オンプレミスシステムでもセキュリティ対策は容易なことではないが、クラウドサービスが加わると話は一段と簡単ではなくなる。仕組みと予算の両面でセキュリティシステム構築を適切に進めるための要点とは。
最適なセキュリティシステムの構築は簡単ではない。多様なクラウドサービスを利用すれば、それだけ追加的なセキュリティ対策が必要になる。クラウドサービスの利用拡大を進める中で必要十分なセキュリティシステムを作ることは至難の業だ。それを限られた予算の枠に収めることは、企業によっては「ほとんど非現実的なことだ」と感じるだろう。だが次に紹介するポイントに従い、知恵を絞ればできるはずだ。
ありとあらゆるツールを無計画に導入すれば、運用がしにくくなったり、コストが想定以上に増えたりするデメリットが生じる。導入する複数のツールがうまく連携できなければ、結果的に手間もコストも増えただけという結果になりかねない。最悪の場合は、攻撃の被害を受けて初めて「導入したツールが適切ではなかった」と気付くことになる。
「セキュリティシステムの構築に当たっては、きめ細かな計画が欠かせない」。こう指摘するのは、ITサポートを手掛けるQuoStar Solutionsのクラウドサービスディレクター、ニール・クラーク氏だ。まずは自社にどのような機能が必要なのか、そのためにどのツールを導入する必要があるのかを見極める必要がある。
欠かせない事項の一つになるのは、リスクを適切に評価することだ。企業はさまざまな攻撃の標的になる可能性がある。とはいえ、あらゆるリスクを低減するために手当たり次第に対策を打つことは得策ではないし、現実的でもない。自社にとって特に高いリスクを整理し、そのための解決策を考えれば、コストを抑えつつセキュリティの向上を図ることができる。「運用する側にとってもツールがきちんと整理されている方がありがたいはずだ」とクラーク氏は述べる。
今後セキュリティ対策を検討する上での考慮事項になるのは、システムをオンプレミスのデータセンターからクラウドサービスに移行する動きが広がっていることだ。この移行に際にセキュリティシステムの計画が十分にできていないと、ツールが乱立するという状況に陥ることがある。「必要な対策を見極めることができれば、結果的にコストが想定以上に増えることはない」とクラーク氏は話す。
調査会社GigaOmアナリストのアンドリュー・グリーン氏は、「クラウドサービスの利用を前提に考えた『クラウドネイティブ』のセキュリティシステムを構築することが、コスト面も含めて最適な選択をする鍵になる」と説明する。
クラウドネイティブのセキュリティの一例として、グリーン氏はコンテナオーケストレーター「Kubernetes」のコンテナ間の通信を定義する「CNI」(コンテナネットワークインタフェース)のプラグインを挙げる。例えば「Calico」や「Cilium」といったCNIプラグインがある。これらを使えば、コンテナクラスタ内でのアクセス制御やトラフィック(ネットワークを流れるデータ)フィルタリングが可能になる。
ただしCNIプラグインは設定や構成が複雑であるため、その作業には専門の技術スキルが必要になる。使用に不慣れな場合は、「CNIプラグインの技術マニュアルや試用機能、トレーニングなどが役立つはずだ」とグリーン氏は語る。
後編は、セキュリティの観点からクラウドサービス移行時の注意点をまとめる。
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