英国競争市場庁はAWSとMicrosoftのサービス提供について、クラウドサービス市場の公正な競争を阻害する可能性のある点を調査している。クラウドサービスの今後にどう影響するのか。
英国情報通信庁(Ofcom)は英国のクラウドサービス市場を調査し、ユーザーの選択肢が奪われており、公正な競争が阻害されている可能性があると指摘した。Ofcomは反競争的行為が見られるクラウドサービスベンダーとして、Amazon Web Services(AWS)とMicrosoftを名指しして警告を発した。
この問題は、市場に対する取り締まりを担う英国競争市場庁(CMA)による調査のフェーズに移っている。CMAの調査は、AWSやMicrosoftを含むクラウドサービスベンダーが提供するサービスにおいて、ユーザーの利点に関わる“ある要素”に変化をもたらす可能性がある。
CMAは、クラウドサービスベンダーがデータ移行に対してエグレス料金(クラウドサービスから外部のインフラにデータを送信するときにかかる料金)を請求するのを禁止する可能性がある。偶然にもCMAの調査が始まった直後に、Googleのクラウドサービス群「Google Cloud」は、2024年1月をもって全ユーザーを対象にエグレス料金を廃止すると発表した。
「相互運用性を巡る障壁も、複数ベンダーのクラウドサービスを組み合わせて利用したいと考えるユーザーの業務を複雑なものにしている」とOfcomは警告している。そのため、CMAはクラウドサービスベンダーに、技術やサービスの連携に透明性を持たせるよう取り組む可能性がある。
CMAが解決することが難しい領域の一つとして、Ofcomは「確約利用割引」(CUD)を挙げている。一定期間の利用を約束することでサービス使用料を割り引くCUDの仕組みは、他ベンダーへの乗り換えを躊躇(ちゅうちょ)させる。一方で、この仕組みを排すると、ユーザーが負担する料金や費用が高くなることがあるためだ。
CMAによる調査は2023年10月に始まった。この調査は2025年4月まで続く。英国のクラウドサービス市場関係者は“驚くほどの長さ”にわたって調査が続くことを懸念している。1年半の間に、大手クラウドサービスベンダーのシェアや影響力が拡大する可能性があるからだ。
CMAの調査が始まった後もAWSとMicrosoftは目立った変化を起こしていない。例えば、公共部門のユーザー向けのCUDをAWSはやめていない。CUDの提供はCMAの調査で焦点となる主要分野だが、2023年12月に、AWSが英国政府相手に用意していた優遇価格体系をひそかに再開していたことが明らかになった。
英国政府とAWSの包括契約「One Government Value Agreement」(OGVA)として知られるこの価格体系は、一旦は2023年10月に満了した。だが、2023年12月に2回目の契約が結ばれており、契約額が約4億5000万ポンドにもなることが明らかになった。
一方でMicrosoftは、クラウドサービスにおけるソフトウェアライセンス費用について、クラウドサービスの業界団体「CISPE」(Cloud Infrastructure Services Providers in Europe)との協議を開始している。CISPERはMicrosoftについて、自社が提供するソフトウェアの優位性を利用してユーザーを同社のクラウドサービス群「Microsoft Azure」に不当に誘導していると主張している。
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