【導入効果】あらためて見直すWindows 7移行のメリットと障壁XPユーザーが、一刻も早く移行に着手すべき理由

2014年4月のサポート期間終了を間近に控えながら、いまだに多くの企業が使い続けているWindows XP。だが移行に必要な時間を考えれば、これ以上作業を先延ばしにすることは難しい。

2012年11月21日 08時00分 公開
[吉村哲樹]

Windows XPユーザーに迫りつつある“サポート終了のリスク”

 既に登場から12年がたとうとしているWindows XP。本来ならWindows VistaやWindows 7にバトンタッチしているタイミングだが、いまだに半数以上の企業が使い続けている。だが2014年4月にサポート期間が終了すれば、OSの脆弱性を修正するセキュリティパッチがマイクロソフトから提供されなくなる。アプリケーションベンダーや周辺機器ベンダーの製品についても、随時Windows XPへの対応が打ち切られていくと予想される。そこで本稿では、ガートナー ジャパン リサーチ ITインフラストラクチャ クライアント・プラットフォーム シニアアナリストの針生恵理氏の話を基に、今あらためてWindows 7導入のメリットとOS移行の障壁を見直す。

 なお、企業におけるWindows 8移行の可能性については、「【市場動向】XPユーザーのための『Windows 8を見送るべき理由』」を参照されたい。

Windows 7移行のメリットは、セキュリティ強化と生産性向上

 まずOSの移行自体は、サポートが切れたOSを使うことによるリスクを回避する上で不可欠だが、Windows 7の導入によって得られるメリットも少なくない。注目すべきは、Windows XPに比べて基本的なセキュリティ機能が向上している点だ。

 例えば、IT部門が設定した定義に従って、アプリケーションに対するユーザーの操作権限をコントロールできる「ユーザーアカウント制御機能」をはじめ、マルウェア対策となる「データ実行防止」機能、アプリケーションが持つ権限や使用するリソースを制限することで、アプリケーションが悪用された場合の被害を防ぐ「Windows Service Hardening」などを実装している。

 さらに、ビジネス用途のWindows 7 Enterprise(Software Assurance契約でのみ利用可)では、HDDの暗号化機能「BitLocker」、特定アプリケーションの実行を制限する「AppLocker」、外部から社内システムへのVPN接続を容易にする「DirectAccess」なども装備。デバイス管理、ポリシー制御、診断および回復ツールなどの機能セットを比較的安価な追加コストで利用できる「MDOP (Microsoft Desktop Optimization Pack)」もメリットといえる。これらの中にはWindows Vistaから搭載された機能もあるが、Windows 7ではより洗練されている点が特徴だ。

 この他、帯域の狭いWAN回線で接続された支社などのコンテンツをキャッシュし、そのキャッシュを利用することでネットワークのレスポンスを改善する「BranchCache」、起動時間の短縮、スリープ/サスペンドのコントロール機能の追加、省電力機能など、生産性に寄与する機能も含めて拡充されている。実際、以上の機能により、クライアント管理の効率化に成功している企業もある。

アプリケーションの互換性チェックと改修作業が移行のネック

 その半面、これらの機能変更によってWindows XPからWindows 7への移行には手間が掛かるのも事実だ。1つは前述したセキュリティ機能強化に伴う問題。例えば「ユーザーアカウント制御機能」により、管理者権限で自分のPCにログインしたユーザーは、標準ユーザーとしてアプリケーションを操作できる他、IT部門が設定した定義に従ってユーザー権限をコントロールすることもできる。これに伴い、各アプリケーションに対するユーザー権限や認証方法の見直しと再設定が必要になる。これを行わなければアプリケーションによってはインストールすらできなくなる場合もあるため、「ユーザー権限をどのように設定するか」「既存アプリケーションをユーザーアカウント制御機能にどう適合させていくか」を考案することが移行における1つの課題となる。

 2つ目はアプリケーションの互換性に伴う問題。アーキテクチャの変更により、Windows XP上で利用していたアプリケーションは、Windows 7では正常に動作しない場合がある。このためアプリケーションの動作検証と改修作業が必須となる。特に日本企業は、業務アプリケーションについてはパッケージソフトウェア製品の導入率が低く、スクラッチ開発アプリケーションの比率が高い。パッケージ製品でも大幅なカスタマイズを施していることが多い。このため検証・改修作業量が増えてしまいやすい。

 3つ目はWebブラウザ上で動作するWebアプリケーションの互換性の問題。Windows XPに標準搭載されたInternet Explorer(以下、IE)6は独自仕様が多く、それを前提に開発されたアプリケーションはIE 8/9上では正常に動作しないことがある。ガートナーの調査によると、「IE 6向けに企業が独自開発したWebアプリケーションの約40%は、Windows 7に標準搭載されるIE 8上では正常に動作しない」という。

 エンドユーザーが独自に開発したMicrosoft Office向けアプリケーションや、各業務部門が独自に導入したアプリケーションなども含めると、Windows XPクライアント上で利用しているアプリケーションはかなりの数に上る。この検証・改修作業に要する手間やコストが「日本企業が海外企業に比べてWindows 7への移行が遅れている1つの原因となっている」(針生氏)という。

OS移行を機に管理の見直しを

 こうした移行作業を効率良く進める上では、ハードウェア、ソフトウェア資産に関する情報の把握と、移行すべきアプリケーションの優先順位付けが鍵になるという。具体的には、まずWindows XPクライアント上で「どのユーザーが、どのアプリケーションをインストールし、どのような使い方をしているか」を把握する。また、既存のアプリケーションを全てWindows 7に移行すると膨大なコストと時間がかかってしまう。そこで業務の重要度に応じて、移行すべきアプリケーション/移行しないアプリケーションを切り分け、移行の優先順位付けを行う。

 こうした作業自体、手間と時間がかかるが、針生氏は「Windows 7移行の1つのメリットともいえる」という。「移行を機に、同じような機能のアプリケーションを1種類に統合したり、同じパッケージアプリケーションでありながら、各部門がばらばらに契約していたライセンスを、単一のボリュームライセンスに集約したりすることでコスト効果が期待できる」ためだ。また、こうしたアプリケーションの集約や見直しから、「移行後のクライアント環境の管理性向上、ガバナンス強化も狙える」。

 ただ、普段からインベントリを管理・把握できていれば問題ないが、「実際にはそうでないケースの方が圧倒的に多い」。針生氏はそうした状況を受けて、「多数のアプリケーションの検証・改修作業に要する手間が移行の障害になっている以上、極力早めに移行作業を開始すべきだ。このOS移行を機に、クライアント環境の管理性・運用性の向上を目指すことをお勧めしたい」と話している。

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