケーション全てにアクセスできることを期待するようになる。S&RとI&Oのプロフェッショナルは、社内アプリストアの進化の3段階に備えなければならない。各段階で成功を収めるためには進化型の機能セットを取り入れ、ユーザー間の認識を高める必要がある。
現在の社内アプリストアは、カスタム版のアプリと会社が公認したコンシューマー向けの市販アプリの両方をサポートしている。従業員はセルフサービス方式で、会社が業務用に公認したモバイルアプリを見つけて利用できる。こうしたアプリには、エグゼクティブリポート、ダッシュボード、文書ライブラリ、エンタープライズアプリケーションアプリなどのカスタム開発されたビジネスアプリケーションが含まれる。そうした社内アプリストアには、WebアプリへのリンクやApp Storeなどのコンシューマー向けアプリストアが提供する公認ビジネスアプリへのリンクも掲載されている。
社内アプリストアでは、特定の業務分野に合わせたアプリを提供できる。アプリケーション開発をモバイル端末向けに簡素化すれば、特定分野の業務や事業、産業にターゲットを絞ったアプリケーションを大量に開発するスピードが速まる。S&Rチームは地域(例えば欧州の従業員など)、機能(営業など)、端末(iPadなど)といった基準に基づいて従業員に提供するアプリのコレクションを作成できる。
こうした社内アプリストアを使って、アプリケーションの機能や配信をコントロールすることも可能だ。現代の社内アプリストアはS&Rチームがモバイルアプリの認証や設定、配布をコントロールする助けになる。アプリケーション発見機能では、ユーザーごとの役割や端末の種類、OSに基づいて公認アプリにスポットを当てられる。S&Rプロフェッショナルは会社の認証や設定、監視ポリシーを適用してユーザーを追跡できる。
最後に、社内アプリストアではモバイルアプリやデータを管理・保護するためのセキュリティ機能を提供できる。S&R部門はアプリケーションの在庫管理や公認アプリケーションの特定、マルウェアなど不正なコンテンツを呼び込みかねないアプリのブラックリストを作成可能だ。例えば、エンタープライズファイル共有といったアプリケーションを特定の従業員が使えないようにして、同期機能経由でデータが他の端末に送信されることに起因する法律問題やセキュリティ問題を防止できる。従業員が転職したり端末をなくしたりした場合は、会社のアプリをその従業員の端末から削除できる。
アプリケーションの種類や開発アーキテクチャ、サポートするプラットフォームの多様化に伴い、知的財産や従業員および顧客の個人情報といったセンシティブなデータのセキュリティを守りながら、業務用アプリケーション配信プロセスをスリム化するニーズが生じている。アプリストアにコンテンツ管理機能が加われば、セルフサービス方式のアクセスを提供できる。会社のアプリストアは、従業員が業務のために必要とする全ツールとデータがそろう総合ストアになり得る。
本稿はForresterの報告書「Build A Corporate App Store Into Your Corporate Mobility Strategy」(会社のモバイル戦略に会社のアプリストアを組み込む)に基づく。
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