社外のクラウドサービスを利用するべきか? あるいは社内にプライベートクラウドを構築した方がいいのか? この難しい判断を行う際に留意すべき幾つかのポイントを解説する。
プライベートクラウド(企業内に構築するクラウドコンピューティング)という概念は矛盾した表現だという人がいる。だが実際には、自社専用のクラウドを利用したいという企業は決して少なくない。その一方で、プライベートクラウドをあえて導入する必要性を感じないという企業もある。多くの企業にとって、自社がどちらのグループに属するのかを判断するのは難しい問題だ。
クラウドコンピューティングとはリソースの仲介システム、すなわちプロセッシングリソース(CPU、メモリ)とストレージリソースを柔軟かつ透過的な方法で配分するためのアーキテクチャだ。社内のITリソースを配分するのが難しいアプリケーションの場合は、プライベートクラウドを採用するのは困難だ。プライベートクラウドでは、まず小さな規模でスタートし、以下の点に注意しながら徐々に導入を進めていくことが望ましい。
すべてのクラウドコンピューティングアプリケーションは、ユーザーのデスクトップとクラウド内のサーバとの間で高品質の接続をサポートしなければならない。大抵の企業内ネットワークは、そういったオープンな接続性を実現するようには設計されていない。現在でも多くのネットワークは、各リモートオフィスをデータセンターに接続する「スター型」構成を採用している。
スター型構成では、データセンターの境界がクラウドの境界になる。この制約のため、自社運用のクラウドコンピューティングに移行するメリットを見いだすのは難しいかもしれない。複数の場所でクラウドリソースをホスティングできれば、デスクトップへの接続パスに十分な帯域幅とQoS(Quality of Service)を提供できるはずだ。そういった環境でなければ、パフォーマンスのばらつきのためにアプリケーションの使い勝手が損なわれることになる。
プライベートクラウド上で運用するのに最も適しているのは、演算処理が主体でデータベースへのアクセスが少ないアプリケーションだ。複製可能な静的データストアを利用するアプリケーションもプライベートクラウドに適している。
プライベートクラウド上で運用するのが最も難しいのが、データベースへのトランザクションアクセスを行うアプリケーションだ。このようなアプリケーションに割り当てられたサーバは、情報を管理するデータベースに接続する必要がある。この構成ではバックエンドのストレージネットワークのパフォーマンス問題を引き起こし、その結果クラウドコンピューティングが悪夢と化す恐れがある。また、データベースの複数コピーが必要とされるケースでは、データベースの同期に関する問題も生じる可能性がある。
本稿筆者のトム・ノル氏はCIMI Corporationの社長。同社は1982年以来、テレコムとデータ通信を専門に手掛けてきた戦略コンサルティング会社。最新の通信戦略問題を扱った雑誌「Netwatcher」の発行人も務める。
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