POSデータによる店舗分析で「自分の店がどんな店か」を知る中小小売業のためのPOSデータ活用【第2回】

分析専用ソフトを導入する前に、小売業者として最低限押さえておきたい分析手法がある。今回は店舗分析の基本と応用として、「ABC分析」「ACE分析」「相関分析」を解説する。

2010年05月13日 08時00分 公開
[西村泰洋,富士通]

POSデータの「3つの基本分析」を理解する

 本連載の第1回「店舗の利益構造から考えるPOSデータ活用法」では、5つの利益構造というPOSデータ活用の視点を紹介した。本稿からはまさにPOSデータ活用を意味する、POSデータの「分析」について解説していく。分析の深さによっては専用のソフトウェアを必要とする場合もあるが、本連載ではデータ分析の基本を紹介し、分析専用のソフトウェアを導入する前にユーザー自身で最低限の分析ができるようになることを目指したい。

 POSシステムには設定された条件でデータをCSV形式でエクスポートする機能があるので、そのデータをMicrosoft Office Excel(以下、Excel)に取り込めば基本的な分析ができる。まずは以下、POSデータの3つの基本分析を知ってほしい。 

POSデータの3つの基本分析

1.店舗分析(全体分析、サマリー分析)

売り上げなどの推移と傾向を合計値からつかむ

2.商品分析(個別分析、トランザクション分析)

扱っている商品がどのように売れているか、どのような傾向があるかを知る

3.顧客分析

どのような顧客で店舗が成り立っているのかを知る


※そのほかに、環境分析、競合分析などがある


 本稿では店舗分析の手法を、次回で商品分析と顧客分析の手法を、それぞれの基本と応用を挙げなげら解説していく。なお、分析の視点として、1店舗の視点と複数店舗をまとめた企業(あるいは本社から)の視点があるが、前者ができればその集計である後者もできるため、まずは1店舗の視点で解説していこう。

店舗分析──「自分の店がどんな店か」を知る

 初めに必ず行いたいのが店舗分析だ。これは、全体分析やサマリー分析という言い方をすることもある。基本的には小売業に携わる多くの方々が既に実行している。企業によって差があるとすれば、「どれだけ網羅的で、広範囲にできているか」ということだ。

 この店舗分析の結果として目指すのは、「自分の店がどのような店かを語ることができること」である。自分の店の現状を語ることができれば、5つの利益構造の最大化、そして店舗経営の最適化につなげることができるからだ。

 筆者は小売業の業務改善マーケティングを支援することが度々あるが、そのような場で「あなたのお店はどんなお店ですか?」と尋ねると、実は半数ほどの店舗がすぐには回答できない。日常的にPOSデータを分析している店舗であれば、「当店はアルバイト含む従業員数が約50人で、フロアは1階と2階があり、1階では主に食料品を、2階では生活用品を販売しています。売り上げの8割は食料品で、特に当店では青果や魚などの生鮮品が主力です。16時から19時が最も売り上げが集中する時間帯で、曜日としては土曜・日曜と、水曜または木曜日が重要です。年間で見ると、○月と○月が……、競合店は……」などといった回答が出てくるだろう。

 このように自分の店舗を店長のみならず、管理職からアルバイトに至るまで理解しているとしたら、何とも頼もしい限りだ。この「自分の店がどのような店かを語ることができる」、それをデータの裏付けをもって言い切れるということは、店舗分析が身に付いていることを意味する。それでは店舗分析の基本から進めていこう。

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