多くの企業がデータに基づいた意思決定に取り組んでいる。問題はデータ品質だ。データ品質を向上させる試みは、コロナ禍によって阻害されたという。なぜコロナ禍が影響するのか。
2022年初めにMcKinsey & Companyがあるレポート(後述)を公開した。このレポートは、情報を利用して事実に基づくインテリジェントな決定を下すという理想を実現するための道筋を示している。この理想を実現できる企業もあるだろう。だが、データ品質の問題点を把握しなければ理想とは懸け離れた現実が待っている。データの品質が低い場合は昔ながらの意思決定戦術に戻るしかない。データ駆動型企業になるのは諦めるしかない。
これは、CB Insightsのアナンド・サワル氏(共同創設者)が数年前に語ったことを思い起こさせる。同氏は意思決定、データ分析の台頭、ビジネスリーダーがデータおよび人間の体験の間の最適点を見つけるニーズについて語り、「戦略決定はGoogle検索(Google)、MBAを持つ人材(Guys)、本能的直感(Gut instinct)という3つのGに懸かっている」と話していた。もちろん、その当時からは前に進んでいる。多分、そのはずだ。
でもまだ道半ばだ。Quantexaが公開した調査によると、「不正確で不完全なデータセット」が正確で信頼性の高い意思決定を行う能力を損ない、「このギャップによって機能不全に陥っている」ヨーロッパ企業が95%に上るという。Adverityが行った調査は、CMO(最高マーケティング責任者)の63%がデータに基づいて意思決定しているが、マーケティングデータのアナリストの41%は「データの信頼性に苦戦している」としている。
Adverityのレポートは、マーケティング部門に見当違いの楽観主義があることを示唆している。同レポートによると「分析には成熟している」という回答が3分の2を占めているが、68%がスプレッドシートを利用している。手作業によるデータラングリングは、多くの企業が解決すべき大きな課題だ。レポートには次のように記されている。「データセットが流れる過程で手作業のプロセスの数に疑問を持たなければならない。『Facebook』や『LinkedIn』から『Microsoft Excel』にデータが転送され、その後『Microsoft PowerPoint』に転送されるなら、その過程に人的ミスが入り込む可能性が高くなる」
Validityのクリス・ハイド氏(データソリューション部門グローバル責任者)は、大量に存在する重複レコードがデータへの不信を招き、作業負荷を増大させていた顧客の例を挙げる。同氏によると、Akamai Technologiesはデータの検証、更新、重複データのマージを毎日手作業で行っており、それがCRMを見直してデータ管理ツールへのアクセスを容易にすることにつながったという。
社内外のソースから大量のデータを収集しても、そのデータポイントを結合しなければこの種の問題は悪化し続ける。Quantexaのビシャル・マリア氏(創設者兼CEO)は、企業が合併や買収によって事業を拡大し、その過程でデータサイロを追加し、断片化されたデータクラスタを引き継ぐとこうした問題が悪化すると言う。「データが有用なのは、適切な方法で管理されている場合だけだ。ルールベースのバッチ処理に依存するレガシー技術では不十分だ」
事態はコロナ禍によって悪化する一方だ。Validityのハイド氏は「The state of CRM data health in 2022」の統計を引用し、コロナ禍によってデータの品質が低下していることに回答者の79%が同意していると指摘する。従業員が新しい役割に移行せざるを得ず、それに伴い電話番号、住所、役職が変わったことが関係し、リモートワークが増えたことでオフィスの住所が無意味になったことも一因だという。
これらはCRMの商談情報や連絡先情報が急速に古くなり、CRMチームが作業負荷の増大に直面することを意味する。
多くの企業にとって、こうした変化に対応できないということは、データ管理の計画とプロセスが不十分であるということだ。データ管理に着実にアプローチしなければ、データ駆動型の意思決定はできない。「異論はあるかもしれないが、多くの企業がデータ管理を優先しないことで、非倫理的な慣習を可能にしている」(ハイド氏)
McKinseyのレポート「The data-driven enterprise of 2025」は同社のサイトで閲覧できる。
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