Microsoftの「Azure AI Foundry」で広がる“生成AI開発”の可能性と懸念とはAzureの新しいAI開発サービスが登場

Microsoftが新たに公開したAIサービス群「Azure AI Foundry」は、従来の同社の生成AIサービスとは何が違うのか。Azure AI Foundryに残る、生成AI開発サービスの課題とは何か。

2024年12月04日 17時10分 公開
[Esther AjaoTechTarget]

 Microsoftは2024年11月に開催した開発者向けのカンファレンス「Microsoft Ignite 2024」で、「Azure AI Foundry」を発表した。これはAIアプリケーションやAIエージェントの設計、カスタマイズ、管理機能を備えたAIサービス群だ。

 Azure AI FoundryはAIサービス群「Azure AI Studio」を改称し、サービスの内容を再構成したものだ。MicrosoftのCEOであるサティア・ナデラ氏は、Microsoft Ignite 2024の基調講演で次のように述べた。「今日、あらゆるアプリケーションはAI技術を組み込むようになった。新しい世代のアプリケーションが登場するたびに、エンドユーザーのニーズは変化している。AI技術はアプリケーションの設計やカスタマイズ、管理の手法を変革する」

 では、Azure AI Foundryで具体的に何ができるようになるのか。それによって企業にもたらされる懸念は何か。以下で詳しく見ていこう。

Azure AI Foundryで何ができるようになるのか

 Azure AI Foundryの主要なサービスの一つは、「Azure AI Foundry SDK」だ。2024年11月時点でプレビュー版が利用可能になっている。同サービスは企業がAIアプリケーションやAIエージェントのカスタマイズ、テスト、展開、管理をするためのツールを提供する。開発者は25種類の構築済みのアプリケーションテンプレートを利用して、AI技術をアプリケーションに組み込むことが可能だ。

 「Azure AI Foundry Portal」は、Azure AI Foundryの管理ツールだ。開発者が自社のニーズに適したAIモデルやAIサービスを見つけるためのポータルサイトとして機能する。IT管理チームはAzure AI Foundry Portalを通じて、大規模なAIアプリケーションを管理、改善できる。

 「Azure AI Agent Service」は、Azure AI FoundryのAIエージェント開発サービスだ。2024年12月にプレビュー版が公開される。同サービスは、開発者が自社の業務プロセスを自動化するためのAIエージェントを作成したり、作成したAIエージェントをエンドユーザーに提供したりするのを支援する。サードパーティーのストレージをデータソースとして利用できる機能やプライベートネットワーキングなど、ユーザー企業のデータ保護を支援する点が特徴だ。

 Microsoftは、マルチモーダルAI(テキストや音声などの複数種類のデータを組み合わせて処理するAI技術)アプリケーションを構築するための新しい開発者向けサービス「Azure AI Content Understanding」も紹介した。同サービスはテキストや画像、音声などの非構造化データを、AIモデルで分析可能な構造化データに変換する。

AIエージェントが抱える懸念

 Igniteは、MicrosoftのAIエージェントである「Copilot」をはじめとしたAIサービスに焦点を当てた。同社はIgniteで、エンドユーザーがタスクを自動または半自動で実行するAIエージェントの構築方法も紹介した。「Microsoft 365 Agent SDK」は、開発者が「Azure OpenAI Service」や「Microsoft Copilot Studio」といった同社のAIサービスを利用して、AIエージェントを構築できるようにするサービスだ。作成したAIエージェントは「Microsoft Teams」や「Microsoft 365」といったMicrosoftの業務アプリケーションに加え、Webサイトやサードパーティーのメッセージングサービスを含む複数のツールで実行可能だ。

 Futurum Groupのアナリスト、キース・カークパトリック氏は、こうした手法で開発したAIエージェントに関する懸念を指摘する。AIエージェントが企業データを参照することで業務を遂行できるようになる一方で、「どのデータを参照できるのか」「データへのアクセス権限はどうなるのか」という疑問が生じかねないためだ。

 Gartnerのアナリストであるジェイソン・ウォン氏も問題を挙げる。「ユーザー企業は依然として、AI技術の安全性やセキュリティについて懸念している。AIエージェントがIT管理や取引といった業務を実行するようになると、その懸念は増す」

 ウォン氏は、AIエージェントでは従来のAIモデルよりも生成AIのハルシネーション(事実に基づかない回答を出力すること)のリスクが高くなる可能性があると推測する。「ユーザー企業はAI技術に対し、可視性の向上を望んでいる。AIエージェントがアクセスできるデータの内容や出力結果を、管理者が細かく制御するための機能を求めている」(同氏)

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