「HPCクラスタ」をLenovo製品で構築 “宇宙の起源”に迫る研究機関の選択とはカーディフ大学がLenovoサーバを導入

カーディフ大学がLenovoのサーバを導入し、宇宙の起源や星の成り立ちの研究に活用しているHPCシステムの性能を向上させた。Lenovoサーバを利用し、どのようにHPCクラスタを構築したのか。

2024年06月04日 05時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

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 宇宙の起源や星の成り立ちを探るため、カーディフ大学(Cardiff University)はハイパフォーマンスコンピューティング(HPC:高性能計算)を活用している。その研究を支えるのが、Lenovoのサーバ「Lenovo ThinkSystem」だ。同大学は、宇宙空間の時空のゆがみが光速で伝わる「重力波」の観測施設Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory(LIGO)を支援している。このほど同大学と、LIGOを運用する研究グループLIGO Scientific Collaborationはそれぞれ、宇宙の研究のためにLenovoのサーバを導入した。どのように活用しているのか。

Lenovoのサーバが可能にした研究とは?

 カーディフ大学は、マネージドサービスを提供するLogicalis Group(以下、Logicalis)の技術とともにLenovo ThinkSystemを90台導入した。HPCクラスタ(HPCを実現するためのコンピュータ群)「Hawk」を運用する同校の部門「Advanced Research Computing at Cardiff」(ARCCA)は、Logicalisの技術とLenovo ThinkSystemを活用し、Hawkの処理性能を向上させた。

 LIGO Scientific Collaborationが第4次重力波観測運転を始めることに先立ち、Lenovoはラック型サーバ「Lenovo ThinkSystem SR645」75台を提供した。これらのサーバを使用することで、単一のハードウェアを使用する従来のHPCシステムよりも処理性能が向上する。この性能向上によって、研究者は重力波イベント(中性子星の衝突や合体など、重力波が発生する出来事)の検出とデータの共有を高速化できるようになる。

 LIGO Scientific Collaborationが導入したLenovo ThinkSystem SR645は、プロセッサ「AMD Epyc」を搭載するサーバだ。これによって構成されるサーバ群は、Logicalisが提供するオープンソースのクラスタ管理ツール「Ubiquity」を介し、NVIDIAのネットワークアダプター「ConnectX-6」を使用してHawkに接続する。

 カーディフ大学の重力探査研究所所長のスティーブン・フェアハースト氏は「重要なのは、LIGOの直近の観測運転に間に合うように新しいHPCクラスタを稼働できたことだ」と述べる。「検出した重力波イベントのデータをより早く処理し、天文学者とデータを共有して、より簡単に発生源を特定できるようになった」(フェアハースト氏)

 英国王立協会の支援の下、カーディフ大学の研究員を務めるアナ・ドゥアルテ・カブラル氏が率いるグループは、ラック型サーバ「Lenovo ThinkSystem SR630」15台と、「Lenovo ThinkSystem SR650」2台をストレージとして使用する計画だ。同グループは、天の川銀河(銀河系)のような渦巻銀河での星の成り立ち形を研究しており、銀河全体のシミュレーションに膨大な計算を必要とする。

 カブラル氏は、新しいHPCシステムの構成について「新しいノード(サーバ)では、銀河全体から特定の星形成まで、段階的な規模のシミュレーションができるようになる。専用のクラスタを使用することで、収集できるデータの量を増やせる」と述べる。

 今回のHPCシステムの導入により、複数の処理を同時に進める「同時マルチスレッド」が実現した。Ubiquityを使用してLenovoのハードウェアをHawkに統合することで、ARCCAは管理タスクを自動化し、研究ソフトウェアエンジニアの作業負荷の軽減に成功。これによって、エンジニアは科学研究に専念できるようになった。

 ARCCAのディレクターを務めるマーティン・ゲスト氏は、次のように述べる。「われわれは、新しいコンピューティングリソースを既存のHawkと統合したかった。Logicalisが示したUbiquityの性能を見て、われわれの目標を達成できると確信した」

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