身近で使われているにもかかわらず、存在が意識されていない「Web技術」。話題のTwitterや、ERPで使われるWebアプリケーション、クラウドコンピューティングなど、ビジネスの現場でも活用が増えてきたWeb技術についてコンパクトに解説する。
Web技術がビジネスの現場に浸透してきた。ERPであればWebアプリケーションやSSO、Ajaxなどの技術を活用するのがいまや一般的だ。 また本連載第1回でも紹介したようにクラウドコンピューティングでも前提とされる技術である。このようにWeb技術は広く使われているにもかかわらず、その存在に気付いていない会計人は多いのではないだろうか。本連載第3回では身近になってきたWeb技術を解説する。
通常は個人のPC内などローカル環境に保存されているWebブラウザのブックマーク(お気に入り)を、インターネット上でタグやコメントなどによりユーザー間で共有できるようにする技術またはサービス。特定の環境に依存せず、広くブックマーク情報を共有・再利用できる。大規模サービスの例としてdeliciousなどがある。
会計の視点 → 部署内やユーザー間での各種リファレンスや会計情報の共有に有用なツールである。
個人や数人のグループで運営され、逐次更新される日記的なWebサイトの総称。自らの専門や立場に根ざした分析や意見表明、ほかのサイトの著者と議論する形式が多い、時系列でのページ構成やほかのサイトの記事との連携(トラックバック)、読者コメントやその返答を表示する点も特徴。
会計の視点 →会計に関するトレンドのタイムリーな情報収集には有効と考えられる。
社内外を問わず複数の異なるシステムやコンテンツを組み合わせて、あたかも1つのシステムあるかのようにアプリケーションを構成することができるWeb技術。Googleを代表とするAPIというインターフェイスプログラムを提供するサービスの増加により注目を集める。
会計の視点 →ユーザーの業務ごとに必要な機能を組み合わせて効率的に業務を行うような画面構成も実現可能。
マイクロソフトが提供するディレクトリ情報を統合管理する仕組み。NTドメインと呼ばれる環境下でネットワーク内のPCやプリンタなどの資源情報を検索可能にし、アクセス制御なども一元管理できる。ユーザー情報管理の要請が高い大規模ユーザー向け技術だが、中規模企業での利用例も多い。
会計の視点 →IT全般統制の有効性を評価するにあたり、ディレクトリ情報の管理が適切に行われているかは重要なポイントとなる。
Webにおける非同期通信技術の1つ。静的なWebページと異なり、同一画面内での動的な画面遷移やキー入力情報の先行処理など、擬似的なリアルタイム環境を実現できる。Webブラウザのみで使えて特定のソフトウェアを要しない、などの手軽さで普及している。大規模な利用例としてGmailがある。
会計の視点 →外部向けサービスを中心に普及してきたが、現在では業務システムでの導入例も多い。
Contents Management System (コンテンツマネジメントシステム)の略。Webアプリケーションなどで利用されるテキストや画像、レイアウト情報などを一元的に保存・管理、サイトの構築、編集、変更管理などの作業を総合的に支援するソフトウェア。
会計の視点 →Webアプリケーションの普及により変更管理などの内部統制要件の面でもCMSが求められつつある。
Webサイトの状態管理を制御するための技術。実際はサイト訪問情報やユーザー認証情報などを含むテキストデータであり、Webブラウザ内に保存される。再訪問時にデータ入力する必要がなくなる半面、セキュリティリスクもある。ほとんどのECサイトでCookieの保存を前提として認証が行われている。
会計の視点 → 業務用PCを複数人で共有している場合、Cookie情報が保存されたままだと不正アクセスの原因になり得るので注意。
アドビシステムズが開発したリッチコンテンツを扱うための技術。マウス操作との連動や音声・動画の利用など、表現力の高いコンテンツを作成できる。Webサイトを双方向で利用できるためユーザーの利便性が高く、広く普及しているが技術の閉鎖性に対する批判もある。大規模な利用例としてYouTubeがある。
会計の視点 →業務向けシステムでの利用は少ない。リッチな表現ができるが、開発工数にも影響するので注意が必要。
Webコンテンツなどのハイパーテキスト表示を制御するマークアップ言語の最新版。動画や音声の表示制御、ネットワークにつながっていない環境での閲覧などの特徴がある。検索エンジンとの親和性をより考慮して設計されており、電子書籍マーケットにおける次世代の標準としても期待されている。
会計の視点 → まだ正式な勧告ではないため、従前のHTMLで記述されたサイトとの互換性に留意。
