システム運用は「いざ」というときに備えることが重要だ。バックアップ、システム冗長化、定期メンテナンス……。でもこれらの前に、やっておくべき大事なことがある。それは、日々の仕事の「可視化」だ。
前回「運用管理に『コーン入りしょうゆラーメン』の発想を」は、「コーン入りしょうゆラーメン」という一風変わった例えで、「システム運用はサービス業である」という話をしました。今回はそこからさらに一歩進んで、このシステム運用というサービスを「可視化」するにはどうすればいいのか、という話をしてみたいと思います。
「可視化」……何とも取っつきにくい言葉ですね。そもそも、可視化とは一体何なのでしょか? なぜシステム運用に可視化が必要なのでしょうか? 具体的に何をすれば、可視化できるようになるのでしょうか?
この可視化という不可解なキーワードを理解するべく、1つ1つひも解いていきましょう。
可視化という言葉をWikipediaで調べてみると、「人間が直接『見る』ことのできない現象や事象、あるいは関係性を、『見る』ことのできるもの(画像、映像、グラフ、図、表など)にすることをいう」とあります。なるほど、本来は直接目に見えないものを見えるようにするわけですね。
前回、「システム運用はサービス業である」ということを説明した際、「サービス」とは「売り買いした後にモノが残らず、効用や満足などを提供する、形のない財のこと」と定義しました。さてさて、「形のない財」……これも何だか難しい言い回しですが、要するにこれも「直接見ることができないもの」ですよね。
成形された製品であれば、形となり目に見えるモノになりますが、「見ることができない財」であるシステム運用というサービスは、どうしたら見えるようになるのでしょう? システム運用の世界で「可視化」という場合には、まずこの根本的な問いから出発することになると思います。
そもそも、なぜシステム運用の仕事に可視化が必要なのでしょうか?
ここで、弊社インフォリスクマネージが実際に経験した苦い思い出を1つ紹介したいと思います。
以前、弊社がシステム運用を請け負っていたある顧客のシステムで、障害が発生したときの話です。この案件では、諸事情から弊社の担当者が1人でシステム運用を担当していたのですが、運が悪いことに休日の深夜にシステム障害が発生してしまいました。弊社のシステム監視スタッフが障害アラートを検知し、この運用担当者に電話で連絡を入れたのですが、鳴らせど鳴らせど一向に電話に出る気配がありません。システムは完全に停止、もうクレーム寸前の状態です。
そこで急きょ、別の運用担当者を捕まえてピンチヒッターに立てたのですが、さらに不幸なことに、障害を起こしているシステムを復旧するために必要な資料が、どこに保存されているのかさっぱり分かりません。対応できる人間がその場にいるのに、その手段、すなわち情報がないばかりに、手も足も出ないのです!
幸いなことに、しばらくしてから本来の担当者から連絡があり、システムを無事復旧することができました。しかし、一歩間違えれば顧客が大損害を被ることはもちろん、これまで築き上げたわたしたちの信頼も一瞬にして失ってしまうところでした。
どんなに高い技術スキルを持った人間でも、必要な情報がなければ運用サービスを提供することはできません。裏を返せば、必要な情報が常に参照できる状態になっていれば、こうした突発的な状況でも対応できるわけです。このケースでは、運用担当者1人1人が持っている情報が、ほかの担当者から見えない状態になっていたのが問題でした。これをお互いに見える状態にする、すなわち可視化する必要があったのです。
システム運用はサービス業なのですから、そのサービスが一切提供できなくなるというのは、これはもう最悪の事態です。特定の人間に依存せず、「組織的」に「安定した」サービスを「継続的」に提供するためには、可視化は不可欠なのです。
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