「Wi-Fi 6E」で何が変わった? ドイツのサッカー名門が使う“6GHz帯”無線LAN歴史あるスタジアムに進化版Wi-Fi

ドイツのクラブチーム、ドルトムントがホームスタジアムに「Wi-Fi 6E」準拠の無線LANを導入し、顧客体験の向上と運営の効率化を図る。Wi-Fi 6Eにどのような効果を見込んでいるのか。

2024年06月14日 08時30分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

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 ボルシア・ドルトムント(以下、ドルトムント)は、ドイツのプロサッカーリーグ「ブンデスリーガ」(Bundesliga)に所属するチームだ。同チームは、ホームスタジアムであるシグナル・イドゥナ・パーク(旧ヴェストファーレンシュタディオン)を改修すると発表した。同スタジアムでは無線LAN規格「Wi-Fi 6」の拡張版である「Wi-Fi 6E」に準拠したネットワークを整備し、顧客体験の向上と運営の効率化を図る。Wi-Fi 6Eにどのような効果を見込んでいるのか。

“6GHz帯”無線LAN「Wi-Fi 6E」で何が変わった?

 シグナル・イドゥナ・パークは8万人以上を収容でき、ドイツのクラブサッカー界で最大の規模を誇る。このスタジアムでは、UEFA(欧州サッカー連盟)が主催するサッカー欧州選手権「UEFA EURO 2024」の試合を含む国際イベントも開催予定だ。

 同スタジアムにWi-Fi 6Eに準拠したネットワークを導入することを支援したのは、ネットワークベンダーExtreme Networksと、そのパートナーであるBELL Computer-Netzwerkeだ。Wi-Fi 6Eは6GHz帯が利用可能になるため、2.4GHz帯と5GHz帯しか利用できない無線LAN規格よりも、接続の安定性を確保しやすい。

 Wi-Fi 6Eの導入により、ファンがリアルタイムでスポーツの試合を対象にしたギャンブル(スポーツベッティング)に参加したり、運営スタッフがモバイルチケットのスキャンを迅速に実施したりできる。スタジアムの運営チームは、防犯カメラからキャッシュレス決済、デジタルサイネージまでさまざまな恩恵を受けることができ、ネットワークへの投資対効果を高めることができる。

 Extreme Networksが提供するネットワーク仮想化技術「Fabric Connect」もドルトムントは活用する。これにより、オフィスやチームのトレーニングルーム外の無線LANアクセスポイントを自動的にプロビジョニング(配備)し、設定することが可能になった。セキュリティを確保するために、インフラの運用で使用するネットワークとファン向けの無線LANネットワークを分離することもできる。

 ドルトムントは、リアルタイムでネットワークの使用状況から洞察を得て、データ分析に基づいて戦略を決定できるようになった。無線LANを使用しているユーザー、デバイス、アプリケーションに関する情報を取得し、ファンの動向に基づいたスタジアムのスタッフ配置を決定する。ファンが使用しているアプリケーションに基づき、潜在的なスポンサーの広告出稿の機会を探ったり、スタジアムのサービスの方針を決定したりできる。

 将来的に、ドルトムントは来場者が座席から売店の商品を注文できるシステムの導入、スタジアム内での拡張現実(AR)/仮想現実(VR)技術の活用などを計画している。

 ドルトムントの経営幹部であるカーステン・クラマー氏は次のように述べる。「新しいネットワークの導入により、スポンサーシップや収益化の新たな機会を発見し、リアルタイムのスポーツベッティングのような新しい顧客体験をもたらすことができる。今後のユースケースに備えることも可能だ。来シーズン、スタジアムを訪れるファンに新しい体験を提供できることを楽しみにしている」

 Extreme Networksはすでに、欧州各地のサッカースタジアムの一部にネットワーク機器を提供している。例えば、リバプールFCの本拠地アンフィールド、ベルリンのオリンピアシュタディオン、マンチェスターユナイテッドのオールドトラッフォードが挙げられる。

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