Software-Defined Storage(SDS)製品はそのコスト効果と柔軟性の高さが称賛されている。だが、この革新的な技術は全ての企業にメリットをもたらすというわけではないようだ。
一般的な企業のストレージアレイの価値は、どこにあるのだろうか。ソフトウェアとハードウェアのどちらだろうか。それともその両方だろうか。
最近「Software-Defined Storage」(SDS)は注目を集め取り沙汰されている。こうした状況により、業界はソフトウェア寄りにシフトしつつあるようだ。この騒ぎを巻き起こしているのはストレージを扱う小規模な新興企業だけではない。米EMC、米Hewlett-Packard(HP)、米IBMを筆頭に、大手企業もSDS製品を提供している。
SDSテクノロジーを取り巻く状況が混沌としているにも関わらず、多くの企業は、SDSの将来性に期待を寄せて、今後のストレージイニシアチブにSDS製品を加える可能性が高い。SDS製品は次の点が魅力的であるようだ。
業界で話題になることはほとんどないが、SDSには潜在的なコストが存在する。SDSによってハードウェアを組み合わせて適合させることは可能になるが、その結果ソフトウェアとハードウェアを統合するコスト(つまり、リスク)が、エンドユーザーのもとに移る可能性がある。
「コモディティハードウェア」という言葉を好む人は多いが、実際そのようなものは存在しない。筆者はストレージエンジニアとして働いていた時期がある。U160 SCSIからU320 SCSIに移行したときの悪夢にはいまだにうなされるほどだ。恐らくコモディティSCSI HDDと呼ばれるHDD群をラボで長時間扱っていたときのことだったと記憶している。各HDDはSCSIバスで独自の接続を作成していた。ベンダーAのHDDは問題なく動作した。ベンダーBのHDDの動作も問題ない。だがベンダーAとBのHDDを組み合わせるとシステム全体が停止した。コントローラーのファームウェア、HDDメーカー、HDDファームウェアのリビジョンによって、この結果は変化した。数カ月に及ぶ詳細な作業とテスト分析を経て、条件を満たした実証済みの機能するシステムをリリースできた。
時代とテクノロジーは一定の変化を遂げており、HDDの規格が改善していると主張する人がいるかもしれない。だが、SSDのような新しいハードウェアテクノロジーは日々進化していると筆者は考える。結局のところ、ストレージソフトウェアの抽象化という概念を最大限に拡張したならSDSはどのハードウェアでも機能するはずだ。そのようなことがSDSの導入で本当に望まれているのであれば、ソフトウェアが寿命を全うするまでにシステム内で組み合わされるテクノロジーの数は際限がなくなる可能性がある。この場合、新しいテクノロジーを検証して統合する責任とコストは主にIT部門にふり掛かる。
現在SDSを値踏みしている多くの企業は、この課題を認識しており、このリスクを軽減する手段として適切なハードウェアオプションを求めている。多くのSDS製品にも、統合に関わる懸念を緩和する機器のオプションがある。ただし、ハードウェアが限定されるなら本当の意味のSDSではないと主張する人がいるかもしれない。また、オブジェクトストレージのように大規模なコンテンツのリポジトリストレージのワークロードを対象にしたSDS製品は、データのコピーを複数作成したり、イレージャーコーディングを使用することで回復力を強化している。この方法によって、実証されていないハードウェアコンポーネントが導入されている場合でもデータ損失のリスクが軽減される。
筆者の予想では、一部の企業はSDSテクノロジーを導入する機会を喜んで受け入れるだろう。また、SDSを歓迎する企業は、企業独自の必要条件の検証に対応でき、ハードウェアを十分に調達できる規模があるだろう。それだけの規模があれば、ベンダーの要件を満たしていないコンポーネントを実装することを正当化できる。このような条件下での導入なら、ソフトウェアだけで導入するSDSテクノロジーが大きな意味を成す可能性はある。
企業は自社のビジネスにとって何が最適かを基準に選択する必要がある。上述の通り、SDSベンダーはこの課題を認識しており、機器を配置したり、保証済みコンポーネントのリストを提供することで対応している。SDS製品を選択するときには、ソフトウェアとハードウェアのどちらとして提供されるものでも、ベンダーが本当にSDSのメリットを提供できるのかどうかを検証することが重要だ。
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