出荷数が減少傾向にあるx86サーバ市場において、Windows Server 2012のリリースは福音となるのか。各分野の専門家がみるWindows Server 2012の需要喚起力やいかに。
「Windows Server 2012」により、Windows利用企業は待ち望んでいた機能を手に入れることになる。そして、OSのアップグレードに伴いサーバハードウェアを新規購入する企業もあるだろう。これはx86サーバ市場にとって朗報だ。米IDCによると、2012年4〜6月期のサーバの出荷数は2011年の同期と比べて3.6%減少し、200万台となった。前年同期比で減少したのは2009年7〜9月期以来のことである。
「Windows Serverの新バージョンのリリース前には、買い控えが起きるのが普通だ」と話すのは、米調査会社Enderle Groupの主席アナリスト、ロブ・エンダール氏だ。「しかし最終的には新規ハードウェアの販売増加につながるだろう」
しかしそれがすぐに起きるわけではない。IT部門が新システムを承認するのに先立って、実施する検証作業に時間がかかるからだ。
米Rocky Mountain Windows Technology User Groupのデニス・マーティン会長によると、検証・評価の作業をいち早く開始するために、9月4日のリリース後すぐにWindows Server 2012を入手する予定の企業もあるという。従来と同様、こういった検証作業には半年から1年ほどかかるものとみられる。
IDCでは、2012年下半期にサーバの販売状況が改善すると予想している。しかしサーバメーカーの中には、新OSを搭載したサーバの出荷と企業での採用の間には時間的なずれがあり、サーバのアップグレードサイクルが本格化するのは、Microsoftが最初のサービスパックを出荷した後になるとみている企業もある。
しかしマーティン氏によると、採用の動きが本格化すれば、米Intelが最近リリースした「Xeon E5-2600」プラットフォーム(コードネーム:Romley)を搭載したWindows Server 2012に対する強い需要が生まれる見込みだという。
「RomleyとWindows Server 2012の組み合わせは、2013年にアップグレードサイクルを引き起こすだろう。この傾向は特に、会計年度を暦年に合わせている企業で顕著だと思われる」とマーティン氏は話す。同氏は米Demartekの創業者で同社の社長を務めており、ファイルストレージとネットワークテストの分野でMicrosoft MVPを受賞した。
Windows Server 2012は、「Hyper-V 3.0」による仮想化の拡張性の拡大、データスループットの向上、クラウドコンピューティングへの移行を支援する機能など、ITプロフェッショナルにとって魅力的な機能を提供する。
現在稼働中のサーバの大多数で、Windows Serverの従来版が利用されていることも追い風だ。米TechTargetが実施した「Windows Purchasing Intentions 2012」調査では、87%以上の回答者が「Windows Serverを主要なOSとして利用している」と答えた。
とはいえ、ユーザーがWindows Server 2012を受け入れるまでには、しばらく時間がかかるだろう。「新バージョンでは、仮想化の拡張によって効率が改善されるため、追加サーバに対する需要が減少する可能性がある」と指摘する向きもある。
カリフォルニア州オークランド在住の開発者で、Windows Azure分野のMicrosoft MVP受賞者であるロジャー・ジェニングス氏は「全体として見れば、Windows Server 2012がハードウェアの売り上げを促進するとは思えない。仮想化機能の改善により、特定のワークロードを処理するのに必要な物理サーバの総数が少なくて済む可能性が高いからだ」と話す。
それでも、Windowsユーザーグループのマーティン会長によると、Windows管理者たちは新リリースを楽しみにしているという。
「Windows 8の登場前にWindows Server 2012がリリースされるというのは、うれしいことだ」とマーティン氏は話す。ITプロフェッショナルはWindows 8への移行の最初の波に忙殺される前に、新サーバのテストと配備を進めることができるからだ。
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