「革命的出来事」とも評されるビッグデータ時代の到来。ただし、ビッグデータを企業活動に生かすには、「最高分析責任者(CAO)」が必要だと専門家は指摘する。その役割とは?
「ビッグデータは事実かフィクションか」「マーケティングの策略かまっとうな動きか」「妄想か真実か」――。最近の“ビッグデータ”に関する議論は、ビッグデータをどう捉えるかに終始している。
米SAS Institute主催イベント「Analytics 2012 Conference Series」の基調講演でスピーチをしたウィリアム・ヘイクス氏によると、いずれの議論も両方が真実であるのが実態だという。よくあることだが、こうした言葉の議論がある場合は、一歩引いて全体像を捉えるのが正解だ。
「間違ったことに焦点を合わせれば妄想になり得る」と、ソリューションプロバイダーの米Link Analyticsで最高経営責任者(CEO)を務めるヘイクス氏は話す。「しかし、手に入るあらゆる情報で何ができるかに焦点を合わせていれば、ビジネスの展望が変わる可能性がある」
つまり、見方次第なのだ。準備ができていようといまいと、これまで企業が扱ったこともなく、どう扱うべきかも簡単には分からないビッグデータの時代はやってくる。ただし、ビッグデータから洞察を導くには、見方を変える以上のことが必要だとヘイクス氏はくぎを刺す。ビッグデータの到来は、かつてのIT到来に匹敵する革命的出来事であり、その結果、企業は組織の編成と運営方法の見直しが迫られることになるという。
「ITによって企業の内部がどう変わったかを思い出してほしい。さまざまな部署が誕生しただけでなく、組織自体が完全に変わってしまった。ITが到来した時点では、ITはほとんどの企業にとってコアコンピタンスではなかった。ITは当初、業務には無関係だったのだ。その後、事業をつつがなく遂行し、競合他社よりも高い業績を上げるのにITが欠かせない存在になり、企業はITを導入せざるを得なくなった」と、ヘイクス氏は過去を振り返る。
データの世界は、「ますます複雑になっている」という表現では甘過ぎる。モバイルアプリケーションやスマート家電、ロイヤルティープログラムなどの普及で、今や普通の人々がデータエージェントとなった。データを消費するだけでなく、データを生み、現在地、食生活、音楽の好みといった個人情報を提供している。もちろん、それには対価がある。「エージェントとして私たちが生み出す情報(の全て)が、私たちの考え方を変え、私たちが関わる企業が提供するものを変えていく」とヘイクス氏は話す。「ソーシャルメディアを通じたある種の取引といえるだろう」
一方、企業は顧客の要望を読み解き、提供することに心を砕く。しかしそれは、データを収集して蓄積するだけでは実現できない。データから洞察を引き出すことが必要だ。そして分析には付き物だが、従来の手法やプロセスなどの刷新が必要になるとヘイクス氏は指摘する。
「ビッグデータ分析と一般的な分析では、質問内容が根本的に変わってくる。例えば、従来の市場調査では『この製品についてどう思うか?』という質問が一般的だが、この手の情報はビッグデータを使えば必要なくなる。コンシューマーの行動を観察できるのだから、わざわざこうした質問をする必要はない。つまり、ビッグデータの活用で質問が変わり、答えが変わり、ひいては開発される製品さえ変わってくる」
ビッグデータに埋もれている価値ある情報を発掘することは、答えを導くためのプロセスの一部にすぎない。社内での分析の位置付けを格上げし、ビッグデータ分析の真価を引き出せるようにおぜん立てをしなければならない。これは、言葉にするのは簡単だが実行するのは難しい。分析の重要性を理解する部署間での摩擦(ヘイクス氏はこの摩擦を「非効率」だという)を生む可能性がある。
「そこで、組織内に『最高分析責任者(CAO)』が必要になる」とヘイクス氏は説明する。
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