ハイパーテキスト転送プロトコルとも呼ばれ、Webコンテンツを表示制御するための技術をいう。HTTPで扱えるデータをWebサーバに置くことで、Webブラウザが解釈・閲覧可能となる。サイトのURLにある「http://***.com」などの表現はHTTPの採用を意味する。Webコンテンツの世界的な普及に大きく貢献した。
会計の視点 → 会計システムについても、従来のクライアントサーバテクノロジからWebテクノロジに主流が変わりつつある。
WebサイトごとにID・パスワードの認証情報を用意することなく、単一のIDで複数のサイトにアクセスできるように認証を標準化する技術。OpenIDに対応しているサイトは、1度ログインすれば対応している他のサイトのサービスも利用できるため利便性が高く、パスワード管理の手間も軽減できる。
会計の視点 → ビジネス向けサービスでは対応事例が少ないが、管理工数の軽減を軸に今後の普及が予想される。
Webアプリケーションの標準化技術の1つ。OpenIDは認証段階でIDを一元化するが、OAuthは複数のサービス間でユーザー情報を相互利用するところまで踏み込むことでサービスの利便性を高める。よりシームレスにあらゆるサービスを利用できるため、Twitterなどを中心に徐々に利用サイトが増えつつある。
会計の視点 →アプリケーション機能面で連携できて便利な半面、一時的にID情報を他サービスに渡すためセキュリティへの留意が必須。
マイクロソフトが開発したリッチコンテンツを扱うための技術。プラグイン形式でWebブラウザに組み込まれて提供されており、さまざまな既存の音声・動画形式のファイルを利用できる。リッチコンテンツ関連技術としてFlashの後を追う形でリリースされたが、徐々に利用シェアが拡大している。
会計の視点 →業務向けでは、Officeアプリケーションと連携した今後の普及展開が予想される。
Secure Socket Layer(セキュアソケットレイヤー)の略。インターネット上で情報の送受信経路を暗号化するための技術。プライバシーに関わる情報やクレジットカード番号、企業秘密などを安全な手段で送受信して、データ改ざんや盗聴を防止できる。
会計の視点 →企業内にてWebを含むインターネットでの情報のやりとりを行ううえで情報漏えい防止の意味で必須。
Single Sign-On(シングルサインオン)の略。複数のシステムで横断的にIDとパスワードを利用できる仕組み。システムごとに別々のIDとパスワードを入力する必要がなくなり、1度の入力で複数のシステムを利用できる。
会計の視点 → 複数のシステムを利用して業務を行う場合、システムごとのID、パスワードを意識しないので効率的だがシステムのレスポンス低下に注意。
最大140文字の投稿(つぶやき)でつながるコミュニケーションサービス。WebサイトやAPIを利用したクライアントツールなどから「今していること」などを投稿し、友人、知人や気になるユーザーを「フォローする」ことでコミュニケーションできる。気軽に発信でき、立場を超えたコミュニケーションも可能。
会計の視点 → 会計人同士のコミュニケーション手段としても有効であることが立証されつつある。機密情報の漏えいなどには注意が必要。
Webサーバ上で動作するアプリケーション全般を指す。ユーザーはWebブラウザでWebサーバにアクセスしてアプリケーションを利用する。原則としてクライアント側にはWebブラウザさえあれば利用でき、プログラムの配布などメンテナンスの手間やコストを抑えることができる。
会計の視点 →企業集団内で会計システムを共通化する場合、管理面で効果的と考えられる。
電子メールシステムの1形態。すべてのメッセージをサーバ側で管理し、ユーザーは必要な電子メールの機能をWebブラウザのみで利用することができる。企業向けの製品、サービスが各社から提供されるほか、Yahoo!メールのようにフリーメールとして無料で提供されるサービスもある。
Web2.0はブログなどユーザーのコミュニケーションを主体に、情報共有や発信を行うインターネット活用に対する概念。技術・サービスの進化によりHTMLなどの専門的知識がなくとも容易に情報発信なのが特徴。これを企業内で活用したのがEnterprise2.0といえる。
eXtensible Markup Lnaguage(エクステンシブルマークアップランゲージ)の略。HTMLと同様インターネットで取り扱う情報を記述する言語の1つだが、情報の構造と意味も併せて持つなどインターネットを活用した多様な業務形態に適用できることが利点。
会計の視点 →Webベースのアプリケーションの普及で会計システムでも利用が進む。
公認会計士、監修・執筆、クレタ・アソシエイツ
執筆、日本オラクル
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