EdTech業界のユニコーン企業が語る コロナ禍がオンライン教育を難しくした理由GoStudentが挑んだ「オンライン教育」市場の開拓【前編】

ユニコーン企業であるEdTechベンダーGoStudentは、コロナ禍によりオンライン教育サービスの需要が減少したと明かす。オンライン教育サービスにとって追い風にも思えるコロナ禍が、“逆風”となった理由とは。

2022年01月12日 08時15分 公開
[Matthew StaffTechTarget]

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 EdTech(教育とITの融合)ベンダーGoStudentは2021年6月、その評価額が14億ユーロ(約15億8800万ドル)のユニコーン企業(評価額が10億ドルを超える非上場企業)になったと発表した。同社は2016年の設立から5年弱でこの評価を得た。2021年3月にシリーズB(成長段階)投資ラウンドで7000万ユーロの調達を完了。その約3カ月後、シリーズC(成長拡大段階)投資ラウンドで2億500万ユーロを調達した。幼稚園から高等学校までの教育期間「K12」を対象に事業展開するEdTechベンダーとしては、欧州でも屈指の評価額になった。

オンライン教育への追い風に見えるコロナ禍、実際は“逆風”?

 GoStudentの同名サービスは、同社が厳しい審査を経て採用した講師と学習者をマッチングさせて、1対1のオンライン教育を実現する。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響で、教育のデジタル化は避けられなくなっている。そのため同社のサービスを「今の時代にうってつけのサービスだ」と考える人もいるだろう。ただし同社創業者で最高経営責任者(CEO)のフェリックス・オースバルト氏はサービスの成長が順風満帆だったわけではないと述べる。

 パンデミックを受けて、学習者やその保護者は、GoStudentをはじめとするオンライン教育サービスを受け入れ始めていることは確かだ。特に「学習者の保護者がテレワークに触れる機会が増え、オンライン教育を試すことへの心理的な障壁が下がった」とオースバルト氏は説明する。

 ただしEdTechベンダーにとって、オンライン教育サービスを運営することは「より難しくなった」(オースベルト氏)。パンデミックの影響で、学校の間でオンライン教育への移行が進んでいる。EdTechベンダーは、学校の授業をオンラインで丸一日受けた後の学習者に、さらに別のオンライン教育を受けてもらわなければならない。「これは学習者にとって大変なことだ」とオースバルト氏は認める。実際、GoStudentの需要は少し減少したという。

 GoStudentのビジネスモデルはそれほど複雑ではない。一方に技術と経験のある講師がいて、もう一方に、ある教科で成績を上げたい学習者がいる。同社は、自社が持つネットワークの中から講師と学習者の最適な組み合わせを見つけ出す。オースバルト氏によると、同社のオンライン教育サービスを通した授業予約は月40万件を超えた。平均すると、学習者1人が月に8コマ、つまり週に2コマほどの授業を受けている。授業を受け持つ講師は全世界に5500人以上いる。2021年8月時点で同社は、カナダ、メキシコ、チリ、コロンビアなど19カ国で事業を展開しており、今後さらに事業を拡大させる。

 注目すべきは、5500人を超える講師全員が、GoStudentのオンライン教育サービスの利用登録時に3段階の厳格な面接を受けている点だ。同社は面接を通して、講師が持つ知識やプレゼンテーションのスキル、社交性を明らかにする。

 こうした取り組みの結果、学習者は自らの目的に合うパーソナライズされた教育方法として、GoStudentのオンライン教育サービスを認識し始めている。最初は懐疑的だった保護者も、オンライン教育サービスに対する見方を変え始めた。


 後編はオースバルト氏に、教育業界にある「IT活用を阻む障壁」について聞く。

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