VMwareを買収してから、BroadcomはVMware製品のライセンス体系を大きく変えることになった。これによって、VMware製品を利用してきたユーザー企業のCIOには、簡単ではない決断が求められている。
Broadcomは仮想化ソフトウェアベンダーVMwareの買収を2023年11月に完了させ、その後はVMware製品のライセンスおよび製品戦略を刷新してきた。サブスクリプション型へのライセンス体系の変更、製品バンドルの再編成といった変更があった。これによるコストの変動を受け、VMware製品のユーザー企業が「VMware製品を使い続けるべきかどうか」に関して難しい選択を迫られている。
ユーザー企業はどのように結論を出すべきなのか。ユーザー企業のCIO(最高情報責任者)や業界関係者の意見を紹介する。
ポリウレタンフォーム製造会社Sheela FoamのグループCIOであるパーティシ・マンコティア氏は、Broadcomの今回の動きによって、ユーザー企業のCIOにはプレッシャーがのし掛かると考える。VMware製品の利用を今度どうするのかについて判断を下すのは簡単ではないからだ。
「特にそのユーザー企業がVMware製品を長年利用している場合、ライセンス体系の変更は倫理に反している」とマンコティア氏は述べる。VMware製品に依存している企業は、すぐに製品を切り替えることは難しい。そして、そのような企業は少なくない。「今回のBroadcomの決断がCIOの“苦境”に付け込んでいるのは、まさにそこにある」と同氏は指摘する。一方で「時間をかけ、優れたチームの助けを借りれば、近い将来に代替製品が見つかるはずだ」とも語る。
技術顧問会社Primus Partnersの共同創業者であるデブループ・ダール氏は、「VMwareのバンドル内の全製品を利用しているわけではない中小企業は、競合サービスに乗り換える可能性がある」と言う。大企業であれば、コスト削減に期待ができ、複数製品のバンドルに利便性を見いだせることがある。「大企業に重点を置くことが、VMwareの最終損益とサービス品質の向上に貢献する可能性もある」というのがダール氏の考えだ。「製品のバンドル化は、より多くのユーザー企業がより多くのVMware製品を利用する動機になり得る」と同氏は言い添える。
調査会社Forrester Researchで主任アナリストを務めるナビーン・チャブラ氏によれば、VMware製品のバンドルに含まれる全製品を利用するユーザー企業にとって、製品バンドルは理にかなうが、利用料金の上昇を招く場合がある。ただし1つか2つの製品しか利用しない企業のように、劇的に上がるわけではない。
2023年5月、BroadcomのCEOホック・タン氏は、年間20億ドルの追加投資をして、VMwareユーザーにさらなる価値を提供することを約束した。その半分は研究開発(R&D)に、残りの半分はVMwareとパートナーのサービスを通して、ユーザー企業におけるVMware製品の導入の迅速化に投じられる計画だ。
Broadcomは2023年度(2022年11月~2023年10月)におよそ360億ドルの売り上げを計上し、そのうちの約53億ドルをR&Dに投じた。「当社には投資を集中かつシンプル化する文化がある」と、VMwareでクラウドプラットフォーム、インフラストラクチャおよびソリューションマーケティング担当バイスプレジデントを務めるプラシャント・シェノイ氏は言う。
それでもチャブラ氏は、Broadcomのここ最近の変化に対して懐疑的な見方を崩さない。同氏は「市場がVMware製品の未来と方向性をうたがうのも無理はない」と述べる。
「VMwareのプロダクトチームは、革新的でいるためのモチベーションを維持できなくなる恐れがある。絶え間のない革新があったからこそ、VMwareはいまの地位にある。それが消え失せてしまうように思えてならない」(シェノイ氏)
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。
半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。
クラウドファーストの流れが加速する中、無計画に構築されたハイブリッドクラウドの弊害が多くの企業を悩ませている。ITオペレーションの最適化を図るためには、次世代のハイブリッドクラウドへのモダン化を進めることが有効だ。
ワークロードを最適な環境に配置できる手法として注目され、多くの企業が採用しているハイブリッドクラウド。しかし、パフォーマンス、法令順守、コストなどが課題となり、ハイブリッドクラウド環境の最適化を難しくしている。
システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。
KDDIの通信品質と事業成長を支える“共通インフラデータ基盤”構築の舞台裏 (2025/3/12)
高まるSaaSバックアップ需要で「ストック収益」を拡大するには (2025/1/22)
大和総研に聞く、基幹システムのモダナイズ推進を成功に導いた四つのポイント (2024/12/23)
「オンプレミス仮想化基盤」のモダナイゼーションに最適なクラウド移行の進め方 (2024/11/11)
コストや効率の課題解消、ITとOTの統合運用管理を実現する理想的なインフラとは (2024/10/18)
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。