連載「最新のOpen Compute Projectで何が変わった」第2回
Server Design “Ver.1”で「Facebookが望んだサーバ」の条件を考える
Facebookは“自分のため”に用意したサーバ関連規格を2011年に公開しているが、その策定作業はそれ以前から行っていた。そのため、多くのベンダーとユーザーが支持するとともに多くの不満も判明することになる。
連載「最新のOpen Compute Projectで何が変わった」
データセンター向けハードウェアの仕様や設計図を公開するプロジェクト「Open Compute Project」(以下、OCP)では、データセンターで稼働する膨大な数のサーバやその関連機器、施設の運用コスト削減を目指している。
OCPを提唱したFacebookは、データセンターを構成するサーバやストレージ、ネットワークなど、7つのカテゴリーにおいてOCPによる標準規格を用意している。その第1弾となる規格は、サーバ設計に関するプロジェクト「Server Design」が2011年4月に公開した「Server Chassis and Triplet Hardware v1.0」だ。この規格に準拠したシャシーを利用するマザーボードの規格は2012年にVersion 2.0が、2014~2016年にはVersion 3.0が登場している。
今回はデータセンターを構成する基幹ハードウェアの標準規格たるServer Design規格について、その具体的な内容を解説する。
併せて読みたいお薦め記事
Facebookが自前で用意したデータセンターとは
Open Compute Projectに対するベンダーの反応は
Open Compute Projectが進めるネットワークの標準化
今のFacebookにとって「理想のサーバ」を実現するためにCPUを一から自前で開発するのは不可能だ。開発の大前提となる「理想のサーバを構成するために必要なCPUの条件」をFacebookが定義することすら困難だろう。ただし、現時点において既にFacebookやAmazon、Googleなどの大規模データセンター事業者は、自社用にカスタムしたCPUを使っている。これはIntel、もしくはAMDといったCPUベンダーが“超”大手ユーザー企業の要望に応じてカスタマイズしている。「既存製品のカスタマイズ」であって「新規に設計」はしていない。
このカスタマイズでは、次のような変更を加える場合が多い。
- データセンターの利用において必要のない機能(例えば浮動小数点演算ユニット)を無効にして消費電力を下げる
- サポートするシステムメモリの容量を増やす
- 動作クロックを演算処理能力と消費電力の比が最大になるように設定する
このような「BIOSレベルで変更できる」カスタマイズに過ぎず、その構造は既存製品そのままだ。一般論としてCPUベンダーが新規にCPUを作る場合、基本的な設計から実際に動作する試作品が出てくるまで4年ほど掛かる。そこからさらに改良を加えながら10年掛けて販売する。CPUベンダー以外の企業がこんなことをやっていたら時間と費用が掛かって事業全体が成り立たなくなる。そこで、既存のCPUを使いながら「自分たちの理想に近いサーバ」を構築し、そこで得た改良点をCPUベンダーに要望して反映してもらいながら最適化する。
このようなCPU開発の事情から、OCPのServer Designは、技術進化に合わせた最善のCPUを選んで設計する。最初のServer Design規格では、Facebookが定めた「Freedom」というシャシー構成に合わせている。
Freedomは、AMDとIntelのCPUに対応している。AMD版では同社製のCPU「AMD Opteron 6000シリーズ」2基にDIMM(複数のDRAMチップで構成するメモリモジュール)スロット合計16基、それと最小限のインタフェースを搭載したマザーボード2枚をまとめて3連ラック(Triplet Cabinet)に収める構成だ。Intel版では同様の構成を細長いマザーボードに収めている。
以上が第1世代のServer Designでラックについて定めた規格「Open Rack compatible server」だ(前回の「Facebookが定めたサーバ規格『Open Compute Project』はなぜ登場したのか)で紹介したように、Open Compute Projectではデータセンターを構成する各部ごとに「Server Design」「Open Rack」など7つのプロジェクトを立ち上げている。Open Rack compatible server はこれらのプロジェクトで策定した規格の1つだ)。
Intel版もAMD版も2012年に発表している。仕様が確定していてAMDとIntelを選べるので、この規格は多くのサーバユーザーやデータセンターユーザーが支持した。OCPはOpen Rack compatible serverは汎用(はんよう)規格として公開していたので、提唱したFacebook以外にも、企業内のサーバルーム向けからデータセンターまでさまざまな用途に利用可能だった。このことも、この規格が多くの支持を得た理由の1つといえる。
サーバ市場では、有力なサーバベンダー(海外ならHewlett Packard EnterpriseやDell、国内なら富士通やNECなど)が存在し、後発ベンダーが製品差別化のために「独自の機能」を導入すると先行サーバとの互換性に問題が出るなど、新規参入が難しい状況にあった。しかし、OCPのServer Design規格の登場で、後発ベンダーでもサーバ市場に参入できるようになった。これが「ホワイトボックスサーバ」と呼ぶカテゴリーだ。
仕様に準拠するが、仕様に書かれていない部分は徹底的に省く安価な構成が可能になり、低価格サーバ市場が大きく拡大することになった。多くのマザーボードベンダーやシャシーベンダーもServer Design規格に合わせた製品をリリースしており、これを組み合わせてOCP互換サーバを構築できるようになった(この事情は「Facebook主導の「Open Compute Project」、データセンター大手が続々支持」に詳しい)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[サイボウズ株式会社] DXに必要な「Dスキル」「Xスキル」を持った人材を育成するには? -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] データで見る、DXが「順調に進む企業」と「つまずく企業」の違い -
製品資料
[サイボウズ株式会社] 賛否が割れがちな「Notesからの移行」 新環境への移行を納得してもらうには? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 農林中金に学ぶ内製開発 処理効率を約2倍に高めAI活用も加速させた方法とは? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] NTTグループのデジタル変革術、17万人が利用する決裁プロセス刷新の全貌
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
サーバ約70台をAWSへ ヤナセが移行前にやった「通信要件の可視化」
-
4
脱VMwareの真実:データセンター大手がNutanixを選んだ「コスト以上の理由」
-
5
MS月例パッチが1000件突破 人手不足の情シスを襲う「月1回メンテ」の崩壊
-
6
多品種小ロットの「手書き・配合ミス」を克服 キャニオンスパイスの食品工場DX
-
7
AIインフラの理想形? 「5層のケーキ」を垂直統合するための近道とは
-
8
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
9
「AI活用」を掲げた年金刷新が炎上 英政府が大手ITアウトソースを切り捨て「内製回帰」した理由
-
10
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
7
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
8
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
9
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー