モバイル端末を管理しようとする動きは、かつてのPC管理を思わせる。しかしMDMにはモバイル端末のデータバックアップ機能が欠落している。なぜなのか?
かつてデスクトップPCが世界中のオフィスを席巻していたころ、IT部門が定めたポリシーを施行する手段として、多くの企業がエージェントを導入し、特定の機能が想定通りの動作をするよう保証したものだった。そうした運用管理業務の具体例としては、ソフトウェアの更新、夜間の端末シャットダウンまたはスリープ、ユーザーの操作の監視、セキュリティポリシーの適用などが含まれる。当時は(各従業員の)業務内容や役割に合わせて、ユーザーがシステムを操作できる範囲をなるべく限定していた。
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組織内に展開したエージェントが果たす主な役割は、バックアップソフトで端末を保護し、データ(の安全性)を保証することだ。
モバイル端末の普及の様子は、いろいろな意味でかつてのデスクトップPCのそれを思い起こさせるし、発生する問題も似通っている。そんな課題への対策として注目を集めるようになったのが、モバイル端末管理(MDM)だ。本誌Computer Weeklyが、英国のIT専門家を対象として最近実施した「2015年IT投資の優先順位に関する調査」では、回答者の73%がモビリティ分野での重要プロジェクトとしてMDMを挙げた。
しかし、バックアップを重要課題とする企業は見当たらない。大抵の組織は、モバイル端末のバックアップを取得していないし、モバイル端末用のバックアップ製品もほとんど見掛けない。ではMDMは、データ保護という観点で一定の役割を果たしているといえるのだろうか。あるいはMDMを利用していても、モバイル端末のバックアップは実施していないという、(現実と理想との)ギャップは残るのだろうか。
MDMシステムは確かに、デスクトップPCの運用管理システムとほぼ同じ機能を備えている。ただしMDMは、モバイル端末固有の複雑性に対処しなければならない。例えばモバイル端末の場合、ネットワーク接続の発生は不規則で、(デスクトップのように)常時接続するわけではない。またその端末が従業員の私物である場合は、企業がその端末の動作の全てを管理するわけにはいかない。
米調査会社のGartnerは当初、MDMを「組織で利用するアプリケーションをモバイル端末に展開し、サポートすることを可能にする一連の製品およびサービス……(中略)……これにより、複数のプラットフォームにわたって組織内ITポリシーを端末に適用し、組織が希望するレベルのIT制御を維持する」と定義していた。
しかし最近、Gartnerはこの定義を改めた。MDMはエンタープライズモビリティ管理(EMM)へと形を変えつつあるからだ。
同社が発表したEMMスイート製品に関する2014年版の「Magic Quadrant」リポートでは、EMMとMDMの違いを次のように説明している。
「EMMスイートは、スマートフォン用OSで稼働するモバイル端末向けに設計された、ポリシーやコンフィギュレーション管理ツールと、アプリケーションおよびコンテンツ管理オーバーレイから構成される。前世代のMDM製品からは一段進化して、アプリケーションやコンテンツの管理機能が含まれている」
ただしMDM(そしてEMM)の狙いは今もなお、モバイル端末の組織内利用について、機能とセキュリティを最適化することだ。同時に、組織内ネットワークをモバイル端末のアクセスから保護する役割も担っている。
従ってMDMやEMMには通常、モバイル端末に対してコマンドを発行するサーバコンポーネントと、端末上でコマンドを受信して展開するクライアントまたはエージェントが含まれる。
またMDMが備えている機能には、モバイルアプリケーションの管理とサポート、モバイル運用ポリシー管理、インベントリ管理、セキュリティ管理、通信サービス管理などがある。アプリケーション、データ、環境設定、パッチ配布機能を備えている製品もある。さらに一部には、ファイルの同期および共有、オーナーシップを問わないデータセキュリティツールやモバイル端末のサポートを実装している製品もある。
ここまでに挙げたMDMの定義には、データ保護に関するトピックがどこにもない。
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