2014年4月のWindows XPサポート期間終了が迫りながらも、多くの企業は移行コストが掛かることを嫌い、いまだにこのOSを使い続けている。だがOS移行の判断材料は費用対効果だけではない。
米Microsoftは公式ブログにおいて、Windows XPのサポートが2014年4月8日(米国時間)で終了することについて注意を喚起している。この日までに新しいOSにアップグレードしなければセキュリティ更新プログラムや技術サポートを受けられなくなるためだ。ただ、この警告は見過ごされる可能性がある。
多くの企業において、OSのアップグレードの優先度は低くなりがちだ。人気のあるWindows XPがまだ問題なく動くのであればなおさらだ。また、あるアナリストによると現在の経済状況では、ハードウェアとソフトウェアのアップグレード、および新しいOSのインストールに掛かる費用が大きな障壁となっているようだ。
米国ワシントン州カークランドに拠点を置くITコンサルティング企業、Directions on Microsoftのオペレーティングシステム調査担当副社長、マイケル・チェリー氏は、「OSを変えたからといって、企業に競争力が付くわけではない。それに変更する必要のあるアプリケーションの数によっては、企業にとって大きな出費になる可能性がある」と指摘する。実際、Windows XPからWindows 7やWindows 8に移行する場合の費用対効果を知ると移行する気が失せるかもしれない。現在、Windows XPで安定した事業を展開している場合は特にそうだろう。
Microsoftはアップグレード費用の緩和措置として、「中小企業を対象に、Windows XP Professional環境からのアップグレード費用を15%割引する」ことも発表している。この割引はWindows 8 ProとOffice Standard 2013を同時購入した場合に適用され、それぞれのソフトウェアを最大249ライセンスまで購入することが可能だ。このキャンペーンは6月30日(米国時間)に終了する。しかし、多くの企業はこれからも古いOSを使い続けることだろう。
ちなみに米TechTargetが「2013年IT優先度調査」で世界各国の611人に「今年導入する予定のデスクトッププロジェクト(OS移行やデスクトップ/アプリケーション仮想化など)」を聞いたところ、38.1%が「Windows 7への移行」、21.3%が「Windows 8への移行」と回答した。
調査会社、米NetMarketShareが2013年3月に公表した資料によると、「デスクトップ用OS市場全体のうち、Windows 7は44.3%、Windows XPは38.7%、Windows 8は3.2%のシェアを占めている」という。残りの13.4%はWindows Vista、Mac OS Xなどだ。
米IDCでは2012年に実施した調査に基づき、「Windows XPからWindows 7にアップグレードした場合の3年間の投資利益率」を公表している。これによると、「クライアントPCを入れ替えた場合の初期費用は約712ドルで、PC1台当たり3年間で約1685ドルのコスト削減を達成できる」という。このコスト削減額には「3年間のIT作業サポートの減少」と「作業者の生産性低下抑止」が織り込まれている。ただし米IDCによると、「この調査では、新OSに対する各アプリケーションの互換性の問題など、各企業に固有の問題は考慮していないため注意が必要」とのことだ。
従って、企業は独自にリスク分析を行い、Windows XPを使い続けた場合とアップグレードした場合の支出を計算する必要がある。ただし、業界によってはWindows XPを使い続けるか移行するかを選択する余地がない場合もある。「例えば、銀行、金融業などはMicrosoftのサポートが不可欠なため、Windows XPから新しいOSに移行する必要がある」(米IDC システムソフトウェア研究部門担当副社長 アル・ギレン氏)
先のチェリー氏も、「忘れてならないのは、結局OSとは業務を遂行するアプリケーションを実行するためにある、ということだ」と述べた上で、次のように結論付ける。
「企業はOSのアップグレードに掛かる総コストを算出するだけではなく、Windows XPをサポート終了後も使い続けた場合のリスクもきちんと見極める必要がある」
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