IoTの最新事例を一挙紹介
“スマート歯ブラシ”で虫歯予防? 身近になったIoT
もはやIoTは未来の話ではなく、既に多数の企業が取り組む身近な現象となりつつある。米Amazon.comのCTOが、科学、コンシューマー製品、工業およびスポーツの各分野におけるIoTの取り組みを紹介した。
あなたの会社は「IoT(モノのインターネット)」に関して、どのような取り組みをしているのだろうか。科学やコンシューマー製品、工業、スポーツの各分野におけるIoTの取り組みを紹介した米Amazon.comの最高技術責任者(CTO)の講演は、企業の最高情報責任者(CIO)にとって有益な指針となりそうだ。
Amazonのワーナー・ボーゲルズCTOは、米ニューヨーク市で2014年6月23~25日(現地時間)に開催されたイベント「MongoDB World」において、「IoT時代の幕開け」に関する同氏の見解を披露した。
ボーゲルズ氏は、IoTが既にAmazonのビジネス手法を変えている例を多数のデータとともに紹介した。その1つが、ドローン(無人機)による配送サービスだ。また「Amazon Dash」という新しいコネクテッドデバイス(通信機能を持つデバイス)も紹介した。ボーゲルズ氏はこのデバイスを「魔法のつえ」と呼んでいる。Amazonの食品雑貨配送サービスに登録しているユーザーは、この魔法のつえに音声で入力するか、バーコードスキャナ機能を利用することにより、食料品や日用品を注文できる。Dashはユーザーが入力した情報を仮想の買い物かごの中に入れ、ユーザーはクライアントPCやスマートフォンのアプリから精算する。
「IoTはAmazonのみならず多数の企業に進出しつつある」とボーゲルズ氏は強調した。IoTが各分野に与えているインパクトについて、同氏は次のようにまとめた。
科学分野のIoT
「今日、センサーは海底にも設置されている。NASA(米航空宇宙局)の火星探査機『Curiosity』に搭載された2Mピクセルのカメラもコネクテッドデバイスだ」とボーゲルズ氏は指摘した。IT、ビッグデータおよび接続機能の進歩が科学に変革をもたらしていることを示す最適な例は、ゲノム配列の解析だという。
1990年代にスタートした「ヒトゲノム計画」は、13年の歳月と10億ドルを掛けて完了した。そして、2014年1月、遺伝子解析企業の米Illuminaは、バイオ技術業界が目指してきた1000ドルという低価格でのゲノム解析を実現した。Illuminaの装置は、ヒトの遺伝子を構成する要素(ヌクレオチド)の配列を決定し、そのデータをクラウドに送信する。
「この装置は社内で保管するデータを吐き出すのではない。データを直接、クラウドに吐き出すのだ」とボーゲルズ氏は語る。当初は何年もかかった作業が、今では数日で完了するようになった結果、米国立衛生研究所の「1000ゲノムプロジェクト」や、家系探索サービスの米Ancestry.comによる常染色体のDNA検査が可能になったのだ。
コンシューマー分野のIoT
ボーゲルズ氏によると、コンシューマー分野におけるIoTの活用例の多くは「行動様式の変化」につながるものだという。同氏は、米Google傘下のスマートホーム企業Nest Labsが2014年6月20日(現地時間)に5億5500万ドルで買収した米Dropcamを例に挙げた。Dropcamのビデオ監視・セキュリティ装置を使えば、留守中に家の玄関を「仮想の目」で監視することができる。「これは、一般消費者をWebに呼び込む力が最も大きいビデオサービスだ。YouTubeよりもはるかに大きな影響力がある」とボーゲルズ氏は語る。
同氏は、自動車保険会社の米State Farmの「Driver Feedback」や同じく米Allstateの「Drivewise」など、ドライバーの行動を測定する携帯端末用保険アプリについても述べた。さらに、ユーザーの虫歯予防に役立つ「コネクテッド歯ブラシ」も紹介した。電動歯ブラシ「Oral-B」を開発する米Procter & Gambleや新興企業の米Kolibreeが、Bluetooth技術を使って歯ブラシからスマートフォンアプリにデータを送信する製品を出している。Kolibreeの製品は、リアルタイムフィードバック機能と長期データのリポート機能を備え、毎回の磨き方が適正であるか、また以前と比べてどのくらい進歩したかなどを確認できるという。
だが、ボーゲルズ氏が「すごい」と絶賛したのは米Vitalityの製品だ。同社が開発したのは「GlowCap」という薬服用管理デバイス。これを薬の入った容器に取り付けて、薬の服用スケジュールを設定する。「薬を飲み忘れるとキャップが点灯する」と同氏は話す。その後、1時間以内に容器が開けられなかったらメロディーが鳴り始め、2時間後にはテキストメッセージや電話、メールで通知を送信するという。
「GlowCapのようなコネクテッドデバイスは、行動様式の変化や修正に大きな効果がある」と同氏は語り、GlowCapを使うことで薬の飲み忘れがほとんどなくなった患者と、同製品を使っていない患者のデータを比較して示した。
工業分野のIoT
ボーゲルズ氏は、世界最大級のコングロマリット、米General Electric(GE)と同社の「Industrial Internet」にも言及した。少女が登場する同社の人気テレビCMシリーズのIoTバージョンで紹介されたGEのジェットエンジン用センサーは、運用効率の改善と予防メンテナンスを可能にする。機器間通信(M2M)を目指しているのはGEだけではないとボーゲルズ氏は言う。
同氏によると、オランダに本社を置く石油大手Royal Dutch Shellでは、1万カ所の油井にセンサーを組み込み、各油井から1Pバイトのデータを生成している。また、ドイツの清掃機器メーカーAlfred Karcherは、機器をインターネットに対応させ、機器の状態と利用状況を把握しているという。
米建設会社Deconstructionの例も紹介された。「建設業界では『流し込むコンクリートの温度は適正か』『騒音は大丈夫か』など多くの問題に対応しなければならない。こうしたデータを常に把握するのは不可能に近い」とボーゲルズ氏は話す。
この状況を変えるのがDeconstructionのプラットフォーム「mBuilder」だ。センサー技術の活用により、建設プロジェクトの管理者は騒音、振動、湿度、温度などを監視できる。「これらのデータはアナリティクスエンジンに送られ、建設現場の周囲の状況がリアルタイムで表示される」と同氏は話す。
スポーツ分野のIoT
データアナリティクスはスポーツの分野に既に進出しているが、IoTはどうだろうか。「驚くような例は、IoTを利用してチームの動きを完全にシンクロさせる取り組みだ。選手の心拍数まで同じタイミングで増減する」とボーゲルズは話す。
「今日、プロのスポーツチームの中には、シンクロしていない選手を見つけるために、リアルタイム心拍モニターを使っているところもある。周りとシンクロしていない選手がいれば、コーチはその選手をメンバーから外すのだ」(同氏)
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