BIツール導入に当たり、事前に参考にすべき情報として導入事例が挙げられる。今回は実際の導入企業の声を紹介しながら、BIによる現場のコスト削減を解説する。
前回の「失敗しないBIツールの選び方」でBI(Business Intelligence)導入に失敗しないためのヒントを説明したが、BIツール導入に当たって参考にすべき情報として導入事例が挙げられる。特にBIツールはほかの業務アプリケーションに比べて、導入検討のプロセスで他社の導入実績は非常に参考になる。
なぜなら、ほかの業務アプリケーションの場合は、業務要件とのフィット&ギャップ分析で自社での導入の適応性をある程度見極めることができるが、BIツールの場合、「何にどのように活用するか」は各企業でどのようにでも工夫できるからだ。
もちろん、BIツールを業務システムの一部である定型リポートの作成ツールとして利用する場合は、「その定型リポートが作成できるか」「そのための工数がどれだけ必要か」といった業務要件の実現可能性が重要だが、そのような使い方はBIツールの一部の使い方でしかない。
本連載の第1回「営業部長、SFAデータを本当に使えていますか?」で解説したように、BIツールの価値は「データを基に事実を可視化して、適切な意思決定や具体的なアクションを行うことにより、ビジネスに価値(売り上げ、生産性、企業価値)をもたらすこと」であり、そのための道具として使えるかどうかが重要なのだ。BIツールの効能は使い方により大きく変わる。導入事例はBIツールの自社での利用法を知るヒントであり、自社への導入の成否を疑似体験的に判断する材料として有効だ。
多くの事例を見ていくと、BIツールの導入効果は以下の3つに分類することができる。
やはり、BIツール導入の目的としては、1の「ビジネス的な価値の創造や課題解決」が最も優先されるが、米国発の100年に一度の深刻な不況環境においては、3のコスト削減についても多くの事例で挙げられている。これまではBIツールの投資に対する効果は目に見えにくく、比較的ROI(投資対効果)を短期に求められることは少なかったが、今後は長期的な効果と短期的なコスト削減効果の両方が求められるようになるだろう。多くの部長職の読者にとっても、自分の部署のコスト削減は今目の前にある課題となっているはずだ。今回はBIツール導入により大幅なコスト削減効果があった事例を幾つか紹介していこう。
一般的にデータ活用環境が準備できていない企業や、EUC(エンドユーザーコンピューティング)環境が整備されているものの一部のスタッフにしか開放されていない場合、現場で必要なデータの抽出やリポートの作成を情報システム部門に依頼しているケースが多い。たまたま情報システム部門の担当者の手が空いていればいいが、多くの場合どうしても提供までに数時間あるいは数日といったタイムラグが発生してしまう。現場としてはすぐにデータが欲しくても、その間は思考や作業が中断してしまうことになる。
それがBIツールの導入により、数分でデータを入手できるだけでなく、トライ&エラーを繰り返すことで精度の高い分析が可能になる。結果的に現場が分析という本来の仕事に時間を割けるようになるだけでなく、情報システム部門のデータ抽出作業は不要になる。
「従来は分析のためのリポート作りに丸1日要していたが、BIツールの導入でリポート作成が5分でできたという報告がある」(卸売業)
「以前は分析データをリクエストしても情報システム部門では即応できなかったが、BIツール導入後は誰でも必要なときに必要なデータをすぐに閲覧・分析できるようになった」(小売業)
「営業分析資料を10分程度で作成できるだけでなく、必要に応じてMicrosoft Office Excel(以下、Excel)やPDF文書、CSVなどのさまざまなファイル形式で出力できる。業務に合わせたデータ活用が実現した」(サービス業)
また、システムの処理パフォーマンスにも注意したい。厳密に言えばその待ち時間もコストといえるし、現場での生産性向上のためには「思考の停止」を招かないことが非常に重要だ。いくら自分で分析できるようになったとしても、システムの処理時間がかかってしまっては業務効率の向上は見込めないだろう。
「人事給与システム再構築の際にBIツールを導入。人事給与データ約6万件をBIツールに投入して人事担当者がさまざまな角度から統計分析作業を行っているが、パッケージアプリケーションで5分以上かかっていた分析が1秒でできるようになった」(鉄鋼業)
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