年間取扱商品13万アイテムから売れ筋を把握した小売業のBI活用事例。顧客を飽きさせない店舗作りを実現するために、店舗別・商品分類別の実績データを業務担当者自身が取り出せる環境があった。
ビジネスインテリジェンス(BI)の活用事例で多いのが、小売業をはじめとする流通業の販売分析だ。これには理由があり、他業種に比べて売り上げデータを取得しやすく、かつ売り上げデータが大量に企業の中にたまっているからだ。特に小売業ではPOS(Point of sale system)レジを利用した販売が一般的であり、POSレジに入力されたデータを本部に集約する仕組みが業務のインフラとして構築されている。一般的にはそのデータを利用して、店舗の売上集計を行ったり、販売数量から在庫を自動計算して発注データを作成し、商品の発注業務を行ったりしている。
POSレジには売れた商品1つひとつの明細がデータとして登録されるだけでなく、顧客の性別、年代、1人客かファミリー客か、などのプロファイルデータを売り場担当者が判断して入力している店舗も少なくない。この場合には、「どのようなプロファイルの顧客が」「どの店舗で」「いつ」「何を」買ったかを、データで知ることができる。
また昨今では、ポイントカードのように事前に登録された個人情報を併せて入力するケースも増えてきた。この場合には、個人情報と結び付いたデータが残るため、このデータを活用して特定の嗜好を持つ人に絞ってキャンペーンの案内などを行うこともできる。
一方で、POSデータは売れた商品1つひとつの明細が蓄積されるため、非常に大規模なデータ量となるケースも多く、システム的には非常に難しい要件となる。本連載の第1回「現場のBI利用で経営スピードを加速した外食産業事例」で紹介した飲食店の場合も、月間1900万件を超える大規模データを前提としたBI活用事例だ。今回はそういった課題を乗り越えて、POSデータを積極的に店作りに活用している事例を紹介したい。
今回紹介する企業は、アメリカンスタイルのドラッグストアをイメージした店舗作りをコンセプトに、関連店舗も含めて国内に100店舗以上を展開する生活雑貨小売業だ。新しいブランドを次々とオープンし、着実に事業を拡大している。約2週間に一度、新商品を店舗に並べることで、顧客がいつ来ても新しい発見がある店作りを目指している。そのためには、仕入れた商品がどれだけ売れ、どれだけ在庫があるかといった、商品の状況を常に把握しておかなければならない。そのためにBIは必要不可欠ものとなっている。
店舗により差はあるものの、1店舗で1万〜2万アイテム程度を取り扱っており、全店舗で取り扱う商品数は多い月で7万7000アイテム、年間では13万アイテムに及ぶ。顧客満足度の高い店舗作りを実現するためには、常に商品の販売動向を分析しておかなければならない。そのため同社は以前からデータ分析におけるさまざまな取り組みを推進してきた。
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