「データ駆動型ビジネス」の課題を整理
突っ込みどころ満載の“おかしな分析グラフ”はなぜ生まれるのか
大量のデータをビジネスに生かす「データ駆動型ビジネス」。その推進に当たり、データ分析者の焦りや先入観が思わぬ落とし穴になりかねない。
ネイト・シルバー氏は、ブロガーおよびデータジャーナリストとして名をはせている。米政治・経済ブログ「FiveThirtyEight」の創設者および編集長として、多くの企業の経営幹部と同じ観点から、大量のデータをビジネスに活用する「データ駆動型ビジネス」の問題を見ている。「企業の意思決定プロセスのどこに分析が適合するのか」「どのツールをデータ分析に使用するのか」「Webサイトの情報分析に、十分な時間を掛けるようにするのか」という問題だ。
これらのタスクには非常に時間がかかる。その理由の1つは、ビジネスデータ分析の分野では、データの分析や視覚化、解釈についての業界のスタンダードとベストプラクティスの策定が遅れていることだ。
「このトピックについて話し続けて数年になる。話せば話すほど、私たちのフラストレーションはたまる一方だ」。2015年8月中旬に米ボストンで開催された「HP Big Data Conference」で、シルバー氏はこう語った。
「先入観」がデータ駆動型ビジネスの邪魔をする
スタンダードとベストプラクティスの欠如の問題は、「偏った分析」と「誤解を招く視覚化」という形で表面化すると、シルバー氏は指摘する。いずれも意図的なものではないが、ユーザーは存在しない可能性のある関連性を見ようとしたり、相関関係(一方が変化すれば他方も変化する関係)しかない事象に因果関係(一方が原因、他方が結果となる関係)を見いだそうとするとシルバー氏は考えている。「分析結果が有効であるように見せたい」というユーザーの思いが、こうした状況を招いている可能性があるという。
大量のデータを扱う“真のビッグデータ環境”で作業をしているときには、先入観の問題がさらに顕著になることがあるとシルバー氏は指摘する。分析は、さまざまな事象の間にある関係を理解することだ。当然ながら、扱う事象の数が増えるにつれて、分析対象となる事象間の関係は飛躍的に増加する。その結果、全てを理解することはさらに困難になる。
ここで先入観が入ってくる。特に突出して重要な関係が見つからない場合でも、ユーザーは自分にとって最も意味を成しそうな1、2件の事象を選んで関係を見いだそうとし、「この判断は数値によって裏付けられている」などと主張しがちだ。実際はそうではない可能性があるにもかかわらず、である。「データの量が増えるほど、先入観が入り込みやすくなる」というのが、シルバー氏の考えだ。
データの可視化がうまくいかないことは「往々にしてある」とシルバー氏は語る。その理由は2つだ。1つはデータを詰め込みすぎてデータを解釈できなくなること。もう1つは、データを除去しすぎた結果、有益なデータとなるために必要なコンテキスト(文脈)が剥ぎ取られてしまうことだ。
グラフにはシンプルかつ一貫した測定尺度と視覚要素を使用すべきであると、シルバー氏は警告する。そうしないと、専門知識のある分析チーム以外の人が視覚化したデータを目にしたときに、問題が発生しかねないからだ。
見た目を良くしようとするばかりに、分析結果を支持するコンテキストを削除しすぎてしまうことが、こうした問題の原因だとシルバー氏は言う。「不適切な視覚化がなされたデータは多い。その点で、例えば広報部門に視覚化を任せることには慎重になるべきだ」
「直感」を侮るなかれ
データ駆動型ビジネスに潜むこうした落とし穴に対処する方法の1つは、意思決定プロセスにおけるデータの役割を明確に規定することである。企業は全プロセスの遂行をデータに依存する必要はない。プロセスの最初の80%をデータに先導させて、それ以降は人に任せるのがよいとシルバー氏は主張する。
こうしたプロセスの進め方をすれば、分析の真偽を確認することが容易になる。その結果、分析モデルに根付く先入観を是正できるかもしれない。最終意思決定者が分析モデルの推奨事項について、「社会通念と大きく矛盾する」と感じた場合は、分析モデルに先入観が入り込んでいるか、あるいはデータが不適切であることの兆候だと捉えることができるはずだ。
こうした議論はいずれも、分析のベストプラクティス策定に向けた動きだとシルバー氏は考えている。多くの企業にとって、データ駆動型のアプローチを意思決定に適用することは、比較的新しい概念である。とはいえ、普及が進むにつれて標準化は進むはずだ。「ベストプラクティスは、まだ模索中だ。現時点では、スタンダードについて検討している段階であり、それもまだ始まったばかりだ」とシルバー氏は語る。
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