NHSは稼働中のデータ基盤「NHS COVID-19 Data Store」を刷新する。過去にこのデータ基盤を構築する際には複数のベンダーが関与したが、その中のある1社の存在が英国の市民団体から不評を買った。何があったのか。
英国の国民保健サービス(NHS:National Health Service)でイングランド地域を管轄するNHS Englandは、新医療データ基盤の構築に関する入札を2023年1月に公告した。このプロジェクトは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のまん延で医療現場が混乱していた最中の2020年に構築したデータ基盤「NHS COVID-19 Data Store」をリプレース(更改)するために立ち上がった。新システムは、安全な方法で医療情報を共有することを主目的としている。NHSは個人情報保護の観点で公共の信頼を得られるようにプロジェクトを進めることを重視している。
NHS COVID-19 Data Storeの構築に当たっては、Microsoft、Google、Amazon Web Service(AWS)をはじめ、さまざまなITベンダーが関与していた。その中のある取り組みが、市民的自由を求める活動家の不評を買った。
活動家に不評だったのは、データ連携ツール群「Palantir Foundry」を提供するベンダーPalantir Technologiesだ。NHSのデータ基盤プロジェクトにPalantir Technologiesが関わっていたことについて、Privacy International、openDemocracy、Foxglove Legalなど、市民的自由の保護を掲げる複数の団体が繰り返し議論の争点に取り上げた。
Palantir Technologiesの共同創業者にしてチェアマンのピーター・ティール氏が、右派リバタリアンであり、元米国大統領ドナルド・トランプ氏の支持者として有名なことが大きな理由だ。openDemocracyは2021年3月に、「Palantirが、米国移民・関税執行局(US Immigration and Customs Enforcement)の不法移民に対する残忍な強制送還措置を支持していること」を理由として、Palantir TechnologiesをNHSの契約から排除すべきだと主張していた。
とはいえ、Palantir Technologiesの現CEOであるアレックス・カープ氏は、自らを社会主義者、進歩主義者と表現し、Johann Wolfgang Goethe-Universitat Frankfurt am Main(フランクフルト大学)で社会理論の博士号を取得している。フランクフルト大学はマルクス主義のいわゆる「フランクフルト学派」である社会研究所の本拠地として知られている。2019年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でニュース放送局CNBCのインタビューを受けた際には、自らを「生まれながらの学者」と表現していた。
CNBCのインタビューの中で、カープ氏はPalantir Technologiesの米国政府との緊密な関係を要約して、「われわれは国家が主権を持つと信じ、安全保障が必要だと信じ、西側諸国を信じる」と述べた。ドナルド・トランプ氏については「私は彼のことを何一つ尊敬していない」と述べている。
しかしNHSの計画に今回もPalantir Technologiesが関与するようなら、データプライバシー保護活動家から引き続き反対意見が上がる可能性がある。
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