今後、AIが企業に導入されるケースが増えれば、職場の様相は一変する。そこで重要なのは、従業員が「人間が強みとする分野」をどう磨きあげるかだ。
AIを業務に活用する企業が増えるにつれ、AIが人々から仕事を奪うのではないかという懸念が高まり、活発な議論が行われている。実際の問題は、機械に業務の一部を任せることで、職場での自身の役割をどう柔軟に変化させられるかだろう。
2017年6月、ニューヨークで開催された「O'Reilly AI Conference」で、TechTargetは、AIによる作曲サービスを提供するAmper Musicの共同設立者兼最高経営責任者(CEO)、ドリュー・シルバースタイン氏にインタビューを行った。同氏は、「音楽業界でも、AIの導入によって混乱が生じている。そのほとんどは、想像力を必要としない作業を行う人々の間で起きている」と話す。
「もし誰かがひどい曲を作曲したら、私たちはもっと良い曲を作るようその人に求めるだろう。クリエイティブになりたければ、芸術家になることだ。Adobeの『Photoshop』が台頭しても、画家の活躍は変わらないように」(シルバースタイン氏)
同氏は、「音楽業界で活躍できていない人々は、想像力を必要としない仕事で食いつなぐのではなく、クリエイティブな仕事に集中し、努力を重ねなければならない。人間はクリエイティブな作業に長けており、機械は定型的な仕事を得意とする」と話す。AIのアルゴリズムが進化すれば、ビジネス向けの簡単な音楽を作曲できるようになるだろう。その時、人間は、よりクリエイティブな作品に挑む必要がある。
「時代が進めば(技術的変化は)避けられない。問題は、いつどれくらいの速さで変化するかだ」と、シルバースタイン氏は語る。
AIを使った企業向けCRM改善サービスを提供するCogitoで、同社の収益および顧客貢献分野を統括するダグ・キム氏は、「金融サービス業界では、AIの導入が進むにつれ、企業の社員は関係構築のスキル強化を求められる傾向がみられる」と語る。「1990年代、預金の基本的な預け入れや引き出し業務を行う窓口係の代わりをATM(現金自動預払機)が務めるようになったように、AIが代替するのは基本作業だ」と、同氏はO'Reilly AI Conferenceで語った。AIに従来の仕事を奪われても、人々はその分、新たな役割や機会を得るだろう。
「例えば、資産運用管理の分野では、顧客はブローカーと直接交流することを望んでいる」と、キム氏は話す。優れた対人能力を持つ行員にとっては、AI導入の増加は脅威ではなく、自らのコミュニケーション力を駆使して顧客の信頼をつかみ、キャリアを積み上げるチャンスになり得る。
「金融サービス業界では、社員の今後の役割は、顧客とのより有意義な関係構築を中心に据えていくだろう。顧客との人間関係をうまく維持する能力こそが、他の企業と差別化を図れる点だからだ」(キム氏)
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