ニューヨーク近代美術館がSANを支持しない理由Case Study

高画質の美術データベースを稼働させているアップルのサーバやビジネス用のWindowsサーバが混在する環境にSANを導入することは、技術的にもコスト的にも困難であることが判明した。

2006年07月13日 09時13分 公開
[TechTarget]

 ストレージの集中化がブームのようだが、少なくとも、ある大規模組織はそれを支持していない。ニューヨーク市のニューヨーク近代美術館(MoMA)だ。

 MoMAは1929年に教育機関として設立され、今では世界で最も有名なモダンアート/コンテンポラリーアートの美術館となっている。MoMAは2004年に4億ドル規模のリニューアルを終え、現在1日の来館者数は5人~1万5000人程度。同館のIT環境では、Windows 2000、Windows Server 2003、アップルのMac OS、IBMのOS/400などのOSが動作する100台以上のアプリケーションサーバを保守しながら、6カ所のリモートサイトの750人以上のユーザーをサポートしている。

 MoMAのCIOを務めるスティーブ・ペルツマン氏によれば、同館は5年ほど前に“アルファベット3文字の会社”のSAN(ストレージエリアネットワーク)製品を購入したが、ほどなくして、そのマシンには、あまり重要ではないビジネスデータやテストデータが保存されるだけになったという。

 ストレージの集中化がブームのようだが、少なくとも、ある大規模組織はそれを支持していない。ニューヨーク市のニューヨーク近代美術館(MoMA)だ。

 MoMAは1929年に教育機関として設立され、今では世界で最も有名なモダンアート/コンテンポラリーアートの美術館となっている。MoMAは2004年に4億ドル規模のリニューアルを終え、現在1日の来館者数は5人~1万5000人程度。同館のIT環境では、Windows 2000、Windows 2003、アップルのMac OS、IBMのOS400などのOSが動作する100台以上のアプリケーションサーバを保守しながら、6カ所のリモートサイトの750人以上のユーザーをサポートしている。

 MoMAのCIOを務めるスティーブ・ペルツマン氏によれば、同館は5年ほど前に“アルファベット3文字の会社”のSAN(ストレージエリアネットワーク)製品を購入したが、ほどなくして、そのマシンには、あまり重要ではないビジネスデータやテストデータが保存されるだけになったという。

 「正直なところ、今、そのマシンに何が保存されているのか私は知らない。重要なデータではないはずだ。業務データですらないだろう」と同氏。

 ペルツマン氏によれば、導入してまもなく、このSANをPCやMacintoshが混在する環境と連携させるのは、コストがかさみ、手に負えない作業であることが分かった。また、管理コストにも二の足を踏んだという。

 「当館の予算は、平均的な非営利団体よりは多い。だがSANの保守は、われわれには負担が大きすぎた」とペルツマン氏。

 現在、MoMAのデータの半分強(約3.5Tバイト)は、アップルのNAS(ネットワーク接続ストレージ)システム(Xserve RAIDに接続したXserve G5)に置かれている。ペルツマン氏によれば、アップルのサーバでホストしているデータの大半は3万件以上の高画質デジタル画像のデータベースに関連するもので、同氏の技術スタッフはアップルのシステムを使ってそうした画像を保存したり、作業したりする方を好んでいるという。

 「当館のITスタッフは大半がMacユーザーだ。彼らにWindowsへの移行を強要するわけにはいかない。だが、ExchangeやPeopleSoftといったアプリケーションは当然WinTelサーバに置く必要があった」と同氏。

 同館では現在、アップルのサーバはNASに接続されているが、WinTelマシンはそれぞれDAS(直接接続型ストレージ)アイランドを備えている。DASは近年、多くの企業が排除しようとしているインフラだ。だがペルツマン氏によれば、MoMAは現行のそうした方法に満足しており、むしろ、一流のSAN製品を導入したときよりも満足しているという。

