創薬プロセスにAIツールを活用する中外製薬の事例や、生成AIのハルシネーションを解決する大阪市の取り組み、日本オラクルのAI戦略など、AI技術関連の主要なニュースを紹介する。
テキストや画像、動画を生成するAI(人工知能)技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)や大規模言語モデル(LLM)の活用が、企業の間で急速に広がっている。ただし業種や組織規模などの違いによって企業がAI技術に求める要件は異なり、検討には慎重さが求められる。AI技術の導入に踏み切った企業にとって、どのような点が決め手になったのか。本稿は、中外製薬が創薬プロセスにAIツールを導入した事例や、業務効率化を図る大阪市のAIツール活用事例、日本オラクルが考える「今後のAI技術活用に必要な要件」など、AI技術に関するニュースを3本紹介する。
中外製薬は従来、さまざまな化合物のデータを基に研究員が試行錯誤しながら創薬プロセスを進めており、時間とコストが掛かることが課題だった。同社は創薬プロセスを効率化するためにAI技術の導入を検討。ツールの選定では、医療分野の専門性と正確性を備えることに加え、AI技術の知見がない研究者でも使えることを重視した。1つ目に採用したのが、Googleのグループ企業Google DeepMindが提供するオープンソースソフトウェア「AlphaFold2」だ。AlphaFold2を活用して1日1000個以上のタンパク質構造を推論できるAIシステムを構築することで創薬に掛かる時間を短縮すると同時に、従来は専門家しか利用できなかったAIシステムを研究者でも操作できるようにした。2つ目に採用したのが医療用LLM「Med-PaLM 2」だ。チャットbot形式のインタフェースを備え、臨床試験計画に必要な情報の検索や抽出、臨床試験計画のドラフト作成が可能。これによって中外製薬は「臨床試験開始までの期間短縮を目指す」としている。(発表:グーグル・クラウド・ジャパン<2023年11月15日>)
生成AIを用いた自治体業務の効率化を検討していた大阪市は、LLMが不正確な回答を出力する幻覚(ハルシネーション)の課題に直面していた。解決策として、「Amazon Web Services」(AWS)のツール群を用いて「RAG」(検索拡張生成)の仕組みを構築した。RAGとは、学習データ以外に外部のデータベースからも情報を検索、取得し、LLMが事前学習していない情報も回答できるように補う手法を指す。大阪市の端末に入力した質問はAWSの検索サービス「Amazon Kendra」(以下、Kendra)に届き、Kendraは定期的にインデックス化する情報の中から該当部分を検索して抜粋する。その内容をAIモデル構築サービス「Amazon Sagemaker」もしくはLLM「Amazon Bedrock」が要約し、その結果(回答)を端末側に返す仕組みだ。大阪市は「RAGによって、大阪市が保有する情報に基づいた、精度の高い回答を出力できるようになる」としている。(発表:アマゾンウェブサービスジャパン<2023年11月2日>)
日本オラクルは2023年11月13日、クラウドERP(統合基幹業務システム)である「Oracle NetSuite」(以下、NetSuite)の事業戦略説明会を開催し、NetSuiteにAI機能を組み込む計画を説明した。NetSuiteは今後、Oracleが提携するAIベンダーCohereの同名LLMをはじめとしたAI機能を組み込むことで、専門知識のないユーザーでもビジネスプロセスごとに最適化したAI機能をすぐ利用できるようになるという。同社の三澤智光氏(取締役 執行役 社長)は、業務アプリケーション領域では過去10年間大きな技術進歩がなかった点に触れ、今後はAI技術が変革を起こすと予測。「最新のAI技術を取り入れる際に、単一のアーキテクチャであることが必須の要件だ」と強調した。NetSuiteはERPの他、SCM(サプライチェーンマネジメント)やHCM(人的資本管理)などの機能を、統合可能なモジュールとして提供している。(発表:日本オラクル<2023年11月13日>)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
AI活用に必要なデータだが、日々生成されるデータの量が急増し、あらゆる場所に分散する今、複雑なクラウド環境でそれらのデータをどのように管理すべきかに悩む企業は多い。この問題を解消する、インテリジェントなデータ管理の方法とは?
生成AIのビジネス活用が拡大している。しかし、多くの組織がランニングコストの高さやハードウェア要件の厳しさ、専門人材の不足といった要因により生成AIの価値を十分に引き出せていない。本資料では、この状況を脱却する方法を解説する。
ビジネスシーンでの活用が進むAIだが、その急速な進化に、多くの組織がキャッチアップできていないのが現状だ。AI導入の成果を最大化するために、何から始めるべきか、どのようなポイントを押さえるべきかを解説する。
AI活用を小規模なパイロットプロジェクトから始める企業は多いが、それを成功させ本格的な活用につなげるには、戦略的なアプローチが必要となる。初めてのAIユースケースを軌道に乗せるために知っておきたい、6つのステップを解説する。
予測の精度と信頼性の向上、ワークロードの高速化といった、AIのメリットを引き出すには、まずデータを「AI対応」にする必要がある。それを実現するために押さえておきたい、データ作成や管理のポイントを解説する。
ドキュメントから「価値」を引き出す、Acrobat AIアシスタント活用術 (2025/3/28)
広がるIBM i の可能性 生成AIによる基幹システム活用の新たな技術的アプローチ (2025/3/28)
「NVIDIAのGPUは高過ぎる……」と諦める必要はない? GPU調達はこう変わる (2025/3/11)
PoCで終わらせない企業の生成AI活用 有識者が語る、失敗を避けるためのノウハウ (2024/10/18)
生成AIのビジネス利用 すぐに、安全に使うためには? (2024/8/26)
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。