Microsoftが世界各国のクラウドインフラ市場で好調だ。しかし、同社の成功は“反競争的な行為”に支えられているという見方が浮上している。
Microsoftは世界各国のクラウドインフラ市場でシェアを伸ばしている。調査会社Synergy Research Groupの推定によると、2024年第1四半期(1〜3月)の世界各国のクラウドインフラ市場において、「Microsoft Azure」は過去最高である25%のシェアを獲得した。一方、「Amazon Web Services」(AWS)のシェアは1ポイント減の31%だった。
Microsoftが市場でシェアを伸ばしているのには幾つかの理由が考えられるが、クラウドインフラ市場で最大のライバルであるAWSとの差を縮めるという同社の成功に暗い影を落とす、ある問題がある。
Microsoftは自社のソフトウェアを同社の「Microsoft Azure」以外のクラウドインフラで利用した場合にユーザーに追加料金や不自由な課金方法などの不利益を課していると非難されている。
同社のライセンス戦略が原因で、ユーザー企業がMicrosoft Azure以外のクラウドインフラで同社のソフトウェアを実行しようとすると、少なくない追加コストが発生する状況が生まれている。これによってMicrosoftがクラウドインフラ市場でのシェア獲得において、不当な優位性を得ている可能性があるとの指摘がある。
ユーザー企業の状況について、コンピュータ通信産業協会(CCIA)の欧州支部がデータ分析ツールベンダーのSavanta Groupに委託して英国、フランス、ドイツ、オランダ、スペインのIT部門の意思決定者1240人以上を対象に調査。2024年2月に結果を公開した。
CCIAが調査で「クラウドインフラベンダーの変更を検討したことがあるか」と尋ねたところ、「検討したことがある」と答えた回答者の40%が、「既存のライセンス条件により、オンプレミスライセンスを他のベンダーに移行することができない状況にある」と述べていた。
IT部門の意思決定者がMicrosoftのライセンス戦略に懸念を示したのは、Savanta Groupの調査が初めてではない。2023年10月には、英国情報通信庁(Ofcom)が、同国のクラウドインフラ市場の内部事情に関する254ページに及ぶ報告書で、この問題について注意を喚起した。
この報告書はOfcomが英国のクラウド市場を1年かけて調査した結果をまとめたものだ。その中ではAWSとMicrosoftの双方による、反競争的行動の事例が複数明かされている。
具体的にはMicrosoftのクライアントOS「Windows」やサーバOS「Windows Server」、リレーショナルデータベース管理システム「Microsoft SQL Server」、サブスクリプションサービス「Microsoft 365」などの製品やサービスの販売方法とライセンスに懸念がある。
Ofcomの報告書は、以下のように指摘している。
当庁が受け取った報告には、顧客がMicrosoftからライセンスを供与されたソフトウェア製品を競合ベンダーのクラウドインフラで利用する場合に得られるメリットを、Microsoft Azureで利用する場合より減ずるような慣行をMicrosoftが実施していると訴えるものがあった。このような慣行のために、顧客獲得に際しての自社の競争力が減じられていると、これらの報告は主張している。
こうした訴えを受けて、Ofcomは同月、さらなる調査を市場に対する取り締まりを担う英国競争市場庁(CMA)に依頼した。CMAによる調査の結果は2025年4月に公開される予定になっている。
次回はCMAが現時点で懸念している内容について説明する。
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