3大クラウドストレージ性能比較、“キングAWS”を突き放したのは?Amazon、Microsoft、Googleを検証

Amazon、Microsoft、Googleでクラウドストレージのパフォーマンステストを実施したところ、「Microsoft Azure BLOB」が最も高い結果を示した。

2015年07月10日 12時00分 公開
[Sonia LeliiTechTarget]
Azureの3つのストレージ(BLOB、テーブル、キュー)《クリックで拡大》

 米Nasuniが1年おきに実施しているクラウドプロバイダーの速度と可用性に関するベンチマークテストのリポートによると、クラウドストレージのパフォーマンスの点で米Microsoftの「Microsoft Azure」は米Amazon Web Services(Amazon)の「Amazon Simple Storage Service」(S3)を依然上回っているという。

 Nasuniは、オンプレミスのデータをパブリッククラウドストレージに統合するクラウドNASシステムを販売している。そのため、書き込み、読み取り、削除を大量に処理するクラウドプロバイダーの能力を、可用性とスケーラビリティの両面からテストしている。テスト結果の公開を始めた2011年当時は、S3が最高成績を記録したが、2013年に「Microsoft Azure BLOB」(BLOB)がS3を上回った。

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 2015年に公開された結果では、BLOBストレージがS3と米Googleの「Google Cloud」を抑え、全体的に最高のパフォーマンスを記録したことが示されている。Microsoftは、クラウドでのデータの書き込み、読み取り、削除のパフォーマンスにおいて、AmazonとGoogleを上回った。

 Nasuniのリポート「State of Cloud Storage」では、「読み取りパフォーマンスの点でMicrosoftが一貫して他のクラウドストレージプロバイダーよりも優位をキープしている」としている。「だが、書き込みパフォーマンスの点ではAmazonがMicrosoftとの差を以前よりも縮めている。読み取りパフォーマンスにおけるMicrosoftの優位性は削除のベンチマークでも見られ、ファイル削除の速さはAmazonの2倍を超え、Googleの5倍近くを示した」

 Nasuniは、プロバイダーのクラウドでの書き込みと読み取りを3バージョン実行している。つまり、1日のさまざまな時間帯に、1Kバイト~1Gバイトのファイルサイズで、1~50個のスレッド数で書き込みと読み取りを行い、全体の平均を求めている。テストは12時間にわたって行い、テストマシンの複数のインスタンスを使用し、単発のテストランを複数回実行した。

 「特に小さいサイズのファイルの書き込みと読み取りについては紙一重の差でBLOBがS3を上回った」とNasuni製品管理部長のジョン・カペロ氏は話す。「大きいサイズのファイルではS3がBLOBよりも優れていた。ファイルのサイズが大小混在する状態ではBLOBの方が優れている。理由ははっきりしない。ストレージ側で何が行われているかが明確ではないため、この点についての見解はあまり示せない。分かっているのは、Microsoftはアーキテクチャの管理とは対照的に、ネットワークと取り込みの処理に強いことだ」

 可用性のテストは30日を1つの期間として行われ、60秒間隔で書き込み、読み取り、削除の単一のプロセスに対する各クラウドプロバイダーの応答時間が測定された。

 応答時間の点でもAmazonとMicrosoftの差はわずかだ。Amazonが平均0.1秒だったのに対し、Microsoftは平均0.14秒だった。Googleは0.5秒と、大きく後れを取っている。

 Nasuniはスケーラビリティのテストも行っている。このテストでは、クラウドプロバイダーが管理するオブジェクトの数が増えてもパフォーマンスを維持できるかどうかを測定する。カペロ氏によれば、パフォーマンスが最適であればミスは起こらないという前提で、Nasuniは1億個のオブジェクトを書き込み、書き込みと読み取りのミスの数を測定したという。テストでは変動とオブジェクト速度も測定された。

 1億個のオブジェクトの書き込みでは、MicrosoftとGoogleは書き込みエラーがなかったが、Amazonは平均5回の書き込みエラーがあった。

 Nasuniは書き込みの平均速度と変動も測定した。Amazonの書き込み速度は毎秒300オブジェクトで、MicrosoftとGoogleの3倍を記録した。Microsoftは書き込み速度が遅く、変動も大きかった。Googleの書き込み速度はMicrosoftよりもやや速く、変動は少なかった。

 リポートによると、「オブジェクト数が増えていくにつれてパフォーマンスが低下するクラウドストレージシステムが多いため、今回のテストでは1つのコンテナに格納したオブジェクトの総数を数億まで増加させた場合にパフォーマンスレベルを維持するCSPの能力を測定した」という。

 2015年のNasuniリポートに含まているクラウドプロバイダーは3社だけだ。リポートでは、米Hewlett-Packard(HP)の「HP Cloud Object Storage」と米IBMの「IBM SoftLayer」も検討し、限られた容量でのテストも行ったと示されている。だが、HPについては同社の方針転換によりリポートとの関連性に疑問が生じ、IBMについてはクラウドの定期休止によって、テストの実施が困難になったという。

 「市場でエンタープライズクラスのパフォーマンスを実際に提供するクラウドは、AmazonとMicrosoftの2つだ。Googleも含め、3つのクラウドは実際の特徴がそれぞれ異なる」(カペロ氏)

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