3社の事例から見えるクラウド移行の実際【後編】
Office 365への全面移行を決断した総合病院の狙いとは?
米国フロリダ州の総合病院Tampa Federalは、2つの課題を解決するためにMicrosoftのクラウドサービス「Office 365」への切り替え作業を進めている。
メールとコミュニケーションをMicrosoft Office 365に
多くの組織にとっては依然として、前編「ライセンス更新やリプレースを契機にクラウド移行を決断」で紹介したような予算面での効果がクラウドコンピューティング採用の促進剤となっている。ただし、そのプロセスは少し劇的な場合もある。
米国フロリダ州の総合病院、Tampa Federalでは目下、メールインフラ全体を米Microsoftのクラウドサービス「Office 365」に切り替える作業を進めている。Office 365は従来「Business Productivity Online Services(BPOS)」という名称で提供されてきた企業向けのオンラインサービスだ。同病院は今後、病院内の7000人以上のユーザーと系列診療所の数千人のユーザーをOffice 365に移行させる計画。Tampa Federalのテクノロジーアーキテクト、シェーン・オコトニー氏によると、これは同病院のメッセージインフラを抜本的に見直すための包括的な取り組みだという。
「この取り組みは大きな戦略的思考から始まった」と同氏は言う。
Tampa Federalには、大きな問題点が2つあった。1つは、ITの大規模な見直しのための予算がなかったこと。もう1つは、コミュニケーションサービスがどれも時代遅れであり、医師や管理者が希望するインターネットサービスやiPadフレンドリーなサービスを提供することができなかった点だ。そこで同病院は約2年前、ITのオペレーションに変更を加えることを決定した。
「われわれはテクノロジーではなくプロセスについての話し合いを始めた」とオコトニー氏。
オコトニー氏によれば、同病院のITはそれまでは保守を重点的に行い、特定のニーズにはその都度ベースで対応していたという。だが、「もっと包括的なロードマップに沿わせる必要があった」と同氏は言う。そこでオコトニー氏らは、自分たちの希望に基づくユニファイドコミュニケーション(UC)戦略を策定し、IT部門の従来の役割を必要としないようなソリューションを探すことにしたという。
「われわれは病院だ。メール管理者が必要だとは思わない」と同氏。
同氏らが策定したユニファイドコミュニケーションおよびコラボレーション(UCC)の戦略は主としてMicrosoft製品をベースとしており、メールやVoIP、メッセージシステムは大部分がMicrosoftによってホスティングされ、提供されているという(Microsoftはフロリダ州に大規模なデータセンターを持っている)。ただし同氏によると、多くのクラウドプロバイダーから1社を選ぶときも、根本的な真理に変わりはなかったという。つまり、サービスがある程度のレベルに達してさえいれば、面倒な問題は自分たちで対処しなくていいということだ。
「実際のところ、クラウドコンピューティングとは、データセンターがどこかで稼働していて、自分ではそれを管理しないというだけのことだ」と同氏。
なおオコトニー氏によると、コミュニケーションシステムはクラウド化の最初の一歩としては格好の選択肢だという。なぜなら、コミュニケーションシステムは成熟しており、分散型であり、それほど機密にかかわるテクノロジーでもないからだ。中にはセキュリティを懸念する向きもあったが、Microsoftが自社の設備で実演してくれたセキュリティ管理体制は何ら問題ないものだったという。オコトニー氏によると、イメージングやストレージ、ハイテクアプリケーションなど、ITインフラのその他の要素に関しては、より慎重に計画を進める方針という。同病院にはパブリッククラウドという選択肢もあるが、そのためには全て自分たちで独自の戦略を用意する必要がある。
クラウドの採用事例から引き出される結論とは
前編と合わせて紹介した3つの事例に共通しているのは、「実現が求められていること」と「そのために費やさなければならない追加コスト」との間に大きな開きがあることだ。クラウドコンピューティングの基本理念は組織のIT部門にじわじわと伝わりつつある。ただし、そのペースはゆっくりだ。
IT部門は目下、コスト負担を増やさずに追加の能力を提供できるような信頼できるソースを探している。1社などは、フルスケールの移行まで考えている。これらの組織は、ソフトウェア会社でもなければWeb企業でもない。どの組織も、サポートすべき何千人ものユーザーと顧客を抱え、その一方では、事業に支障を来たすことなく前進するための新たなチャンスを模索している。
恐らく今後大きな成功を収めることができるのは、ただ変革を唱道するのではなく、そうしたニーズに対処していくことができるクラウドプロバイダーだろう。
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