 「結局のところ、すべてのデータを単一のストレージボックスにまとめようという考えが間違っていた。そのようなストレージに、管理、トレーニング、保守の手間を掛ける価値はなかった」と同氏。

 さらにペルツマン氏は、「すべての卵を1つのかごに入れずに済んでいる現状」にも満足しているという。同氏によれば、MoMAはSANの使用を中止したことで、保守コストだけでも年間5万~10万ドルを節約できたという。

 現在MoMAのIT環境で唯一集中化されているストレージは、ニアテックの6Tバイトの仮想テープシステム、VSEだ。ペルツマン氏によれば、データ量の増大のほか、発券など一部システムを24時間稼働させておく必要性から、ディスクベースのバックアップが必要となり、同館は今年初頭にこのシステムを導入した。

 同氏によれば、MoMAがディスクベースのバックアップの必要性を悟ったのは、Exchangeデータベースが故障するというトラブルが発生し、テープバックアップも役に立たなかったことがきっかけという。結局、データベースが手作業で修正されるまで、MoMAのユーザーは3日間待たなければならなかった。

 「それだけ長いことメールが不通になった場合の混乱がどんな状態かは容易に想像できるだろう」とペルツマン氏。

 「ニアテックの製品は、当社が導入済みのコムヴォルトシステムズのバックアップソフトウェアとADIC(エイディック)社のScalarテープライブラリを利用するため、予算の面でも統合の面でも、それほど大きな負担にはならなかった」と同氏は続けている。

 だがペルツマン氏によれば、最先端アートを展示しているMoMAだが、同館は仮想テープライブラリ(VTL)の実装に際しても保守的だったという。今現在、データはVSEに1週間保存されたのち、データ管理サービス大手のアイロンマウンテンによってバックアップされている。これまでのところVTLの導入はうまくいっているものの、MoMAはVTLを「テープの代わり」というよりも「冗長バックアップ」ととらえていく方針だ、とペルツマン氏は語っている。

 「テープは持ち運びができ、オフサイトの設備に安全にしまっておける。これは重要なポイントだ。当分、テープの使用をやめるつもりはない」と同氏は語っている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬩幢ス「隴取得�ス�ク陷エ�・�ス�。鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�、鬩幢ス「隴主�讓滂ソス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス�ス�ス�ス

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

「SATA接続HDD」が変わらず愛される理由とは

HDDの容量が30TB超になると同時に、ストレージ技術はさまざまな進化を続けている。そうした中でもインタフェースに「SATA」(Serial ATA)を採用したHDDが変わらずに使われ続けている。なぜなのか。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

IOPSが5倍に向上&コストも80%削減、エクシングが選んだ大容量ストレージとは

カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。

製品資料 プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

データソート性能向上でここまで変わる、メインフレームのシステム効率アップ術

メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

従来ストレージの約8倍の容量を確保、エルテックスが採用したストレージとは

ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。

市場調査・トレンド プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

クラウド統合を見据えたメインフレームのモダナイズ、3つの手法はどれが最適?

長年にわたり強力かつ安全な基盤であり続けてきたメインフレームシステム。しかし今では、クラウド戦略におけるボトルネックとなりつつある。ボトルネックの解消に向け、メインフレームを段階的にモダナイズするアプローチを解説する。

鬩幢ス「隴主�蜃ス�ス雜」�ス�ヲ鬩幢ス「隰ィ魑エツ€鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ソ�ス�ス�ス雜」�ス�ヲ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ソ�ス�スPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ニューヨーク近代美術館がSANを支持しない理由:Case Study - TechTargetジャパン サーバ&ストレージ 鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬯ョ�ォ�ス�ェ髯区サゑスソ�ス�ス�ス�ス�コ�ス�ス�ス�ス

TechTarget鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ク鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�」鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス雜」�ス�ヲ 鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬯ョ�ォ�ス�ェ髯区サゑスソ�ス�ス�ス�ス�コ�ス�ス�ス�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...