企業は個々のユーザーのニーズにスポットを当て、アプリストアでは確実に適切なツールを適切な業務用に提供しなければならない。
アプリストアのモデルはユーザーの間で非常に人気が高いのに、自社のアプリケーション配信の仕組みはなぜ再考できないのか。組織がそう自問し始めている。
コンシューマー分野における「App Store」や「Google Play」と同様、エンタープライズアプリストアでは、組織が公認したアプリとサービスの幅広い選択肢の中から、ユーザーが仕事のために必要とするツールを選んでボタン1つで簡単にインストールできる。
Nationwide Building Societyのグループデジタル開発責任者、ダリル・ウィルキンソン氏によると、ユーザーが従来のデスクトップアプリケーションよりモバイルアプリやWebアプリの方を好むのは、ルック&フィールが優れていて使いやすいからだという。
「ユーザーの期待値が出来上がった今、少なくとも同じくらい優れたものを提供しなければならない。だから組織には魅力的なエンタープライズアプリストアを持ってもらいたいと思う」とウィルキンソン氏は話す。
Nationwideは現在、エンタープライズアプリストアの試用期間中にあり、当初約12社あったサプライヤーを数社にまで絞り込んだ。ウィルキンソン氏はソフトウェアサプライヤーとアプリのエコステムが形成されている「コンテナ型の」クラウドベースシステムに傾きつつあるという。一方で同社は電子メール、カレンダー、タスク管理、社内ニュースといったサービス用のアプリ多数を試用し、導入済みのGood Technologyモバイル端末管理(MDM)スイートのアプリストア機能を通じてそれを配信している。
どのサプライヤーを選んだとしても、Nationwideのエンタープライズアプリストアは2015年初めまでに稼働させ、希望する1万7000人の従業員全員が使える状態にすることを目指す。
Gartnerによると、2017年までに4分の1の企業が社内アプリストアを持つようになる見通しだ。多くは既にMDMソフトウェアを通じて提供できる能力があり、MDMの多くがアプリストアに似た機能を備えている。
だが、成功のためには企業がユーザーエクスペリエンス改善の視点からこの作業に取り組み、ユーザーが望む選択肢を与える必要があるとウィルキンソン氏は指摘する。
「私生活で私は自分のタブレットとスマートフォンが気に入っていて、制約を受けることなくそれを使っている。端末の機能を無効にしたり、特定のアプリケーションを制限したりするのは自分にとってしっくりこない。それではいかにも権威的で、ユーザーエクスペリエンスを損ないかねない」と同氏は言う。
「バランスを保つ必要はある。だが最新の技術をうまくコスト効率的に提供すれば、会社も満足するし従業員の意欲も高まる。それは自分たちがどんな会社かを大いにアピールすることにもつながる」
Gartnerも同様に、ユーザーの選択肢を増やすことが重要であると考えている。同社の2014年4月の報告書「The Foundation of a Successful Enterprise App Store」(エンタープライライズアプリストア成功の基盤)の中でアナリストのブライアン・プレンティス氏は「アプリストアが選択肢を提示しなければ、使われることはないだろう」と述べた。
同氏はさらに、旧ソ連の小売りのような経験を企業が繰り返してはならないとくぎを刺す。「ソビエト政府の立案者は、市民には製品の選択肢があると確信していた。しかし市民は自分たちの店の乏しい選択肢と西側の選択肢を見比べることができ、政府の立案者に対する怒りが募って闇市場がはびこった」
Severn Trent Waterのマイロン・フリシク最高情報責任者(CIO)は、VMwareの「AirWatch」を使ったエンタープライズアプリストアを試験的に利用している。
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