本書は「失敗学」の第一人者である著者が、六本木ヒルズの大型回転ドア事故やJR福知山線脱線事故など、まだ記憶に新しい9つの事故、失敗について自ら調査した結果をまとめ、考察したものである。身近に起きた事故や失敗の具体的な事例を通し、失敗を回避するポイントを理解していきたい。
書名:失敗学実践講義-だから失敗は繰り返される
価格:1,680円(税込)
著者:畑村 洋太郎
出版社:講談社
事故や失敗は「原因」「行動」「結果」の3段階で起きる。「原因」と「結果」の間には必ず人間の「行動」が関係しているということだ。これはすべての事故や失敗にはヒューマンエラー(人的要因が主因となる失敗)が関係していることを示している。では、どうすれば、事故や失敗をなくすことができるのだろうか?
現実的には、事故や失敗をゼロにすることは難しい。だからこそ、事故や失敗が起こることを前提に、最悪の事態だけは絶対に避ける備えをしておくことが最も重要なのである。たとえ発生確率は低くても、または思いつきにくいが、考えれば思いつくという程度の事故でも、必ず起こる可能性があるということを忘れてはならない。
そのため、思いつく限りのあらゆる事故や失敗を想定した対策をとっておくことが大切なのである。
本書では「過去に経験した事故や失敗は30年周期で繰り返されることが多い」「小さな事故は大事故の予兆である」「マニュアルには、そこに書いてあること以外しなくなり、本来の目的を見失う弊害がある」「失敗を防ぐためにはトップの判断がいかに重要であるか」など、事故や失敗を防ぐ上で知っておくべき知識が分かりやすく解説されている。
また、現在では、家電製品を始めとするほとんどの機械が、内部に搭載されたマイコンやマイクロチップでコントロールされるようになった。その結果、これらのバグやシステム障害が原因で事故が起こるケースが増えている。機械制御により安全性が増したことも確かだが、逆に新たな危険が増えている時代だとも言えるのだ。
本書でも取り上げている日本航空の連続トラブルや、みずほ銀行のシステム障害、東証の売買システム障害なども、それにあたる。
これは以前から言われているように、コンピュータは本当に万全なのか、人間の判断とコンピュータの判断が対立した時にはどうするのか、という問題がコンピュータシステムには常につきまとっているからだ。加えて、システムは複雑になるほど、潜在的なトラブルも増大していく。
そうした中で、現実の市場や社会状況をシステムに十分反映させることができなければ、トラブルが発生するのは当然の結果とも言える。金融システム障害もそうしたことが原因で発生したものである。
特にシステムにおいては、ほかの事例以上にトラブルを前提にした検証作業が重要となる。現実の状況が大きく変化した場合は、新しく要求される機能や新しい制約条件、安全性をトータルで見ながら、まったくゼロから全体を組み立て直すトータル設計が必要だと説いている。本当に必要なデータ以外はすべて捨て、ゼロから作り直す勇気がないと、以前使っていたが今は必要でないデータなどが悪さをする可能性があるというわけだ。
著者自身も「はじめに」の中で述べているが、必ずしもここで取り上げられている事故に関心がなくても、本書に書かれている知識は、どのような仕事にも応用できるものである。現に、わたし自身、関心のない事例でも非常に興味深く読むことができた。
ライター:野口 哲典
1958年10月31日生まれ。雑誌編集者、マーケティングリサーチ会社などを経て現在に到る。科学関連から生活全般まで、幅広い執筆活動を展開。最新作「知ってトクする確率の知識」(ソフトバンククリエイティブ)
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