もはやユーザーからの苦情に返事をすればそれで終わり、という時代ではない。彼らはインターネットに問題を公開し、地球上のあらゆる人々に知らせようとする。われわれはユーザーをコントロールできなくなってきたのだ。
サンフランシスコで開催されたOracle OpenWorldにおいて業界の将来について語ったプレゼンターらによると、サービスとサポートに携わる人々にとって良い時代がやってきたそうだ。
オラクルでCRMサービスを担当するマイク・ベッツァー副社長は、「サービス業務を担当していて良かったと思っている。しっかりとした手応えを感じている。効率化推進の動きが、われわれにとって追い風になっている。当社の主要な顧客は、サービスに対する新たなアプローチを高く評価している」と語った。
ベッツァー氏は、ホスティング型コールセンター会社、アイネトの共同創業者である。同社はその後、シーベルに買収され、さらにシーベルを買収したオラクルの傘下に入った。同氏によると、サービス業界は大きな転機を迎えようとしているという。現在、コンタクトセンターでのコスト削減と効率改善の取り組みが、顧客忠誠度の向上といった優先課題よりも後回しにされるようになってきたのに伴い、新しい技術とチャレンジが生まれつつある。ベッツァー氏の前にセッションの演壇に立った調査会社、ガートナーのマイケル・マオズ調査担当副社長によると、こういったトレンドの中でも特に注目されるのが、ソーシャルネットワークの登場だという。
マオズ氏は、大きく報じられたインターネットサービスプロバイダー、AOLの顧客の例を挙げた。AOLのサービスを解約するのに苦労したこのユーザーは、そのすべてのプロセスを記録した。このユーザーの体験はオンラインで公開され、ソーシャルニュースサイトのDiggに掲載されただけでなく、MSNBCやThe Wall Street Journalなどのメディアでも報じられることになった。
「もはやユーザーからの苦情に返事をすればそれで終わり、という時代ではない。彼らはインターネットに問題を公開し、地球上のあらゆる人々に知らせようとする。われわれがコントロールできなくなってきたのだ」とマオズ氏は話す。
マオズ氏によると、企業はユーザー側の視点からサービスプロセスを見直す必要があるという。企業側の視点では通常、ターゲットとなる顧客の絞り込み、調査、獲得、歓迎、そして関係構築、顧客管理という流れになる。一方、顧客側の視点から見た企業との関係は、認識から始まり、検索、選択、注文、支払い、セットアップ、そしてサポートの利用、アップグレードという流れになる。
マオズ氏によると、企業に顧客サービスの見直しを促しているトレンドは幾つかあるという。顧客が求めているのはシームレスな環境、すなわちすべてのチャネルに通じる環境であり、最初にWebあるいはオンライン経由で企業にコンタクトするかどうかにかかわらず、ほかのチャネルでもそのプロセスを継続できることを望んでいるのだ。そしてこれを可能にするのが「シークレット」サービスである。これは、コミュニケーションループの中で「目に見えない」人間としての役割を果たし、オンラインショッピングカートの放棄対策としてのプロアクティブチャットや、IVR(音声自動応答システム)と格闘する得意客のサポートなど、さまざまな形で顧客体験を支援することを意味する。その一方で、顧客がサービスをあまり利用しないという状況も生まれつつある。これは、顧客が問題解決に仲間同士のコミュニティーに頼るようになってきたからである。
「ソーシャルコミュニティーやソーシャルネットワークで起きていること比べると、われわれのIT関連の取り組みなど微々たるものだ」とマオズ氏は話す。
カンファレンスの出席者の中には、コンタクトセンターがコストセンターからプロフィットセンターへとシフトするとともに、ソーシャルネットワーキングの重要性が高まるという動きがすでに現実のものになっているという人もいた。
公益/林業/通信業界向けの専門装置のメーカー、アルテックインダストリーズのISアプリケーション担当シニアマネジャーとしてカンファレンスに出席したジュリー・フロイド氏は、「このシフトが必要だとわれわれは考えている。われわれは顧客に合わせてサービス組織を構築した」と話す。
アルテックはすでに、自社のコールセンターをプロフィットセンターとして運用しており、カンファレンスでも同社の取り組みの正しさが裏付けられる格好になった。
「われわれの主張が裏付けられた。コールセンターを通じて、売り込みと差別化を図り、そして積極的かつプロアクティブ(能動的)なサービスを展開することができる」とフロイド氏は話す。
企業がこの顧客サービスの新しいトレンドに投資するに当たっては、効率化および基本的なサービスについてはアウトソーサーを利用する一方で、プロアクティブサービスなどの取り組みを社内でコントロールする体制を維持すべきだ。マオズ氏によると、こういった取り組みには大きなコストが掛かるが、2~3倍の投資効果を期待できるという。
ガートナーの予測によると、企業は来年、カスタマーデータインテグレーション、ビジネスプロセスマネジメント、個別業界向けのSOAなどに本格的に投資し、エンタープライズフィードバック管理、解析技術、Web/IVRセルフサービスなどの技術を積極的に利用するようになるという。
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