ESXiサポート終了後では遅い 「ハイパーバイザー移行」を考えるもっともな理由「vSphere」「ESXi」のサポート終了を乗り切るには【第4回】

各ベンダーが提供するハイパーバイザーには一定のサポート期間がある。サポート期間が終了する前にハイパーバイザーの移行を検討すべき理由や、検討時に確認すべきベンダーのサポート体制、移行の選択肢とは。

2024年03月29日 05時00分 公開
[小林浩和, 篠崎智昭ネットワンシステムズ]

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 VMware(Broadcomが2023年11月に買収)のハイパーバイザー「ESXi」を含むサーバ仮想化ソフトウェア群「VMware vSphere」(以下、vSphere)を利用する企業にとって、考慮すべき点の一つになるのがサポート切れだ。EoTG(End of Technical Guidance:テクニカルガイダンス期間の終了)を迎えたバージョンのvSphereは、セキュリティパッチ(パッチ:修正プログラム)の配布や新機能の追加がされなくなる。

 vSphereのサポート期間の終了は、Nutanixの「Nutanix AHV」(以下、AHV)といったESXi以外のハイパーバイザーへの移行を検討する機会でもある。仮想マシン(VM)やハードウェアの管理の負荷を軽減させるために、インフラをクラウドサービスに移行するという選択もできる。ハイパーバイザーの移行を検討すべき理由や、各ハイパーバイザーのサポート体制、VMのクラウド移行に関してどのような点に気を付ければよいのかを詳しく説明する。

ESXi「サポート切れ」では遅い? ハイパーバイザー移行を検討する理由

 vSphere 7.0のEoGS(一般サポートの終了)は2025年4月2日だ。更改を検討すべき時期が迫っている。これはvSphere7.0を利用しているユーザー企業にとっては、新しいバージョンもしくは別のハイパーバイザーへの移行、あるいはクラウドサービスへの移行を検討するタイミングだと言える。

 バージョンアップや別のハイパーバイザーへの移行を検討する際は、「サポートが切れるから」という理由で検討するのではなく、「セキュリティリスクを軽減する」といった具体的な目的を持って検討することが望ましい。バージョン切れのvSphereを使い続けることには、セキュリティリスクが増大する問題が伴うからだ。ITシステムの改善やモダナイゼーションが遅れるという問題も起こり得る。

 ハイパーバイザーへの移行を検討する際は、まずは仮想化ソフトウェアベンダーの製品ライフサイクルを理解する必要がある。VMwareはESXiのサポートとして、提供開始から5年間の「一般サポート」と、一般サポート終了から2年間の「テクニカルガイダンス」を提供している。最初のバージョンがリリースされた後は、約半年ごとに「VMware ESXi 8.0 Update 1」といったアップデート版を発表する。

 同社は定期的なアップデートに加え、不具合や脆弱(ぜいじゃく)性などが発見された場合は、その都度パッチ(修正プログラム)を提供している。セキュリティ対策のためにパッチは定期的に適用すべきだが、全てを反映するのが難しい場合は、最低限の対策としてアップデート版や緊急度が高いパッチだけでも適用する必要がある。

Nutanix製品のサポート体制は

 他のベンダーも独自のライフサイクルを採用している。NutanixはAHVのライフサイクルにおいて、LTS(Long Term Support)とSTS(Short Term Support)に分けてサポートを提供している。

 LTSでは、バージョンが12〜15カ月ごとに更新される。アップデートの内容は主に不具合修正に重点を置いており、新機能の追加は最小限にしている。次期LTSの更新日から3カ月が、前期のバージョンのメンテナンス期間だ。メンテンス期間終了後9カ月がサポート期間になる。

 STSは、バージョンが3〜6カ月ごとに更新され、次期STSの更新日から3カ月がサポート期間となる。LTSと比較してサポート期間が短いが積極的に機能追加がされるため、最新の機能を利用できるのが特徴だ。

 次期バージョンが発表される時期によって、利用中のバージョンのサポート切れの時期が変わるため、注意が必要だ。例えばLTSを採用する場合は、次期バージョンがリリースされたら12カ月以内にバージョンアップする運用体制にする必要がある。

 Nutanix製HCI(ハイパーコンバージドインフラ)でvSphereを採用する場合は、vSphere側のライフサイクルと合わせて管理する必要がある。

VMのクラウド移行という選択は適切か

 セキュリティ対策の徹底が必要になった昨今は、常に最新バージョンのハイパーバイザーを利用することが重要になっており、ユーザー企業はそうした考え方を基にした運用方法に切り替える必要がある。そもそもサポート期間の長さで採用する製品を決めるのではなく、導入後の運用体制を考慮して製品を決めるべきだ。ハードウェアやハイパーバイザーのライフサイクル管理の負担を軽減するには、IaaS(Infrastructure as a Service)への移行も選択肢に入る。

 IaaSには複数の選択肢がある。Amazon Web Services(AWS)の同名サービスやMicrosoftの「Microsoft Azure」、Googleの「Google Cloud Platform」(GCP)では、オンプレミスと同じアーキテクチャをクラウドサービスでも利用できる。例えばこうしたクラウドサービスでは、vSphereやAHVによるVMサービスを利用できる。

 AWSやMicrosoft、Googleは、ユーザー企業のデータセンターで稼働するプライベートクラウド(リソース専有型のクラウドインフラ)を、それぞれのクラウドサービスと同じ手法で管理可能にするサービスやアプライアンスを提供している。ユーザー企業はこれらのサービスを利用することで、プライベートクラウドとパブリッククラウド(リソース共有型のクラウドインフラ)を連携させる「ハイブリッドクラウド」を構築できる。

 基本的にはパブリッククラウドでは、バージョンアップなどVMに関連するメンテナンスをベンダーが担う。ハイブリッドクラウドを構築する場合、自社のデータセンターで稼働するプライベートクラウドも、クラウドサービスに追従してメンテナンスすることが望ましい。つまりハイブリッドクラウドを実現するためには、オンプレミス側の運用を変える必要があるのだ。

 バージョンを常に最新にしておくことは、企業の財産であるデータや、VMで稼働するシステムを脅威や不具合から守ることにつながる。VMを最新の状態に保っておけば、IaaSへの移行や、新しい技術の採用も検討しやすくなる。そうした運用が結果的には運用にかかる人的リソースやコストの低減につながり、生産性の向上が可能になる。

執筆者紹介

小林浩和(こばやし・ひろかず) ネットワンシステムズ ビジネス開発本部応用技術部

主にVMware製品を担当し、製品の評価・検証を実施。近年ではエッジコンピューティングやAI(人工知能)技術など、クラウドインフラに関わる先進技術の調査にも取り組んでいる。

篠崎智昭(しのざき・ともあき、「崎」は正しくは「たつさき」) ネットワンシステムズ ビジネス開発本部応用技術部

2018年からビジネス開発本部 応用技術部に所属。サーバやHCI(ハイパーコンバージドインフラ)製品担当としてプラットフォーム製品の提案や設計、検証、構築、運用などに取り組み、技術的観点からビジネスを推進している。


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